出ていったビート その7

一生乗り続けると夫が
手をかけ金をかけた車を
オーナー逝去のため手放すことになった。

数百マンの呼び声も高かった
アルシオーネSVXのお値段はなんと・・・
12万円。

「もしかしたら高値がつくかもしれないですけど、
そういう車は長く車庫に入っていた
数万キロしか走っていない車なんです。
発売から30年たって、
15万キロも走った外にあった車は
外国に行くか、廃車しかないので、
うちとしてもこれが精一杯なんです。
僕もがんばったんですが、
上がどうしてもGOを出してくれなくて」

それほど期待はしていなかったが、
あまりの暴落ぶりに
可愛がっていた夫に申し訳ない気がした。 

他もあたってみたが、答えはほぼ同じだった。
「難しい車ですね。
 すごく高くなるかもしれないし
 ダメかもしれない
 怖くて手が出せないです」

お父さん、あなたが偏愛した車は
同じく愛した妻のように
市場価値はもうないのですよ。


もう迷っている暇もなく
車検も税金も近づいてくる。
N社の太陽クンも電話をかけてくる。
他にも決めなくてはならないことばかりなので
決めることにした。

もう後戻りはできません。
今しかこの12万円を出せませんと念を押されて
書類にサインをした次の日・・・

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