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26. 新体制と法人化

【リーマンサット創設手記(仮)No.26】

2016年1月。

もろもろの問題を抱えつつ、リーマンサットの2016年が始まった。
目下の課題は、どのようにプロジェクトを推進していくか、だ。
これまでは立ち上げメンバー5人を中心にしてプロジェクトを進めいていたが、そのうち2人が諸事情から戦線を離脱することが決まっている。
しかしながら、JAX○の革新的衛星技術実証プログラム(無償で衛星を打ち上げてくれる)にエントリーすることになり、それにともなって人工衛星の開発を確実に進める必要があり、さらには一年前に5人だったのにプロジェクトメンバーは数十人。

人は増え、事態は進み、立ち上げメンバーが5人でもすでにいっぱいいっぱいだったこの状況。中核メンバーの頭数は減ってしまうが、幸いぼくらのプロジェクトに賛同してくれて、精力的に関わってくれる人も出ている。この方々の力を借りない手はない。

というわけでこの一年間、精力的にかつ継続的に関わってくれてこの人ならばと信頼が置ける、という人物に運営的な部分に関わってもらう打診することにした。ちなみに新しく中核に引き入れようとしている6人は、

M本氏:
江戸川区一の溶接職人。町工場を経営しており、すでに人工衛星の筐体作成においてものすごく寄与してくれている人物。ちなみに、彼はのちに立ち上げた法人の代表理事になってもらうことになる。

Y下氏:
工業デザイナー。リーマンサットで「カッコいい人工衛星」やイメージ媒体のデザインをやってもらっている。とにかく彼のデザインはクールでカッコいいのだけれど、人となりとしてはぼくらのことを「信頼できるかどうか一年間観察してました」とかしっかりしている。

I井氏:
学生時代、鳥人間コンテストで機体の設計等に関わっていた経験がある。エンジニアではあるが、ただのモノづくり屋さんではなく全体像を見渡し、部分部分に的確なアプローチができる人物。言葉は少なめだが、その分一言一言が鋭く、重みがある。デキる社長っぽい。

I藤氏:
「宇宙に行けたら死んでもいい」と豪語する宇宙狂。何がそこまで彼を突き動かすだろう。奇抜なアイデアを出したり、リーマンサットのミーティング時には毎回ユニークなTシャツ(しかも毎回別なもの。聞くと随時購入しているらしい)を着てくる。

T部氏:
立ち上げメンバーM氏の会社の後輩。どうして熱心に関わってくれるのか、と問いかけた時に「リーマンサットは究極の暇つぶしですよ」と返ってきた。深く物事を見据えるとても優れたエンジニアであるが、さしあたってかなりの変態であると思う。

T田氏:
エンジニアなのに、やたらと人を引き付ける。個人的にはエンジニアより営業とかのが向いているんじゃないかと思う。とにかく面白いものが好き。リーマンサットでイグノーベル賞をとるのが夢らしい。

うれしいことにこちらの提案にみな同意をしてくれて、5-2+6=9人を実質的な中核に添え、「コアメンバー」と呼ぶことにして、リーマンサットは年明けとともに新体制に移行することになった。

そして、もう一つぼくらには大きな課題が発生していた。それは組織の形態をどうするか、ということだ。
ただ単に人工衛星を作るだけならば、どこぞの部品屋さんでパーツを集めてわいわいがやがや組み立てていればいいのだけれど、ぼくらは「自前で人工衛星を作って、宇宙に打ち上げる」までが目的だ。
打ち上げに関しては、実質どこかに、つまり打ち上げをしている法人に委託をして宇宙に運んでもらうことになるわけなのだけれど、その場合、契約や文書などのやり取りが発生する。現に、まだ採用されたわけではないけれど、JA○Aとのやり取りが発生しており、組織体として「どこの馬の骨ともわからん私設団体」でいいのかという議論が持ち上がっているところだった。

もちろん、リーマンサット・プロジェクトは趣味の団体で、利益を追求する団体にはしないことは大前提ではあるものの、今後資金調達したり、契約事項が発生したり、法人と相対するならこちらもなんらかの法人という体をとった方がよいのでは、というところで、リーマンサットの法人化を人工衛星づくりと並行で進めることになった。

趣味の団体ではあるけれど、宇宙のすそ野を広げるという社会的活動から非営利団体としての体がいいんじゃないNPOとか、という意見でまとまりはあるが、じゃあNPO法人はどうやってつくればいいのか、という法人立ち上げノウハウの部分について知っている人が誰もいない。

さしあたり、ぼくは人工衛星づくりの方は手を出せないし、興味もあまりないので「法人の作り方入門」みたいな本を買って、実際にどうやって法人を作るのかを考えていくことが2016年の始まりとなった。

リーマンサットに興味を持ってしまった方はこちらへ
https://www.rymansat.com/


PHOTO BY NASA

皆さまのご厚意が宇宙開発の促進につながることはたぶんないでしょうが、私の記事作成意欲促進に一助をいただけますと幸いでございます。