無題のプレゼンテーション__5_

NFTの法的なポイントをまとめてみた

NFT(Non-Fungible Token)を使ったサービスは増えてきています。僕が働いているBlockBaseでもNFTを重要テーマとして取り組んでいます。

今までNFTに関連するサービスを開発・リリースする中で得た法令面での知見を個人的に整理してみたいと思います。あくまで個人的な意見なので、間違っている可能性があることをご了承ください。


NFTとは?

NFTとはNon-Fungible Tokenの略称で、主にブロックチェーン上で取引される代替性のないトークンのことを指します。

NFTを考える上で、「通貨とは何か?」を考えるとこの後の話が分かりやすいです。

そもそもトークンとは「しるし」「象徴」「記念品」「証拠品」という意味で、転じて「硬貨」「貨幣」という意味もあります。日本円の紙幣や硬貨も、日本円という概念を表象するトークンと言えます。

暗号資産(仮想通貨)は、電子データのやりとりを経済的価値の移転に見立てているのです。ブロックチェーンを使っているので改ざんがほぼ不可能なため、経済的価値を持つという信用を得ています。ブロックチェーン技術については以下をご覧ください。


一方、NFTは暗号資産と似たような電子データですが、より「モノ」に近い性質を持っています。

トークンひとつひとつが固有の情報を持っているので、ひとつひとつの価値が異なり、「代替不可能」であるということです。

例えばEthereumのNFT規格であるERC721ではtokenURIという名称で、コンテンツのメタデータの場所(URLと思っていい)を指し示す属性が定義されています。

最近出てきているNFTのユースケースとしてはゲームのキャラクターやアートの証明書として利用されています。

資金決済法と仮想通貨交換業について

一度NFTを離れて、資金決済法と仮想通貨交換業について概説します。

2017年4月の法改正より、仮想通貨の売買・交換等が「資金決済に関する法律」(以下「資金決済法」)の規制の対象となりました。

資金決済法はもともと、ICカード型の前払式支払手段などのサービスを取り締まり、消費者保護を目的とする法律です。資金移動において免許制を導入しています。

https://www.fsa.go.jp/common/about/pamphlet/shin-kessai.pdf

そして「仮想通貨交換業者に関する内閣府令」によって、仮想通貨と法定通貨の交換あるいは仮想通貨と仮想通貨の交換を事業として行う場合、仮想通貨交換業者というライセンスが必要になりました。

現在、以下の仮想通貨取引所がライセンスを保有しています。

https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kasoutuka.pdf

このライセンスを取得するには金融庁の認可が必要で、非常に厳しい水準を満たす必要があります。登録の申請から承認までの期間も長く、かなりの企業体力がないと難しいのが現状です(ほぼ無理)。

そもそも仮想通貨の定義は?

よって非金融の事業会社や、スタートアップがブロックチェーン関連のビジネスを行う場合、仮想通貨交換業に当たらないように注意するべきです。

仮想通貨の法的な定義を見てみると、1号仮想通貨と2号仮想通貨があります。1号仮想通貨がビットコインなど主要な決済性のあるコイン、2号仮想通貨がその他多くのアルトコインと解説しているwebサイトが多いですが、実際に金融庁が明確にどのコインが1号かを明示はしていないようです。

1号仮想通貨

1.  物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、

2. 不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、

3. 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

2号仮想通貨

1. 不特定の者を相手方としてビットコインなどの仮想通貨と相互に交換を行うことができる財産的価値であって

2. 電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

要件については以下の記事が詳しかったです。①不特定性 ②財産的価値 ③電子的記録 ④非法定通貨の4つが1号仮想通貨の要件のようです。


NFTは仮想通貨交換業がなくても扱えるが、ERC721 = NFTではない?

ここでNFTに戻ってくるのですが、一つ一つの価値が異なるように設計されたトークンであるNFTには通貨性がなく、仮想通貨には当たらないため、仮想通貨交換業がなくても発行・販売・交換できると考えています。

実際、前述したブロックチェーンゲームやアートなどのサービスは交換業のライセンスを持たない事業者が問題なく運営しています。BlockBaseが運営していたNFTの取引所Bazaaarも、金融庁から問題視されることはありませんでした。

ポイントは価値が異なるという点です。一つ一つのトークンの情報が異なっていたとしても、同じ価値があると信じられていれば通貨として使用される可能性があります。実際、日本円の紙幣にも記番号という一枚一枚に異なる番号が付与されていますが、その番号によって価値が異なることはありません。

EthereumのERC-721というNFTの規格を使ってトークンを発行したとしても、同じ価値があると信じられていればFungible(代替可能)であり、NFTではないのです。

残る論点は、価値が同じだが発行数が限定されているトークンはどうなのか?という点です。

例えば動画の視聴権など、コンテンツに関する権利をトークンにするという潮流があります。

発行数が10個や100個に限定されていれば、常識的に考えて通貨として使われる可能性はほぼないでしょう。しかし1万個はどうなのか?100万個は?上限は?という問題は残ります。

また上記の動画視聴権のケースでは、トークンは決済手段としてではなく所有することに価値がありそうです。動画視聴のたびにトークンを使わなくてはいけない(所有者からサービス側に移転する)となると、より決済手段=通貨性が高まり、グレー度が増すという見方ができます。

今後ユースケースが増えてくる中で、この辺りの議論が深まっていくのではないでしょうか。

----追記(9/5)----

金融庁からのパブリックコメント(公式見解)が出ました。より扱いやすくなりましたね。

ポイント
・2号仮想通貨は決済手段等としての規制のために定義された
・ブロックチェーンゲームのカードやゲーム内アイテムは決済機能を有していない場合、仮想通貨に該当しない

https://www.fsa.go.jp/news/r1/virtualcurrency/20190903-1.pdf

まとめ

・NFTは代替性のないトークン
・仮想通貨の販売や交換にはライセンスが必要
・NFTは仮想通貨ではない
・NFTならライセンスなしの事業者も扱える
・ERC-721を使っている=NFTは間違い
・仮想通貨に当たらないトークンの設計は今後議論が深まるだろう


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