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群盲評象2023(370過去記事、2023年12月末まで)

370
本マガジンは、2023年1月1日から2023年12月31日までの365日分、桜井健次(筑波大学数理物質系名誉連携教授、イメージング物理研究所長)が毎日投稿するエッセイを収録します…
現代は科学が進歩した時代だとよく言われますが、実のところ知識を獲得するほど新たな謎が深まり、広大な…
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#ショートショート

温暖化? 崩落するケーキ

毎週水曜日、「水」または「水曜」に関係するテーマの短編記事または漢詩または合成画像を作っています。 2023年は有名百貨店が販売するブランドのクリスマスケーキのトラブルが多数発生して話題になりました。過去何年かは同じような商品のケーキが無事に配達されていたのが、2023年になってこのようなことになり、いったい何が起きたかということで騒然となりました。食品を冷凍して輸送する手法は一定程度確立されているでしょう。特にこうした細かいデコレーションもされているケーキで生クリームなど

モミの木がなくなった

ねえねえ、昔、クリスマスツリーにモミの木が使われていたんだって! そんな時代もあったよ イエス・キリスト生誕と何の関係もないトナカイや、サンタクロースと一緒に世界中で大流行した 雪が降らない中東のベツへレムで生まれたのだから、本来はラクダが歩く砂漠、それにサボテンなんだろうが、商業主義やエンタメとマッチしない そうだったの? では、どうして、モミの木はなくなってしまったの? かつてキャンドルに火をともし、モミの木に飾り付けていたよ 本物の木と火だから、火事になる心配もあ

平穏な港町

毎週水曜日、「水」または「水曜」に関係するテーマの短編記事または漢詩または合成画像を作っています。 日本は海に囲まれた島国であり、全国いたるところに港があります。そのような環境で生まれ育った日本人は他の国の国民以上に港町や海岸が大好きなのは当然ともいえるでしょうか。今日は、ノスタルジックな港町を描きましょう。 今回の作品は、これです。

200周年

パイプオルガンの音が厳かに響いている とても明るくてまばゆい 壁にかけられた巨大な絵画はあまりにも生き生きとしていて、会場の参加者と見間違えるほどだ 同じ光景は100年前にも見られたそうだが、いまここにいる人々にとっては、初めてだ 昨夜、突然、この街で1番明るい場所になった そこに全員集まるのだという話がどこからともなく広がった こんな場所でこんなイベントがあるなんて ピポパ っという音が聞こえた いや、TA-RAーHA だったかも 聞いたことのない宇宙語の可能性がある

ヴェネツィアの亡霊

毎週水曜日、「水」または「水曜」に関係するテーマの短編記事または漢詩または合成画像を作っています。 2023年9月に映画「名探偵ポアロ:ベネチアの亡霊」が公開され、人気を博しました。ヴェネツィアは水の都です。21世紀の現代でも、原則、自動車は使われておらず、ほぼすべてが水上交通というとても珍しい場所です。今日は、そんなヴェネツィアの絵を描きましょう。せっかくですので2023年映画の雰囲気にあわせ、ハロウィーンの夜に幽霊でも出てきそうなおどろおどろしい絵にしましょう。 今回

ニューオーリンズの夜

ニューオーリンズと言えば元はフランス領土だった街だ 幽霊と吸血鬼のツアーが人気だ 観光客向けのただの遊びのようなものだとずっと思っていた だが、本物の吸血鬼がそこに生きていた その吸血鬼を懸命に追う者たちがいる 吸血鬼は日の出の前にはどこかにある棺におさまり隠れてしまう 夜明けまでに追いつめる必要がある そうすれば、棺を暴き、日光を浴びせることもできよう ある日、吸血鬼は密会の会場に忘れ物をしてしまった 懸命に探すが見つからない あろうことか、スマホを忘れてきてしまった

カオスな子供部屋

毎週水曜日、「水」または「水曜」に関係するテーマの短編記事または漢詩または合成画像を作っています。 この頃の子供部屋は、昔と比較してきちんと片付いている感じがします。いや、正確には子供部屋だけでなく、たいてい、日本人の家のなかは良く整頓されているのではないでしょうか。社会問題化しているのは、片付ける気力と体力を失った高齢者の家のカオスな状態だと思われます。その昔、そんなカオスは子供部屋の日常的な状態でした。そこで、今日は、ありえないほどカオスな子供部屋を描いてみましょう。家

