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春爛漫の日に(牧野記念庭園訪問記録)



 暖かな気温だけでなく、雨が降った後の土と草の匂いに、はっきりと春だなあと感じるようになった最近。そんな中わたしといえば、らんまんマラソン完走しました!!!おめでとうございます!!

 朝ドラ好きの母が東京観光に来るのに、牧野記念庭園を訪れたいという話になり、せっかくならわたしも視聴した上で訪問して存分に旨みを味わいたい〜と思って見始めた一週間前(一週間前)。駆け足で見終わるのはかなり勿体無さがあったけれど、牧野記念庭園は牧野博士が晩年を過ごした場所だったという点で、できるだけ牧野博士の生涯を後半まで見ておきたいと思うオタク心だったんだけど、ドラマの中で牧野一家が庭園のある大泉に居を移したのはなんと最終週だった……。というわけで、結局一週間かけて朝から晩までらんまんを見続けることになったということの顛末。退勤即ダッシュで帰宅し、先にシャワーを済ませた上で寝るまでの時間どっぷりらんまんに浸かるある意味では大変充実していた時間。完全にかぶれており後半は脳内ずっと土佐言葉で喋っていた。ほんじゃき、共通言語が土佐言葉なんじゃから仕方ないじゃろ〜(にわか土佐弁)(ぶん殴られろ)


 いや〜〜でもね駆け足ではあったけど本当に素敵だったし見られてよかったです。今まで朝ドラ見てこなかった自分のことをぶん殴りたい…とオタクはすぐこういうこと言うけど、出会いは全てタイミングなのでで会えたと言う事実だけで嬉しいです。ひとえに万さんのお人柄もあるのだろうけど、春の陽光みたいなあたたかさにつつまれていて、こんな美しいものを見せられては私は…私は……とずるずると余韻を引きずりまくっている。

 万さんは本当に呆れちゃうほど植物バカなのに、太陽のような朗らかさで、万さんのまわりには太陽を求める植物みたいにたくさん人が集まってくるんだな〜。17週で大学仲間の藤丸が「万さんは(植物に名前をつけることで)ただ愛したいだけなんだ」と言っていたけれど、植物のみならず周囲にも、もちろん妻の寿恵子にも、万さんは全力愛に満ち溢れていて、だから最後の最後に万さんから寿恵子にむけた「愛しちゅう」が全ての答えだ…と思いながら号泣した。


 出てくる人々全てが決していい人ではないし、いい人だと思ったのに時勢からそうならざるを得ない苦しさを感じる人もいたし、辛い局面も何度もあって、万さんが純粋に「愛したい」と信じても決して相手から受け入れられないこともあったけど、万さんの真ん中はずっと変わらなくて、何人にも植物にも名前があり権利があるという、まっすぐなひとにはまっすぐな人がついていくんだなあなどと思ったりした。本当に登場人物一人ひとりが素晴らしく魅力的で、一人一人語れるくらい、朝ドラって(本来)半年という時間をかけて人の人生を勝手に一緒に歩ませていただくことの感慨と重みを感じたというか。まあ朝ドラ全編しっかり見たの今回が初めてのクソビギナーなんですけど。俳優たちご本人の演技力はさながら、作られた白髪とツヤツヤのお肌にに違和感なく何故だか刻まれたシワが見える気さえした。たまらんな〜〜。似たもの同士の万太郎と綾の姉弟も、いつも万太郎の味方になり添い遂げ続けた寿恵子も、2人をずっと守り続けてきた竹雄も、厳しさの中にも愛に溢れた祖母タキも、いつもフラットでスマートな波多野も、優しさの塊藤丸も、静かさの中に情熱を湛えた野宮さんも、色々あったけどきっと純粋に草花が好きだったんだろう田邊も徳永も、万太郎と寿恵子の子供達も、佑一郎くんも蘭光先生も、十徳長屋のみなさんも土佐の皆さんも大畑印刷所のみなさんもみんな本当に最高なのですよ……最高なんていう陳腐な言葉しか出てこない自分の脳みそぶん殴りたいですけど…あと峰屋をたたむときの分家の親方もかなりずるかったよね……こんな優しい物語本当にありがとうございますとんでもなく染みました。


