(前編)堺筋本町26時
『久しぶりだな元気か』
電話に出てくれて嬉しいよ。お前、ビジネス辞めちゃったのか?最近SNS更新してないからなちょっと心配だったんだ
あんなに豪華なメシ、旅行、集合写真、成功したんだなと思ってたよ。何よりツイートはいつも超前向きでポジティブで毎日何十ツイートもしてたよな
いつも見てたんだぞ
おれか?しょっぱいインフルエンサーとセックスしてるよ
聞いてくれよ最近の俺の鉄板ルート。堺筋本町で落ち合うのよ
え?何でそんなところかって?
おれ、堺筋本町好きなんだ。平日はビジネスマンばっかりなんだけど、土日はシーンとして静かないい街だ
実は堺筋本町って、デリヘルとかメンズエステ多いんだぜ。その中でもエルスパってやつがあるんだけどそこが重宝してる
オリスパとほぼ同じことが1万円ちょいでできる
適当に飲んで、エルスパのペアルーム行って、26時からアパホテル。全部徒歩圏内なんだ、最高だよ。アパの後は解散して、だいたい北浜でモーニング食ってる
え、今北浜だろって?正解!よくわかったな、さすがだわ
羨ましい?いや地獄でしかないよ、幸せは見つからないなぁー
どんな子かって?近畿大の綺麗な子だ。素性お互い分からないのにね、曖昧な関係になってしまうから世も末だ
俺たちの関係って0.01ミリしかないから、後腐れもないよ。心ひらけば股開くと、コピーライターの悪い先輩が言ってたじゃん。あれだよあれ、覚えてないのか
どこでそんな子と知り合うかって?紹介というか仕事というかそんな感じ
容姿端麗な子って順風満帆に見えて、そうじゃないケースもあるのよ
リアルの世界で努力して得たはずの結果が顔のおかげ、胸のおかげだと言われたり、パパ活してるとかすぐ変な噂されたりすることが多く不安だし辛いという話がよくあるよ
そういう子はだいたい自分自身の見た目や人間関係とは一切無関係ない、純粋な才覚の表現としてSNSに自分のベクトルを向け、半ば逃げるようにやってくる
やはり容姿は一級品の才能だよ
そんな子たちはやっぱりSNSの世界でも頭角を表し、インフルエンサーとして輝いていく。そこに目をつけるのが反社はじめ流行に敏感なビジネスマンだったりする
サプリや服売らせてるのは、後ろの大人だよ
ミナミの個室の飲み屋に呼ばれると、いるんだよ。彼女たちが
俺は社会から見たらマーケティングのプロだからマネージャーみたいなのにアドバイスを求められるわけ。数万人から数十万人フォロワーがいるインフルエンサーは普通に会ってるよ
俺は大人だからよ、普通にビジネスとしてのアドバイスをするだけ、ただのクライアントのつもりだ。けど彼女たちは違う
『何かにすがりたいように』その後個別で連絡がくるんだ
はじめて才能を認めてくれた、努力を認めてくれた、自分を見つめてくれた、そんな大人に見えるらしい
ダメだ、もう帰ろうよ、と言うと一緒にいたいと言うもんだ。家に帰れと言うのにだよ?
え?今日のやつはそこで調達してきたのかって?まあ、この話はまた今度にしようぜ
今の時期の北浜のカフェテラスは気持ちいいぞ
今度久しぶりにお茶でもしないか
え、引越しか。どこへ行くんだ?
そうか、実家に一旦帰るのか。まあすぐ帰れる実家があるだけいい、ゆっくり充電だな。俺は九州だから、全然帰れなくてちょっと羨ましいよ
仕事か?なんとかやってるよ
作業服着てだっさいデカいノートPCで作業してたハナシしたっけ?ウケるよな
いい意味で鈍感だったことが良かったと思ってるんだ
仮想通貨案件とかお金拾います!みたいな広告とか、全部目に入らないくらいやるべきことに没頭してたからな
気がついたら、まがい物なりにも会社経営者だ
何してるかって?相変わらずだよ
俺のBrain見てくれたか?頑張ったんだぜあれ。え!買ってくれたのか!連絡してくれよ〜水くさいな〜
あ!店員が来た。コーヒーおかわりいいですか?