角から円へ

その昔、直方体を多少変形したような形状で4つの可動ホイールがある乗り物があった 馬や内燃機関の力で移動する 車両は先頭部にも後部にも、最低でも2人ならぶ構造だった 先頭部には運転手がおり、その隣に助手がいた その不合理は自明である 2列にして左右のどっちを基準にするかというルールの違いから混乱が生じ、事故が起きる 無人のお掃除ロボットで検証された円盤型または球型スタイルへの移行は必然的だった 中心軸に対し背中合わせに6座席を全周をカバーするように並べた6人乗りが人気だ

都市水没

毎週水曜日、「水」または「水曜」に関係するテーマの短編記事または漢詩または合成画像を作っています。 100年前と比較すれば、文明は格段に進歩しているのに、その文明は思いのほか脆弱です。大地震でも、風水害でも、すべて周到に対策がなされているににもかかわらず、実際には毎年のようにどこかの地が被害に遭っています。その被害も時に並大抵ではありません。そんな現代の問題を古風な水墨画のスタイルで描いてみるのはどうでしょうか。 今回の作品は、これです。

ミニマリストの決心

ジュリエットが叫んでいる ときめかないものは容赦なく廃棄するべきなのよ! いざ捨てるとなると躊躇する人、多いよね あまり責めるのはかわいそう 「有」を出発点にすると、その犠牲プロセスはひっかかるが、もし何もない「無」が出発点ならば、全然気にならない だから、いったん全部捨てて「無」にして、ときめきを感じるものをすくいとる 他のものは、すくいとらず、見送るだけ 聖書にこんな一節があるよ ジュリエットが叫んでいる これからは、何を着ようかと思い煩わないように自己訓練するのよ

ツタンカーメン、笑う

毎週水曜日、「水」または「水曜」に関係するテーマの短編記事または漢詩または合成画像を作っています。 日本列島に文明らしい文明の記録が現れるよりもずっと前、地球上のいくつかには発達した文明がありました。古代エジプト文明は、その例と言えるでしょうか。紀元前14世紀のファラオ、ツタンカーメンはミイラでおなじみです。いくら古代文明がすごいと言っても、当時はナイル川の治水にも苦労したでしょう。そこで、ナイル川の治水がうまくいってにっこりしているツタンカーメンの肖像を描いてみましょう。

予告殺人の結末

十人の娘が旅に出た 滝に打たれて一人目が死んだ 九人の娘が旅に出た 橋から落ちて二人目が死んだ 八人の娘が旅に出た 崖から転げて三人目が死んだ 七人の娘が旅に出た 熊に食われて四人目が死んだ 六人の娘が旅に出た 蜂に刺されて五人目が死んだ 残った五人が旅をした 「なんだか、こわい!」 「順番に死んでゆくのをわざわざ数えて歌うの?」 「というよりも、これは殺人予告だろう」 「その通りに実現しているので、ますますこわいわけだ」 「第3者が聞いていてもこわいのだから、それをや

火星でカーレース

毎週水曜日、「水」または「水曜」に関係するテーマの短編記事または漢詩または合成画像を作っています。 たまには、ほとんど水がない土地のことを思い浮かべてみましょう。なんだかんだ言っても、地球上にいる限り、水は手に入ります。そこで、例えば、火星の地表はどうでしょうか。いまは、NASAの探査車くらいしかいませんが、科学調査ばかりでなく、たまには、カーレースに興じてみましょう。地球とは違って、空気抵抗はあまり気にしなくてよいと思われます。足元が平たんな舗装道路ではないことに注意でし

川中島からウクライナへ

「勘助、どうじゃ」 目の前には、巻物が広げられていた 「御屋形様、ゴシック部16字の旗印、結構と存じまするが、それがしの意見を一言申し上げたく」 「申せ」 「孫子兵法の本質は、敵を欺き、混乱に陥れるところにござりますれば、奇想天外なカラクリが肝要かと」 「うむ」 「正面に大軍勢がいるように見せかけ、実のところは無人とし、兵を左右の脇に隠すのでございます」 「さらに、正面は無人と言えども、敵陣に向け一斉に進軍させ、発砲もさせまする」 「なんと、騎馬隊も鉄砲隊も無人と