自動車の横断歩道一時停止取締は交通事故減少に真に効果的か?

僕の2020年の幕開けはパトカーに呼び止められるところから始まった。このとき、とても気分を害したので怒りに任せて以下のようなブログ記事を書いた。

ムカつくので山は関係ないけどブログに書く。新年早々やっちまった。何をやったかと言うと、ナイフを所持してたとかそういうのじゃない。ネズミ捕りですわ。子年だけにwいや、笑えないから。横断歩道前の一時停車しないやつだ。横断歩行者妨害等という違反らしい。(中略)確かに、いるなと気付いた。気付いたけど遅かった。横断歩道の前に一本道のある十字路だし、すでに十字路に侵入していた。対向車は止まってパッシングをした。今思えばこの対向車は僕の後ろにパトカーがいることを教えてくれたんだと思うが、呑気な僕はスルーしてしまった。その後、後ろからパトカーの音。まさかねと。しかしこれは狙われてるの僕ですわ。えっなに?何した?まさか歩行者譲らなかったから?これパトカーで捕まるほどのやつなの?まあ捕まったよね。それでもね、注意だけだと思ったよ。気をつけてね〜って言われるだけかと。そしたらよ、罰金なのね。いくらだと思います?奥さん?なんと9千円ですよ。これで何が買えるかね?(以下省略)

この後も愚痴を綴りまくった。そのうち怒りも収まり、こんな頭に血が上った文句だけのブログ記事は残しておくとブログ全体の価値の低下を招くし不毛だと思ったので非公開にした。しかし、更生した今だからこそ、別の視点の文句があるというものだ。

ここで今一度あの日を振り返る。この日ブログを勢いで更新したらTwitterで交通事故に詳しい弁護士の方からこっぴどいリプライとそれに続く勉強になるお話をいただいた。

僕は法律違反をしたのだ。勧善懲悪。これに反論の余地は無い。僕は無実だ!とは言えないわけだ。それに警察は点数稼ぎであろうがなかろうが、取り締まることが仕事なので、そこにどんな思いがあろうがなかろうが、仕事をこなすのがプロというもの。

ぐうの音も出ないとはこのこと。一連のご意見に対しては反論どころか、とても勉強になった。そう思うと同時に疑問が色々出てきた。

そんなに重大な違反なのに、結構皆さん守ってななくない?信号無視する車は見たことないし、信号無視が違反だと知らないやつは絶対に運転すべきではないと思う。それなのに信号無視と同等レベルの違反、つまり横断歩道で停止しない車はめちゃくちゃ多い気がする。

これは単に僕の肌感覚ではなく、調査結果があった。日本自動車連盟(JAF)の調査データ(2019年)によると、なんと8割が横断歩道の前で一時停止しないらしい。信号無視並みの重大な違反を全国の8割のドライバーがやっているのはまじでヤバくないか?国や警察はこんな無法地帯に等しい日本人の運転モラルを全力をあげて改善すべきだ。こんなの全然美しい国ではない。そこには法は無いに等しい。北斗の拳の世界だ。

思わず次に疑問におもったのが、これ教習所機能してるの?ということ。日本のような先進国でこんな野蛮な運転が横行しているなんて、免許を与える側の基準がゆるゆるなんじゃないの?せっかくなので先ほどのかまぼこさんにこんなヤバい事態なのに警察や国は対策をちゃんとやってるんですかね?と聞いてみた。この疑問を専門家に直接聞けるチャンスはなかなか無い。

すると、「道交法38条1項違反については、平成30年の警察庁通達で啓発・指導の強化が宣言されて以来、JAFの調査で停止率が倍増」してるというお話をいただいた。すごい!倍増!……いやおかしいだろ。これで依然として8割が止まってないので根本的にダメなんじゃない?テストで100点満点中10点だったやつが20点取って「テスト点数が倍増!勉強の効果あり!」って言うのと同じやん。死ぬほどアホなやつが、かなりのアホくらいに進歩しただけで、頭良くなったとは言えない。