 前置き相当長めですみません。読み飛ばしてくれて構いません。ここからはようやく念願の牧野記念庭園を訪れられた日の話です。庭園は大泉学園駅から徒歩距離なのもありがたく、駅の東口に出た瞬間から牧野博士の看板が出迎えてくれました。


 入口ではカンザクラがお出迎え。暖かくなったとは言えまだ花の季節には少しだけ早かったけど、3月半ばでもカンザクラはきれいに咲いてて嬉しかった〜。

 ドラマの中で重要なキーワードになっていたバイカオウレンやキツネのカミソリ、仙台屋の桜なんかは、時期的に見られないもので残念だったけれど、ほんのり暖かくなってきた最近はついに春の芽吹きを感じる植物がたくさんあって、このあまりにも緑緑しい緑を見ながら生命力に私自身も力をもらうなどしました。人間も頑張って行かねばな〜〜〜。以前に読んだ三浦しをんさんの『愛なき世界』を思い出す。暖かくなってきた気温に、植物は今が春だと分かって芽を出しているのだと思うと神秘だなあと月並みに感動しちゃった。そういえばさあ、『愛なき世界』の主人公も「藤丸」くんなんだよねえ…

 不思議だなと思う。言語を持たず、気温や季節という概念すらないのに、植物はちゃんと春を知っている。温度計や日記帳を駆使せずとも、「これは小春日和ではなく、本物の春だ。そろそろ例年どおり、活発に生命活動をする時期が来た」と判断し記憶できる。
 翻って人間は、脳と言語に捕らわれすぎているのかもしれない。苦悩も喜びもすべて脳が生みだすもので、それに振りまわされるのも人間だからこその醍醐味だろうけれど、見かたを変えれば脳の虜囚とも言える。鉢植えの植物よりも、実は狭い範囲でしか世界を認識できない、不自由な存在。

p.136
かわいい芽、美しすぎ緑

 牧野博士の銅像を囲んで生えるスエコザサ、オタク爆泣きポイントです。庭園内にはいたるところにスエコザサが生えてた。

 どこまでこちらに載せていいのかわからないけれど、展示室には博士のこれまでの生涯や使用されていたドーラ、寿恵子が亡くなる前に完成した植物図鑑、標本、内国博覧会で買った顕微鏡、バイカオウレンやマルバマンネングサのレプリカ、書斎を再現したものもあり、ドラマ履修民には心ホクホクの展示がたくさんありました。

春の始まりの生まれたて?てんとうむし
庭園すぐ近くのキッチンカーで売っていたコーヒー、愛

 あと庭園の講習室で、万さんと寿恵子の等身大パネルに出会えると聞いていたんだけれど、たまたまイベント開催日で講習室に出入りすることができず、写真に収められず無念。リベンジしたい。

ちいさきいのち、春だ!!!!!!!

 植物の名前はまだまだ全然わからないし見分けもつかないけど、ドラマを見て興味を持って展示を見て、自分の植物を見つめる目の解像度がぐんと上がったのがとても嬉しかった。年寄りになると花を好きになるとよく聞くけれど、花や植物を愛でる心は母譲りか年々高まっていると言う意味でもとてもいい機会だった。都会にいるとこうしてしっかりした緑に出会えることがなかなかないので、心のガス抜きをするのにとてもいい場所を見つけられました。季節の花々を楽しみに、また絶対再訪したいです。オタクなので高知の植物園にも行ってみたくなってしまった〜〜〜〜!!

花咲を過ぎて完全に散ったバイカオウレン
鳥が暴れたかもしれない跡、趣です

 あと牧野博士のヤマザクラが表紙になった今年のほぼ日手帳欲しい、もう今年の手帳持ってるのに。終わり。

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