(後編)北浜4099号室午前7時2分
かつての部下たちが、30万円のネットビジネスコンサルを消費者金融に特攻させたりクレカ作らせるなどして情弱に買わせた売上を吸い上げて購入した、22kのクロムハーツやオーデマピゲたちが部屋の隅で朝日で艶かしく輝く
今日もJV仲間とミーティングをしたり、仮想通貨の勉強をしたり、リサーチなどそれっぽい学びで時間を処分した
4099号室
雨あがりの朝は空気が綺麗で東大阪からあべのハルカス、大阪ドーム、兵庫の明石海峡大橋まで一望できる
新築ではないが大阪で一番背が高い黒光りするマンション
ネガティブ足りてる?というド派手な身なりをしたインフルエンサーが上の階にいるらしい。TikTokで流れてきた部屋からの景色がほぼ一緒だった、がっかりした
眼下に広がる大阪の街を眺めると
あのマンションにはよく燃える〇〇社長、そこのマンションには教祖と寝ている女インフルエンサー、あそこのマンションにはアフィカス、あのマンションにはYouTubeの運営者、向こうのマンションには有名キャバ嬢…
と分かってしまってからモノクロになった景色が広がる
ブランド品や装飾品は、暇すぎて身体を鍛えたら着れなくなったので現在のパートナーたちに配ってしまった。今はNIKEのスウェットを良く着ている
換金できるレアな装飾品や時計だけを残しているミーハーでつまらない大人に仕上がってしまった
昔からつまらない人間だった
かつてはロードオブインフォプレナーというDVDを売り捌いていた
鬼速PPCアフィリエイトスクールというDVDも売り捌いた
2016年、競合と呼べる人間も集団もいなかった
ソルトサンビレッジ、略してSSBという東京発祥のDRMを中心としたネットビジネスを教える会社があった。思いの外塾みたいな形式だった
受講をしてDRM、ローンチ、コピーなどどっぷりこの世界に浸かった
いつの間にか指導側、運営側になった。コミュニティ運営では良くある話で、サポートから新規クライアント獲得の営業までやった。コミュニティ販売してフィーをいただくよくある奴だ
SNSを回せば無限にリストも取れコンサルも売れた。時代と運が良かった
福岡で割としっかりめに揉めて大阪にやってきた。大阪でもコンサル対面で売って欲しいという依頼だった。関西はSSBの創業メンバーの一人、棚橋けんたろう氏が作った暖簾分けの塾がまだ存続していた
この人は大変優秀だったので、彼が残した競合と張り合うのは気が引けたが、蓋を開けると末端はチンパンジーみたいなのしかいなかったので商売はやっていける気がした
ローンチ屋として育ててもらった恩義もあるのでSSBのコンテンツを販売代行を中心とする会社経営を大阪で細々はじめた。最終的には年商は1億程度にはなった
そして、つまらなくなった
暖簾分け同士で大阪市場の競合を食い合う意味不明な図式にがっかりしつつも、コミュニティを運営しする側、独学でSEOを学んだり、ダイレクト出版のライティングコンテンツで黙々と研鑽をした
大阪で著名な不動産屋さんや保険屋さんと仲良くなり、少しずつ人脈も広がった。実は仕事ももらってコソコソ稼いでいた
そんな最中
適当に書いたブログのビジネス系の記事がSEOで1位表示となり、数万を超える大量のリストを獲得しSSBのコンサルを販売代行したり、クロスセルで自分の商材を売ってある程度財を成した
これも運としか言いようがない
いつの間にか食えるようになってしまった。モチベの維持など自分と戦う日々が酷く苦しかったことを覚えているが、いつもの慣れでこれも攻略をしてしまった
しかし
コンサル販売の会社の方は一生フリーターや高齢者、大学生にパワーでコンサルを売る仕事を続けるだけで自分の中で成長を実感できることがなかった
禁じ手の「金策」もやったが、世界に怒られる寸前で私は会社を離れることになったのでお咎めは無しだった
大規模にやっていた同業は脱税で叱られたり、行政処分を喰らうなど割と厳しく対応されるようになってきてオープンな世界での戦いに限界を感じていた
