出ていったビート その3

もう一台欲しいというくらい
愛しているアルシオーネ。
お歳を召しているので、
何度も入院をした。
原因が分からず、
部品もなかなか手に入らず、
毎週お手入れをして
オイルを替えて、
充電しているのにも関わらず、
調子が悪い。

「今度の入院はかなり長期になりそうで、
 もしかしたら戻ってこれないかもしれない」
「古いからしかたないよ」
車で10分ほどの通勤にしか使っていなかったが
ないと通勤が困る。

「自転車で行ったら?」
「雨が・・・」
「電車は?」
「時間がかかるし」
「会社のバスは?」
「申請がいる」
「原付もあるじゃん」
「申請がめんどうくさいんだよ」

通勤車として申請した車でないと通勤してはいけないらしく、
結局朝、私が自分の車で送って行くことになった。

朝のいそがしい時間に往復で30分ほどだったが、
送り迎えをするのは私にとってはストレスになった。
いくら自転車で行けといっても首を縦にふらないし、
さすがに雨の日もあるし、送ってあげないとかわいそう。

3週間くらいたったころ、
暴走族が来たかと思うくらい
ブンブンとエンジン音を吹かせて
緑色の小さな車がやってきた。
乗ってきたのは、サングラスをかけた太ったまるハゲのオジサンだった。

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