「絶対アイドル辞めないで」なんて言えない
最近おたくの間で話題になっている、=LOVEの「絶対アイドル辞めないで」を聴きました。
なんと言ってもインパクトのある曲名。私がこのタイトルを知ったとき、まず思ったのはこれでした。
「おこがましくない?」
そもそも私は、アイドルとは偶像だと思っています。ファンの思い描くアイドルという象徴的な存在が、奇跡的に実体を持った場合に現れる、というか。アイドル自身が自らの意思で「アイドル」という生業を選んでくれることそのものが、奇跡のようなことだと考えているのです。
そんな尊ぶべき存在に「絶対アイドル辞めないで」だなんて、なんて自分勝手なんだろう。そう思っていました。
ところが、曲を聴き、歌詞を読み、この曲に対して解釈を深めていくことで、最初の印象が浅はかなものであったことに気付きます。
アイドル側の頑張りとファン側の想いでバランスを保っている、アイドルとファン間の関係は、強くて脆いと歌っています。
この表現はまさにそうで、どちらも同じ程度の熱量でなければ成り立たないと思っています。アイドルの輝きたいと思う気持ちと、ファンの輝かせたいという気持ちが双方向に関わり合うことで成立している関係性だと思います。
この関係を事象としてわかりやすく表しているのが、コンサートでのペンライトだと思います。ファンが持つペンライトの一つひとつが、アイドルを照らす光になる。照らされ、照らすという、お互いの気持ちが合致していることを具現化したような光景だと思います。
「星の幸せを願った」という歌詞を、私は最初「推しの幸せを願った」だと勘違いしていました。この曲ではアイドルのことを「星」と表現しているのですが、アイドルを表現するワードとして最適であると共に、「推し」と発音が似ている点もこのワードが選ばれた理由のように思えます。
アイドルの幸せを願う。ファンとして皆が願うことだと思います。おいしいごはん食べられたかな、あたたかい布団で眠れたかな、嬉しいことがひとつでもあったかな。そんな風に思いを馳せ、アイドルのことを思うファンの日常を端的に言い表していると感じました。
曲の最後の歌詞です。この「これは報われないおとぎ話」の部分で、私の最初の印象はズレていたんだと気づくことができました。
おとぎ話とは、所謂「ハッピーエンド」が確約されている物語です。幸せに暮らしました、めでたしめでたし、みたいな。それを「報われない」という残酷な言葉で修飾している、凄まじい歌詞だと感じました。
ファンは「絶対アイドル辞めないで」と思いながらも、心のどこかでわかっているのだと思います。アイドルが永遠ではないことを。
少し自分語りになりますが、私は北斗担になる前、嵐の二宮担をしていました。嵐といえばみなさんご存知の通り、2020年いっぱいで活動を休止しています。実感として「アイドルに終わりが来る」ことを知っているが故に、余計に「絶対アイドル辞めないで」なんて言えない、なんなら思うことすらいけないことだと思っていました。
ところがどうでしょう、この曲は堂々と「絶対アイドル辞めないで」と歌い上げています。アイドルがかけてくれた魔法にかかったままであることを知っていながら、それが解けないままがいいと、まるで叶わないことを願ってしまう。半ば諦めながらお願い事をするのは、とても切ないように思えます。ですが、少なくとも彼ら、彼女らは今「アイドル」という存在で居続けることを選んでくれています。この刹那が少しでも長く続いてほしいと願うことは、アイドルに対して真っ直ぐに想いを伝える術として最適なようにも思えます。七夕の笹に願い事を書いた短冊を提げるように、神社で絵馬にお願い事を書くように、今の自分が一番強く願うことが、「絶対アイドル辞めないで」だっただけの話です。
さて、私は現在SixTONES・松村北斗くんのおたくをしています。SixTONESはJr.時代こそ長いメンバーが多いですが、まだデビュー5年目です。まだまだアイドルで居てくれるだろうと思いつつ、たまにふっと不安になる瞬間があります。北斗くんという星の輝きが消えてしまう瞬間を、もしかしたら今後私は目撃するのかもしれません。二宮さんのときのように、お休みに入るタイミングで配信ライブを開催し、大量のライトに照らされながら光の中に消えていく嵐の姿を涙で見送るクライマックスを迎えるのかもしれません。
それでも。
それでも、願わずには居られないのです。
北斗くんという星が1秒でも長く輝くことを。
北斗くん、絶対アイドル辞めないで。
2024.07.13 こと
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