中には全国ニュースで摘発される福岡の集団もあった
とはいえ、死ぬほど苦しかったわけではない。裏技っぽいやつですり抜けてきて今に至っている
自分は遠回りはしたが死ぬほど苦労した経験がないのである
意味もわからず始めたMLMでも最高タイトルを獲得し小ネズミが7000人くらいくっついてきたし、その後興味本位で参加したSSBでも、歴史の中でも5本の指に入るくらい個人でDVDを販売してしまった
この「微妙にうまくいってしまう」俺のぬるま湯のような人生には見えない多くの犠牲がある
30万円のDVDの販売(コミュニティ販売)の成果報酬は4〜6万円と設定されていた。しかもコレを販売しながら購入者に無期限サポートをするという内容だった
当時はこれ以外に世界を知らなかったので普通だと思っていたが、完全に独立してからはなかなかあり得ないモノであると知った
たった4万円程度で無期限コンサルするわけである
これで飯を食うには対面で最低毎月5契約は取らないといけない
他の人間はこれを継続できなかったので直ぐに営業マンを辞めて飛んだ。彼らの成長スピードにインセンティブ収入が追いつかず、資金難が原因だった
大元へ色んな提案をしたが「昔からこのやり方でうまく行った」からと相手にされることはなく、大きな変化は最後までなかった
大阪でマネジメント職になると部下営業マンの一部のフィーをもらえたのだが、それが段々デカくなった
死んでいく部下を供養する傍らで、自分が稼働しない時間もできたので今の生業につながるローンチの研鑽や、Xのフォロワーと交流をして、さらに知識とノウハウを貯めることができた。結果、質の高い経験を重ねることに繋がっていった
正直、いつか飛ばないと、このビジネス形態では自分は幸せにならないと気がついていた
故に、自分だけうまくいっていると見られても仕方のない状況だった
数年前SSBの暖簾分けコンテンツを販売代行する、自分が創業した会社を譲渡した
数年前よりローンチ会社や広告代理店などを経営したいと申し出ていたが、「年間でSSBのコンサル〇〇本販売したらね、会社でそれやっていいよ」みたいなことを唆され続けて結局何もアドバイスも支援もなかった
よく考えると自分がやりたい領域については上は未経験で、結果を残したことを聞いたこともなく、指導歴の有無も怪しいことに気がついた
「結局自分でやってみるしかない」
個人的に感謝はしているが、ただ恩義はもうない。このメンツとは生涯交わる事はないと思う
ここ数年で色々変わった
コロナのせいでオンラインビジネスが革命的な進化を遂げた。離れた会社がどうなっているのかもう分からないがメンバーはほぼ消えたと聞いている
競合だった大阪の暖簾分けは広告経由でコーチングを売る会社に転身したことは知っている。自分が創業者の立場を離れた会社の事務所があったビルのワンフロア、マッサージ屋になっていた
自分が離職する際に着いてきた大事なクライアントとパートナー以外は、すべて夏の夢のように散った。時間も労力も、そして人も失ったことになる
コロナのタイミングでSNSで情報発信をする人が増えてビジネス系も増えた
ここで戦う気力も今はなく、Xで繋がった縁による少数精鋭ビジネスを行い始めた。今は素晴らしい縁のみでローンチのJVを行っている
匿名の垢を運用しているので名前も汚れない。XやInstagram経由でも素晴らしい出会いに恵まれている
悠々自適な生活に拍車がかかった
完全独立し売上も利益も10倍になったが、活動時間は20分の1レベルで減った。「倒れるまで働け!脳筋だ!」とSNSでは叫ぶが今は程遠い生活になっている、正直良くないと思っている
ローンチプロジェクトが被るときだけ寝ずに死ぬ気で働くのでフェイクではない。まあビジネス初期段階でワークライフバランスとか気にするやつはセンスないから脳筋しろという事実をこれからもつたえるつもりだ
急に手にした余白に困惑もしている
今でも当時からの相方と「暇すぎて怖い。仕事をよこせ」「もっと働きたい」「このままでいいのかな?」という会話を続けている