すまん、この北浜のカフェ、コーヒー美味くてな。いつも2杯頼んでいるんだ
よく朝はここで本読んだりしてるんだ。え、意識高い?いや、普通に読んでいるのは小説だよ
モクシー?違う。あんなとこには行かねえよ、何だか空気が良くない
右も左も商材屋がマルチか素性がよく分からんやつしかいないじゃん、まるでヒルトン梅田のラウンジみたいだ笑
え、俺も?確かにそうだな!いや、そうだな!俺もそう見られるよな、コイツ何やってるんだってw
そうそう、こうして電話越しでゆっくり話すの久しぶりで何だか嬉しいよ
そういえば、なぜ、SNSでビジネスやるのをやめたんだ。え?結果が出ない?そうか毎日更新していてもきついよなそれじゃ
やっと当たったインスタグラムもどこからともなく競合が湧き上がってきて、投稿やストーリーをまんまパクられるってのをよく聞く
あ、やっぱり、経験あるんだ。それで後発組に追いぬかれちまったわけか
辛いよな、、それ
え、アカウントが乗っ取られた?マジか。アカウントに入れなくなったのか…、その間に競合が湧き出てきて、やる気なくなったってわけね
それにしてもいい天気だわ、ってかもう夏だな
中之島も住みやすそうだし大阪に残ればいいのに
何かあったら、人を紹介したり、仕事振るから、いつでも頼ってくれよ!ちょうど外注でお前にやってほしい仕事もあるんだ。
どうした?何だか後ろめたそうじゃん、電話越しでもわかるんだから
何があったかわからないが、気にするな、また連絡するよ
「先輩、今の電話の相手…」
ん、おはよう!お前いつから話聞いてたんだよ
「ほぼ聞いてました笑」
成る程ね、まあいい座れよ。ここのアイスコーヒー美味いぞ
「はい、それにします」
「アイツはどうなるんですか?」
あぁ、アイツか。あのまま死ぬだろうな、夢破れ地元に戻り、あれほど憎んだ普通の道で生きていく。2年界隈でそれっぽく生きたんだ、大往生だよ
手を差し伸べる?さあ、未来の俺のご機嫌次第だ
「そうですか…頑張ってましたもんね。いいね、リプ。ただ、最後の不義理がよくなかったですね」
そうだな。陰口やパクり、不義理はこの狭い世界では一瞬で拡がるものさ。俺が世界で一番嫌うのがソレだって、、、知ってるよな?
「はい」
「それにしても血も涙も無いですね、元身内にトドメ刺すなんて」
なんのハナシ?
「ビジネスマンとしてのトドメを刺したの知ってますよ」
あれ、バレてた?
「商売の世界で競合潰しははよくある話ですから。いつの間にかアカウント停止させて、その瞬間に『復活しました』と全く同じアカウントを本人になり変わって設立」
「一気にフォロワーを集めて何食わぬ顔で運用、そして売却」
お前賢くなったな、よく気がついた、あっぱれだ
「恐ろし過ぎます。まあこの類はインターネットの世界には表に出てないだけで山ほどありますから驚きはしませんでした」
死人に口なしってやつね
「義理人情やスジを通さないやつには、昔から徹底的にやってましたもんね」
一応、平和主義者なんだよ、俺
「先輩の会社の内部情報を利用して小銭稼いでるって知っても、敢えて泳がせて決定的なダメージ与えて、市場から退場させるとは」
たまたまよ?