教習所の教え方についても聞いてみた。

教習所の教え方問題については、「必ず教習所でも教えるものなので、ルール自体を知らないというよりも、その重大性に気付いていない人が多い」とのこと。…うん、気づかせよう?教習所で重大さに気づくような教育していこう?これって人を教育することの壁なのか?たしかに多くの人は義務教育で教わったことの大半を忘れているし、義務教育の敗北という言葉も聞く。義務教育は忘れても一応生きていけるし、知らなくても警察に捕まるようなことは無い。でも交通ルール教育が敗北しちゃダメじゃね?諦めんな。

ちなみにここ最近で取締が厳しくなったのは高齢歩行者死亡事故を減らすためだったり、五輪開催という超受け身な理由もあったりするそうだ。受け身…。

ぶっちゃけ高齢歩行者事故が多いのは横断歩道以外の場所を渡るし、なんなら車が止まらなくても渡るのが原因ではなかろうか。あと、脚が遅くなっているし、反射と判断能力が鈍っているので車が来る前に道を渡りきれなかったり。まあそれは別問題として…。

たしかにこういう高齢者を前にしたら止まらないとこちらが完全に悪くなるし、せめて横断歩道前は警戒して走らなければならない。

そのためにはやっぱり教習所での啓蒙強化だと思うのだが、人は忘れる生き物なので罰金の支払という負のインセンティブを与えて身体で覚えさせるしかないのだろうか?我々は見せしめに吊し上げられた死体に恐れ慄くことでしか規律を守れない愚民なのだろうか?

それが抑止力に繋がらないということは無い。現に僕はもう恐らく違反をする可能性は低くなった。一人将来の違反者が減ったことは事実だ。しかしこれって効率クソ悪くないか?見せしめにしたって、僕がこうしてネットに書き込んでいるからセルフ晒し首になってるだけで、ほとんどの人は何も言わないから噂話に出るかでないかだよ。都市伝説以下だよ。

あと僕はたまたま人を轢かなかったからいいけど、これ違反件数ごとに潰していく方式だと、一定確率で人身被害が出るわけで。もっと予防的に動いたほうが絶対良い。

他の対策はやはり教習しかないのかなと。でも人間は忘れる生き物…。どんなに強く教えても重要視することは出来ない…のか…?

実はそんなことはない可能性が先ほどのJAFの調査の中にある。都道府県別で見るとなんと長野県では68%が横断歩道前で一時停止するのだ。全国ではその逆なのに、これは人類の希望である。長野県民はちゃんと教習所で教わったことを忘れてないのだ!長野県民も東京都民も同じホモサピエンスなのに!教育は敗北してなかった。

じゃあ敗北してるのは誰か?まあ誰でもいいけど、誰かが諦めている可能性はある。

普通に考えれば、長野県民に出来ることが他の県民に出来ないわけがないので、教え方のシステムに起因するのではないだろうか?ここを追求してないの?と聞いてみると

研究不足なんだそうだ。これ、かなり努力が空回りしてないか?交通事故を無くしたいという強い意志は感じるのに、全力尽くして無い感。この長野県のロールプレイってかなりヒントじゃないの??

ちょっとググってみた。するとそれっぽいのが出てきた。FNNプライムオンライン(2019年3月27日配信)https://www.fnn.jp/articles/amp/1807 より以下引用

長野市立篠ノ井西小学校の交通安全係の教員を訪ねると、長野県には、ある交通マナーがあることがわかった。
上野敏夫先生:
止まってもらうまできちっと待つ。止まってもらったら挨拶をする。車が出る時にはまた挨拶をする。そんなマナーですね。それが伝統として、脈々と息づいていると感じています