貧乏性はなかなか抜けなくて驚いている。隙さえあれば堺筋本町のライフで30%オフ!みたいなシールが貼った惣菜を脳死で買う
「暇と退屈の倫理学」という書籍に余暇を急に手にした人間は何をして良いか分からず困惑したり退屈したりする、とあったがまさにその通りになった
こんな俺はどうなってしまうのだろうか
最近また不安になっていたがジェフウォーカーの「ザ・ローンチ2.0」で新たに追記されていたJVと新時代のローンチの項目を読んだら、たまたまではあるが自分が書籍に記されたことを完璧にこなせていたのであと5年は生き残れると確信し、安心した
ありがとうジェフ、ありがとうダイレクト出版
たくさんの犠牲の上にたどり着いてしまった生活に新たな敵が現れた
「そろそろ結婚したい。次親連れてくるね」というLINEが夜中にきていたが、まだ既読をつけていない
これは史上最大の強敵である。なんとしてもあの恐ろしい契約書にサインをすることを先送りにしなければならない
東カレで出会った女を連れ込んでいるなど言えるはずもない。ため息が漏れた、流石に多少罪悪感はありますよ
時間かけてたどり着いた”今”がまた壊れようとしている気がした
そんな心境を押し殺し、アパレルの女を出勤前に朝から1発かまして部屋から見送った午前7時2分。朝日が罪人を晒し上げるステージのライトのごとくけたたましく差し込んできた
4099号室を離れファミリーマンションへ都落ちする日も遠くないのかもしれないな…まあ別にいいけど
何事もなかったかのように朝7時過ぎに予約ポストが活動を始めたのを確認してスマホを機内モードにする
心を無にして走りはじめる
耳元のAirPodsProからはお気に入りのYouTuber宋世羅が「はい、宋です。今日は〜」と淡々と終始飽きない話してくれてる。最近ずっとこれがBGMである
NIKEのウェアに身を包みサラリーマンの波をすり抜け北浜から大阪城公園へ、180cm100kgの身体を揺さぶってドコドコ走っていく
週5でジムに行っており人生で一番いい身体をしているのに、昔のように元気に走れなくなった。確実に年齢を重ねている実感がある
大阪を走る道はどこまでも舗装されている、アイツが帰る田舎とは大違いだ
ランニングの行き先は大阪城だが、俺やアイツの人生の行き先は天国なのだろうか地獄なのだろうか、正直まだわからない
安心や安定、心穏やかな日々などこの世界のどこにもなかった
サラリーマンだったあの日、純粋に夢見たこの世界のキラキラした幸せなイメージは多分一生掴めそうにないと思う
まあそれでも自分はそれなりに幸せになっている
裏切りを行った人間は早々に失墜していった。熊本行きの最終新幹線に乗っていくアイツとの今生の別れの瞬間、俺に向けられた
「お前だけ幸せになりやがって」という真っ赤な2つの赤目を忘れることはできない。自らの失態で夢破れ負けていく人間の顔は何にも変え難い美しいものであった
申し訳ないという思いは微塵もない。大好きな自己責任の慣れの果てが他責だとは滑稽だな!と喉元まで言葉が出てきたが口にはしなかった
愛はあるが情はない性格であると自己分析をしている
正直自分の元から消えていった連中に構っている暇はない。俺は俺の地獄を生きている。覚悟を決めて京橋あたりから足に力を込めて走る
俺には
4099号室での終わらない戦争がある
今日も暇だ
そして、、、
この物語はフィクション「かも」しれません
登場人物にモデリングは存在しますが架空の設定と名前です
ただし
何かを「逆」にしたり何かに「一つ変化を加える」と
フェイクはリアルに変わります
あなたの脳内で再生されてください
文章だけのローンチはキツいですか?
それは否。こうして読んでいますよね
お前のコピーと構成がクソつまんないだけです
精進しなさい
なーんてね♪この物語はフィクションです♪
また虚構であるSNSの世界でお会いしましょう
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