「こわいこわい」
「顔出してこなかったのも目立たないためってのが理由ですか?」
いや、ただの人見知り♪
「また、、、よく言いますね。ホント掴みどころないですよ。そうだ、ひとつ聞きたいことがあります」
いいよ
「あんな感じでSNSで頑張ってたけど夢破れた人達はどうなるんですか?」
うーん、そうだな
…いいか、よく聞け
「はい」
これはこの世界に限った話ではない。どこの業界に行っても同じなんだ。
我々は基本、地獄の中を生きている
「地獄、ですか、、、」
いい機会だ、ひとつ学びをシェアしよう。意識高い系を大人になると次第に見かけなくなっていくが、皆姿を変えてこの世界に生きているのだ。
野球バカは野球をする側から見る側に変わる
ヲタクはアニメからVtuberを見る側になっている
キラキラ系女子は子育てマウント合戦へ戦場を変えた
それだけの話なんだ。
「はぁ、、、」
年齢を重ねていくにつれて元気がなくなる現象は否めないが、
野球バカはプレイヤーの市場を追い出されても野球が好きだし
ヲタクは相変わらずアニメのキャラや声優が好きだし
キラキラ映え映えどすこいわっしょい系はずっと誰かと戦い続けているのよ
「はい、、」
けど「仕事」「ビジネス」は特殊だ。この界隈の世界だけは違う。スキと夢だけでは生きていけない地獄が待っている
「え、、、?」
それこそ大学2年〜新卒3年目くらいに雨後のタケノコのように気持ち悪いほど湧いてくる「意識高い系」だけ行方不明になる。お前、26歳になっただろ?周りにいた意識高い連中、どこで何してんだ?
「あ、、、」
若さ特有の自意識に飲み込まれている感覚も就活を経たり、年を重ねるごとに消えていく
何か特別だと思っていた自分、そんな自分がやっている特別だと思っていたこと、が超平凡であり空虚な戯言レベルであることに気づき
クソみたいな上司に叱られながら、満員電車の中で、「まあ、人生ってこんなものだよな」とあきらめて世界の中に溶けていくのだ
「その通りですね、、、」
うむ。Twitterから消えていく人間もまさにこれだと思っているよ
あ、モーニングのサンドウィッチ頼んでいいか?腹減ってきた
「はい、どうぞ」
ここ飯もうまいんだよ、お前も食わないか?おごるぞ
「いえ、大丈夫です」
そうか…んまいのに、これ。あ、話の続きだな
ダメなやつってのは、いい大人になっても会話のパターンが数個しかない
それこそ界隈の師匠たちの商材をノールックで写経したような「コピペみたいな人生」だなって、連中を見て思わないか?
「思います、、、」
頭を使うことから逃げ、本質を見誤るから、SNS上で語り得るものは何もない。おそらくリアルの世界でも情熱を持って何かを成し遂げたこともないのだろう
逃げでやってきたやつが、この世界の本気の連中に勝てると思うか?
「いえ、、、」
一発逆転を狙って夢だけ見て行動をする彼らは、残念ながら商材をうすーく引き延ばし、具現化したそのものなのよ
「えぐいこと言いますね」
事実だからな。てか俺をはじめ、気がついている心優しき発信者は毎回これでもかと忠告しているからキャッチできない方にもそろそろ問題ありだと思わないか?
