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06. 夢の終わりと現の始まり

何かを始める前というのはとても楽しいものである。

例えば、旅行の計画を立てているとき。

高速道路の途中で○○パーキングによって●●ソフトクリームを食べて、
途中の△□の展望がすごいらしいからそれを観よう。
それから近くのレストランで◆▲を食べよう、絶対おいしい!

という感じで妄想を膨らませるのは楽しい、とても楽しい。

しかしながら、妄想は妄想、夢は夢でしかない。

実際は

意気揚々と出発!

めっちゃ渋滞にはまる

パーキングいっぱい、車停めるところをやっとの思いで見つけたはいいがソフトクリーム屋さん大人気過ぎて買えない

展望台に行くまで迷いまくってたどり着けない

近くのレストラン定休日

こんなはずじゃなかったっ!!

なんてケースがままあったりする。

現実に直面すれば幻滅するものだ。

2014年12月11日 夜。

仕事帰りに秋葉原のカフェに集結した、リーマンサット・プロジェクト(仮)のメンバー5人は頭を抱えることになる。

半月前、MAKER FAIRE TOKYOなる展示会 at東京ビッグサイトで、

「趣味で宇宙開発できる団体を立ち上げます!」
「二年以内に人工衛星を作って打ち上げます!」
と、勢いよく(勢いだけで)プロジェクトの発足を宣伝しまくり、

「年明けにキックオフミーティングします! 興味のある方、誰でもどうぞ!」
と、大々的にメンバー募集をかけまくった。

結果的に、「誰でもできる宇宙開発」というコンセプトには大いなる需要がある。その感覚をつかむことができた。

が、現在状態として何も決まってない。

スケジュールはおろか、どんなものを打ち上げるか、どこで打ち上げるのか、開発や打ち上げの費用はどうするか、などなどなど。
決めなくてはいけないことはたくさんあるのに、何一つ決まってない。

よくこんな状況でプロジェクトを立ち上げ、キックオフミーティングをするなどと、大風呂敷を広げたものだ。

そんな状態ではあるが、始めてしまったものは仕方がないので、少しでも前に進めなければならない。

まずはプロジェクトについて方向性の擦り合わせ。「リーマンサット」という名の通り、このプロジェクト以外に本業があるメンバーが集まっているわけだから、フルタイムの会社業務みたいにやるわけにはいかない。工数を必要最小限にした上で、人的資源を最大限駆り集め、作業を広く分配する。それならどうにかできそうだ、と考えた。
ネットもあるし、SNSもあるし、なんとかなる! というノリ。これを書いていて改めて思うが無知は無謀であるが勢いがある。

それから、ぼくらは専門家ではないので外部から知恵や知識を借りることはもちろん、自分たちで宇宙工学や宇宙事業について学び、そしてそれをプロジェクトに関わってくれる人たち全体に共有していかなくてはならない。

そんなことを念頭に置きながら、決まった方向性は以下の通り。

・2年以内に打ち上げる
 ⇒短すぎるとムリがでるし、長すぎるとダレるから。

・打ち上げるのは超小型衛星(10立方cmのキューブサット)
 ⇒無償の打ち上げプログラムがあるし、有償でも¥500万あればいける。最悪、打ち上げだけでも実績にはなるから。

・情報は可能な限りオープンにして、広く協力者を集める
・宇宙やこのプロジェクトに興味がある人であれば誰でも参加可
 ⇒そもそも自分たちだけでは無理。なので多くの人に関わってもらって、しかもそうなれば宇宙開発のすそ野が広がり一石二鳥。

・知識レベルがまちまちなので、共通理解のための宇宙事業関連の勉強会も行う
 ⇒誰か知ってる人教えてください。

ではこれらを「具体的にどう進めていくか」、であるが、今のところメンバーはたったの5人。人工衛星を作るにも人的資源が必要だし、集まった人がどう進めていきたいか、どう関わってくれるか、は実際に話を聞いてみないことにはわからない。幸い、MAKER FAIREで興味を持ってくれた人は結構いたし、何より「自分も宇宙開発をやりたい! ぜひプロジェクトに参加したい!」と言ってくれた人も何名か見受けられた。
「とりあえず実際に集まった人から話を聞いて、それから考えよう」という結論に至り、年明け2015年1月末に「リーマン・サット(仮)  Kick Offミーティング」を開催することになった。

Kick Offでやることとしては、

・目標や方向性とおおざっぱなスケジュールの確認
・衛星を打ち上げるのに必要な概要の共有
・各メンバーの自己紹介

といったところ。

具体的な進め方を来てくれた人から聞こうなどと、全くもって他力本願感がはなはだしいが、メンバーのうち2名(O氏とぼく)は本業が営業なので、一方的に話を押し付けるのではなく、クライアントの意向も汲み取ってお互いうまくやっていこう、という指向があったの。今振り返ると、このことはプロジェクトが進んでいくことに大きな影響を与えていたように思う(もちろん、他力本願的な側面もあったことは確か)。

そんなところで細かいことは年明け1月末にKick Offをやってから、という結論に至ったところでお開きとなり、ただ集まって何となく話をしていたら急に展示会に出すことになって大々的に発足をすることになってしまった「リーマンサット・プロジェクト(仮)」の2014年は幕を閉じた。

それから約4年後。この時の目標からはだいぶ時間を要したものの、本当に人工衛星を作って打ち上げてしまった。始まりは行き当たりばったりだったのに、この世の中どうなっているのかははなはだよくわからないものだともいえる。とはいえ、そんなことを当時のぼくらは知る由もない。



リーマンサット・プロジェクトに興味を持ってしまった方はこちらへ。https://www.rymansat.com/

PHOTO BY NASA.

皆さまのご厚意が宇宙開発の促進につながることはたぶんないでしょうが、私の記事作成意欲促進に一助をいただけますと幸いでございます。