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どうか今の人には私にしたことはしないで、好きに勝手に生きてください。

約3年間付き合った彼氏と1年前やっと別れた。

名前は出したくないので、彼の事は今から「T」と呼ぶ。

Tは、本当に外面はいい本当にずる賢い人だった。
プライドも高く、人に対しての行動は損得で考える。そんな人。
付き合った頃の私は何に惹かれたのか、今になっては分からない。
推測ではあるが、彼の仕事は私の憧れの仕事。
その仕事をしている彼にどっぷり惹かれたのだろう。
憧れの仕事の相談をしたい、そんなはじまりで私たちは初めて会った。

地元のどこかも思い出せない居酒屋。
付き合っていた頃にまた同じ居酒屋に行こうとその居酒屋を探したが閉店していたようだった。
居酒屋でとりあえず自己紹介。
そんな流れで話は進み、仕事の話をし、そのまま夜になった。
その時にはTは私のことが好きだったようで、
告白を別日にされ、見事付き合った。

同い年で頼んだ事はすぐしてくれて、気前よく私に色々買い与える、世間から見ると本当に素晴らしい彼氏だっただろう。
当時大学に通っていた私も有難いと思っていた。
平日は仕事で会えないので土日に私に会いに電車で来てくれる。
喧嘩もするが、相談もし合えてごく普通のカップルとして当時は過ごせていたはずだ。
大学祭に遊びに来て一緒にキャンパスを歩き、一緒に出店も回った。
大学を休学するという相談も沢山して沢山彼にも負担をかけただろう。

それが崩れ始めたのは、私が就職した年からだった。
念願の憧れだった職に就け、新人研修を迎えた。
もともと遠距離恋愛をしていたので距離がどれだけ離れても変わらず仲良くやっていた。
同期の子と喧嘩した時も相談していた。
付き合った頃から束縛は激しめの方だったが、それも彼氏だから仕方ないと目を瞑った。

新人研修も終え、いざ各課に配属されるとうんと忙しくなった。
私は配属された職場の先輩と上手くいかず、それに悩むことも増えた。
彼に相談もしたが、彼が最初に言った言葉は、「その人の階級は?」
最初は言葉を疑った。
関係ある?どうしてそういうことを聞くの?
頭の中はそんな問符が埋め尽くす。
その時からこの人は少しおかしいと思うようになった。

私とTは今では恥ずかしいが、
結婚前提のお付き合いをしていた。
Tは私と結婚する気満々で、
結婚した後はどうしようか、暇さえあればそのようなことを言っていた。
そんな彼を私は半分嘲笑うように半分結婚するかもしれない人ととして見ていた。
両親にもTと結婚すれば将来には困らないと嬉しそうにしていたのを覚えている。

Tはお世辞でも顔が整っているとは言えなかった。
そこで残るのはステータスと人間性と財力。
今だから言えるが、私は彼の事をステータスでしか見ていなかった。
ステータスのおかげで築ける財力と自信。
その代わり人間性は皆無。
少しでも気持ちに余裕がなくなると、普段は言わないことを言う。
普通に彼女である私も言葉で傷付ける。
それが本性なんだろうなと付き合って2年とちょっとでやっと気づいてきた。
酷いが、彼のステータスがそこまでなければ顔も好みでは無い、性格も好みでは無い、
恋人未満で関係は止まっていたであろう。
モラハラ彼氏の模範のような彼氏だった。
私もステータスで彼氏を選ぶだいぶ酷い彼女ではあったが。

ある日、いつも通りLINEで話していると、
「結婚したいね」と、
いつも通り送ってきた。
あ、またかと私も自然な流れで、
「そうだねー」と返すと、
「じゃあ、結婚の手続き始めよう」と、
普段とは打って変わって具体的な言葉が返ってきた。
私は焦った。
今結婚出来るタイミングでも立場でもない。
Tの同期カップルに相談すると自分達が入籍するからそれに便乗したいのかもと言われ、
尚更今結婚したくないが強くなった。
Tに全部を伝えた。
それでも彼は結婚したいを譲らなかった。
今思えば、適当なプロポーズ、自分勝手な都合で結婚しそうになっていたのかと笑えてくる。
それからは別れるまでほぼ喧嘩。
冷めたとも言われたがLINEも電話の頻度は変わらず時間だけ過ぎていった。

