[タイ] 商標緊急使用の場合のファストトラック審査

タイでは、2023年1月3日より「商標緊急使用が必要な場合の一次審査結果に関する通知」が発効した。一定の条件のもとに、出願日から4か月以内に一次審査の結果が通知される。
 
申請の条件
申請の条件は、以下の通りである。

  1. 電子出願システムを通じて出願を行うこと。出願時に、願書の付属書類や、ファストトラック審査の申請書、証拠資料などをすべて同時にオンライン提出すること。

  2. 一区分のみ指定すること。

  3. 指定商品/役務の個数が10個以内で、かつタイ知的財産局のウェブサイトに掲載されている表現であること。

  4. 商標使用計画書、マーケティング計画書など、商標緊急使用の必要性を示す証拠書類を提出すること。

  5. タイ商標データベース、TMview、WIPO Global Brand Databaseなどから類似商標の検索結果を提出すること。

申請の条件として、タイ知的財産局の電子出願システムを通じて出願を行う必要があるため、マドプロ経由でタイを指定国とする出願には適用されない。
 
また、適用する商標のタイプは、文字、図形、また、これらを組み合わせたものである。色彩商標、立体的形状、音との組み合わせからなる商標や、証明商標、団体商標はファストトラック審査の対象外となる。
 
審査の流れ
審査官は申請書類を受領後、15日以内に出願人に要件を満たすか否かを通知する。要件を満たす場合、4か月以内に審査結果を通知する。
 
なお、出願後、審査期間の遅延につながる願書の補正、変更があった場合、ファストトラック審査の申請がキャンセルとなる。
 
課題
商標緊急使用に係るファストトラック審査の申請書類において、緊急使用の必要性を示す証拠書類(4)、類似商標の検索結果(5)については、認められるための要件が示されていないため、担当審査官が独自の裁量で判断する可能性が高いと思われる。
 
また、指定商品/役務に関しては、タイ知的財産局のウェブサイトに掲載されている表現のみ認められることについて、申請後に当該表現が削除された場合、ファストトラックの申請は適格性を満たさなくなる。
 
なお、タイでは本「商標緊急使用の場合のファストトラック審査制度」のほかに、より柔軟な申請要件が設けられるファストトラック審査制度がある。2022年1月1日より導入された「商標登録ファストトラック審査制度」は、申請要件において、単一区分の出願に限定されず、商品・役務が全区分で計50個まで指定することができる。(商品・役務は知的財産局のウェブサイトに掲載されている表現に限る。)また、商標使用計画書や、類似商標の検索結果などの提出は求められない。この商標登録ファストトラック審査制度を利用する場合、出願日から6か月以内に一次審査の結果が通知される。

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