ヴェイパーフライ禁止について考えてみた

NIKEのヴェイパーフライが禁止されるのではないかというニュースが話題になっている。

選手としての意見は、ルールに従うまでだからとりあえず早く決めてくれ、というだけ。

私は、規制されるかどうかという結果の部分よりも、どういう経緯で結果が導き出させるかというプロセスの方に関心がある。

そこで、報道の通りシューズに規制が設けられるとしたら、どのような規制が考えられるかを与えられた情報から合理的に考えてみた。

今回の争点になるキーワードは

公平性…誰もが合理的に利用可能であるか
助力…シューズによって不正な優位性を得ることはないか

あたりだと思う。その2点について考えたい。

「今までにない好記録が出ているのはシューズではなく選手の努力があるから」
という最な意見が規制反対意見として多いが、原因がシューズに限らないことが証明できないと同様に、シューズの影響がないことを証明することも困難なのでここでは議論しない。

まず公平性に関して。

「NIKE以外の契約選手が履くことができない」

「(値段が30000円と通常のランニングシューズに比べて高価なので)誰もが合理的に履くことが出来ない」

という意見が一部見られる。

これに関しては、すでに市販されておりほぼ全てのランナーが手に入る状態にある、というのが全てだと思う。確かに他メーカー契約選手は履くことはできないだろうが、それは全競技者で考えたら0.001%くらいの話。「契約解除すればいい」という意見に思いつく限りの反論がない。メーカー契約にはメリットが多いが、本来今回のようなデメリットを織り込んだ上でするべきだからだ。
仮に特定メーカーのシューズをこの理由で禁止した場合、陸上競技がメーカー契約ありきで成り立っていることを表向きに認めることになり、それこそ公平性に反することになるのではないか。

値段が高価という点も、例えば日本だと15000円前後がレースシューズの相場というだけで、その値段でも発展途上国の選手は手に入れることは困難だろう。この説明だけでも、値段という相対的に感じ方が変わるものに絶対的な指標を設けるのは相当困難と言うことはわかると思う。企業に決める権利がある値段に規制を設けることは営業妨害と取られてもおかしくない。

ということで、私の思いつく限りでは公平性という観点からシューズを規制することは難しいと考えている。

助力に関して。

実際ヴェイパーフライで問題になっているのは、従来のシューズに比べて助力要素が顕著に見られるという点だと思う。

ここでの“助力”というのはバネのような性質を指す。
実際初代ヴェイパーフライに関する論文では「よく縮んでよく伸びる」バネのような性質が他シューズに比べて顕著な値を示している。

ここで難しいのは、バネのような性質はヴェイパーフライのみが有しているわけではなく、多かれ少なかれどのシューズも有しているということ。あくまで程度の問題で、これまではそのような性質が足並み揃えてゆっくりと成長してきたから意識されなかったというだけなのだ。

だから、不当に助力を与えるから、という理由で特定シューズのみを合理的に規制するのは難しい。全てのシューズに共通する性質なので、どこかで合理的な線引きをする必要がある。

規制をかけるとしたら、なんらかの数値化された指標を設けることが考えられる。実際、ミッドソールの厚さに規定をかける案が出ているらしいし、以前からそれを提唱するような論文も出ている。

数値化された指標を設けるとしても、どうしても最初の指標は恣意的にならざるを得ない。例えばミッドソールの厚さ31mmはOKで36mmはNGという合理的な理由は存在しない。相対的なものだからだ。

恣意的に決める場合、特定企業が不当な営業妨害を被らないこと、現行ルールとできるだけ整合性が取れていること、あたりが重要になると思う。

すでに市販されているヴェイパーフライが恣意的な線引きをもって禁止される場合、NIKE社に対する営業妨害に該当しないか、これまでヴェイパーフライで出された記録の扱いはどうするのか、など、規制する以前よりもデリケートな問題が生じてくる。ぶっちゃけこれらの問題の方が処理が大変なように感じる。

だから、ヴェイパーフライを上限とした数値化された規則を設ける、というのがこれ以上の助力を防ぎつつ新たな問題を出来るだけ生み出さない1番丸い解決策になると思う。

以上、与えられた情報から合理的に考えてみると、
シューズに関する規制が設けられるとしたら、ヴェイパーフライを上限とした何らかの数値化された規則が設けられることになるのではと考えている。もちろん何も規制が入らないという可能性もあるだろうが。

当たったらヴェイパーフライください。

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