引用終わり

教習所ではなく、学校教育だったのかッ!?この「止まってもらうまできちっと待つ」という姿勢には度肝を抜かれた。僕は埼玉育ちだけど学校でここまでちゃんとマナーとして教わった記憶は無い。止まってくれたらラッキーみたいな感じで、なんとなく、本来車は止まってくれないもんだけど、止まってくれたらお辞儀して渡ろうね、くらいの感覚が大人から伝わってきていた。大人が諦めていたらそりゃ子供に伝わらない。せめて教員はしっかり教えないといけない。

長野県では教習所で特別なことをやってないかもしれないが、学校で教わった前提があるからより浸透しやすいのだろう。たしかに僕も幼稚園や学校では信号を渡る時のルールは徹底して叩き込まれた記憶がある。だから当然免許を取っても信号を守る。交通ルール遵守の肝は免許取得時の講習ではなく、免許取得前の義務教育のなかにあるのかもしれない。

ちなみに…かまぼこさん曰く、日本の歩行者保護政策はガードレールの設置等、ハード面の強化や、歩行者の自己防衛重視だったそうだ。全国の教習所では一律で歩行者優先を教えているが、浸透はしておらず、これでは高齢歩行者死亡事故現象に効果が上がら〜ん!ということで、ここ最近取締りを強化したとのこと。残念なことに地域の学校教育ベースで独自マナーを浸透させた長野県の事例は目に入らなかったわけだ。

そろそろまとめたい。

誤解しないでほしいが、僕はこのかまぼこさんに怒っているのではない。この国の官僚的堕落に怒っている。

飲酒運転は厳罰化された。それは飲酒運転による事故が絶えないからだった。啓蒙活動も目に見えるのでこれはわかる。酒を出す店までもが主体的に予防して抜本的な改革を行っている。しかし横断歩道の一時停止はどうか?明らかに認知されていない。これは啓蒙不足であり、教える側にも責任があると言わざるを得ない。

警察やお上は取締の強化ばかりでソフト面の改革を怠っている。明らかに教習というソフト面に改善の余地があるにもかかわらずだ。実際、僕はその後の免許更新の講義で横断歩道の一時停止について話があるかと注意深く聞いていたが、そんなものは無かった。違反者だけに罰則を与えても「警察に見つからなければいい」という意識が生まれるだけで、抜本的に解決にはならない。

取り締まられて以降、僕は横断歩道に気をつけるようになった。どれくらい気をつけるかというと思わずこちらの信号が青でも止まりそうになるくらいだ。気分は長野県民。当然横断歩道が無くても歩行者には道を譲る。しかし、横断歩道をスルーする車の実に多いこと。歩行者がいるんで僕が止まっても対向車はなかなか止まらないし、後ろからも追突されるんじゃないかとハラハラする。僕のような一度痛い目に遭った人間だけがチマチマとルールを遵守していても社会全体が変わる気配は無い。

なにより悲しいと思うのは、かまぼこさんのような交通事故減少に取り組む人の努力が目に見える形で報われていないということ。現行の交通安全教育や講義に変革を与えるプロセスについては詳しいことはわからないが、これは然るべき人が大多数の総意を得て初めて行えるのだろう。つまり面倒なことなのだろう。ここに斬り込める人が存在しないのは悲しい。いや、いないのではなく、構造上出来ないのかもしれない。今の状態では現行制度に基づき地道な啓蒙を行うしかないのが、なんとももどかしい。都道府県によってあれだけ有意な差が生じているにも関わらず、都道府県別の教育にメスを入れて変革を進める事が出来ないのだ!

僕のような人間が出来ることはこうしてインターネットに書き込むことくらいだ。なので皆、横断歩道の前では徐行をし、歩行者がいたら停止して横断させること。それに違反したら罰金9,000円だ。信号無視クラスの重大な違反だということを肝に命じて欲しい。

一日も早く日本の交通啓蒙システムが改善され、交通事故が減ることを願ってやまない。


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