「そうですよね、、、」
そいつらは感情的にいろんな商材を買いまくってテンション上がるが、実際にやりきることも継続することもないから、いつまで経っても中身がない
養分として過ごしてきたことに気がついたときには、商材を買いまくってきて知識が人一倍ついているプライドや無駄に長い暦が邪魔をして、界隈の輪廻から抜け出せない
そしていい歳になり、リアルの世界の友人たちから取り残されることになるし、界隈でも若いピチピチのルーキーに根こそぎ抜き去られていく
なぜ、自分が主役になる日は来ないのか、、、なぜ、、、なぜ、、、
と、彼らが見る地獄はこんな感じなのだ。そしてそれが果てしなく続いていく
「はあ、、、」
「先輩、では彼らはどうすればよかったんでしょうか」
そうだな。彼らの振る舞いは初動では一定の時期においてはプラスに働くこともあったはずだ。良かれと思ってリプやいいねを行脚する日々だっていいことはある
結果と行動が伴っていた時期はあるはずだ
多分彼らは「これで人生を変えることができる」「金持ちに近づいている」「毎日楽しくてたまらない」と信じていた
アクションはクソほど間違っているけど、きちんと行動はしているんだよ
「はい、、、」
でも、それですべてOKと疑わなかったことが終わりだ。正しい方向へ正しく努力をしなければ、得たい結果は手に入れることができない
つまり、自分の頭で考えて行動することが絶対に必要なの
ワナビーは、我々の界隈でなくとも死ぬ。惰性で生きてきて、ちょっとの苦労や精神的苦痛から逃げ、成長しない大人はこうしたキメラになるだけ
それが、Twitterにはわかりやすく存在するだけ。最近は減った気もするけどね。会社でも学校でも他のビジネス界隈でも、こんな奴らは大量にいる
「彼らは具体的にはどうなってしまうと思いますか、、、」
彼らの立派な言動と、米粒のような能力は年々差が開いていくばかりだからどこかでクソ高い商材買って自滅したり、オンラインサロンに何年も課金続けたり、財果てるまでBrainなど買い続けるのだろう
考えてみろ、AV男優ばりに変な声がでそうだわ
「う、、、しんどいですね、、、」
彼らは現在完了進行形で養分になり、地獄への舗装された道を滑らかに進んでいる。この広い世界のどこかでね
こんなにしんどい話があっていいのか?と思うこともあるが、現実には無数にあるのだ。彼らが何者かになる日は、一生来ないよ
「、、、」
あ、コーヒーお代わり頼んでいい?喉カラカラだわ
アイスコーヒーを舌のうえで転がし、喉に通す。苦味の中にほんのり甘酸っぱい味が、何とも心地よい。香ばしい豆の風味が鼻を突き抜ける
うだつあがらない朝の憂鬱をかき消してくれる、愛すべき黒い液体、私にとっての覚醒剤
平日の朝は空いていて素晴らしいが、実は土曜の朝も好きだ。なんてったって、リッチシェフレンがエキスパート・シークレッツを私に届けてくれるからね。最高だよ
北浜のテラスから見上げる空は雲ひとつなく澄んでいる。もう夏の空の気配がする。淀屋橋のコンクリートジャングルから心地よい風が吹き抜けてくる
店を出た。アスファルトが焼けるように暑い。独特の匂いがする。下から何とも言えない蒸し暑い空気が襲ってくる、、、うざったい、、、
街に人が戻ってきた、御堂筋で人にぶつからないよう気をつけながら歩く日々が帰ってきた
やり場のない暑さや人混みへの小さなイライラは、まるでTwitterを開いた瞬間襲ってくるあの感情のようだ、なんとも言葉にしがたいあれ、、、
似ている。どこへ行っても結局地獄だ、そう思いつつ今日もスマホの画面をひらき、指をすべらせていく
「アパホテル、堺筋本町、本日予約、26時チェックイン」
今日も地獄だ
本当はどうすればいいかって?
SNSを閉じればいいんですよ
本当に大切なものはもう目の前にあるし、周りに存在するってハナシですね
本当の幸せ、見失ってない?今いくつ?取り返しつかなくなるよ?
目に見るものが真実とは限らない
何が本当で、何が嘘か
このnoteの話は本当か嘘か
自分で決めると良いでしょう
ようこそ、私の領域展開の世界へ
また最後まで読んじゃいました?
私にやられっぱなしじゃないですか
もうここ最後ですよ笑
これがローンチだったら、あなたの銀行口座からお金無くなってますからね♪じゃあ、さようなら
この話はフィクションです♪
またSNSの世界でお会いしましょう
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