結婚するか別れるか、
世の中のカップルにはその二択しかないと何かで見て、私は決めないといけないと焦っていた。
簡単なことではない。簡単なことではないから今まで曖昧にしてきた。

冷めたと言われたはずの彼氏からLINEは相変わらず止まらなかった。会いたいの連呼。今何しているかの確認。休みに何をするかの報告。
正直そんなことどうでもよかった。もう気にならなくなっていた。
どこが冷めたのか、そんな彼に私はどんどん冷めていった___

そんなどうでもいいいい日が続いていた日に私が研修中に推していた先輩からなんと前から気になっていた、付き合って欲しいというカミングアウトをされた。
もうこんなチャンスないと思った。
私に訪れたこれ以上ないチャンス。
どうでいい彼氏と、かっこいい推しの先輩。
比べる気も起きなかった。私の中で答えがその時に決まった。
我ながら、最低な判断だと思う。

2年11ヶ月の私たちの関係は思ったより呆気なく幕を閉じた。
好きな人ができたと、今までの鬱憤を吐き出してやっと別れを告げた私に彼は家の鍵を返すようにとだけ言った。
Tは私が別れたがっているのを感じ取っていたのかもしれない。
別れたがっている恋人からの別れ話を聞き入れれるくらいには覚悟を決めていたT。
結婚すると思っていた恋人同士でもここまで呆気なく別れれるのは逆に怖かった。

Tと別れた3日後、私は推しの先輩と付き合った。
先輩と付き合ってから、別れた方がいいと言っていた同期、友達からは幸せそうと言われるようになり、私自身も幸せを実感している。
先輩は、私の夢を馬鹿にしたりしない。私の夢を一緒に応援してくれている。彼氏としても先輩としてもたくさん気にかけて一緒に頑張ってくれる。そんな先輩の彼女としてこれからも支えたいし夢も応援したい。
本当にいい彼氏と付き合えたと思っている。

街を歩いている時、優里さんの「ドライフラワー」が流れてきた。
元カレと別れようか迷っていた日に流れてきて早く別れないとと、決意した曲。
元カレのことが気になり、元カレの同期に連絡を取った。
同期さんは私が元カレと別れる時に力を貸してくれた人でとても信用できる人だ。
「最近のTどんな感じ?」
「言うか迷ってたけど結婚したよ」
____え?
私は言葉を失った。
同期さんに詳しいことを聞くと、付き合って100日に籍を入れたらしい。
Tは私と別れてすぐ別の同期に女性を紹介してもらいその女性とすぐに結婚したのだ。
正直引いた。
別れてよかった。と心の底で思った。
結婚できるなら誰でもよかったのだ。
どうせモラハラ夫になる事が分かりきっているような人だ。
そんな人と縁が切れて関わりが無くなってあの時の自分の判断は間違ってなかったと初めて泣いた。
Tが結婚したのが辛いわけではなく、ただただTの妻が私ではない事が嬉しかった。
周りから別れた方がいいと言われ続けた恋愛に自分から蹴りをつけれて、
申し分ない彼氏とも付き合えて、
本当にあの人と縁を切れて嬉しかった。
元カレと別れずにそのまま結婚していたら夫の奴隷の妻になっていた。

今、先輩とは結婚前提のお付き合いをしている。
毎日が幸せで毎日が充実している。
同業者のため会える日は限られているが先日2人暮らしも始め、何年後になるか分からない、
“いつか”の結婚を楽しみに今は恋人の期間を楽しんでいる。

今、Tに思うことは、
どうか今の人には私にしたことはしないで、
好きに勝手に生きてください。

ただ、それだけ。

             ______fin.



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