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BS時代劇『大富豪同心3』第7話レビュー:恋の矛盾、愛の一貫性

あらすじ:卯之吉(中村隼人)は「世直し衆」の中に美鈴(新川優愛)が居たことを源之丞(石黒英雄)から知らされる。一方、尾張の家老・坂田(新藤栄作)は、尾張の商人・香住屋(山崎銀之丞)を使い江戸の商人から投資の金を集めていた。姿を消していた濱島(古川雄輝)が突然、卯之吉の前に現れ、美鈴が亡くなったと伝えるが、信じない卯之吉。卯之吉の仲間たちは必死に美鈴を探すが、江戸のはずれに悪党たちが集まっていると聞きつける。

公式サイトより)

尾張の目論見

世直し衆の末端は捕らえられても、本丸を仕留めなければ意味がない。世直し衆は懲りることなく活動を繰り返す。そしてその中には卯之吉(中村隼人)たちが行方を捜す美鈴(新川優愛)の姿もあった。
源之丞(石黒英雄)から美鈴が世直し衆に加わっていると聞いた卯之吉は、美鈴が生きていてよかったとは言うものの……。

坂田(新藤栄作)は世直し衆に商家を襲わせて江戸での商いに不安を煽り、尾張の豪商・香住屋に融資が集まるよう仕向けていた。不景気の中、江戸の金が尾張に流出すれば幕府にとっては大打撃である。
徳右衛門(竜 雷太)は商人たちの動向を甘利(松本幸四郎)に報告する。商人たちに貸付をやめさせるよう説得を依頼する甘利に、徳右衛門は強欲と思われている自分より卯之吉が適任ではないかと提案する。

商人としても、同心としても、そして人としても周りから成長を認められつつある卯之吉。ずっと「はちまき」呼ばわりだった村田(池内博之)も、ついに「やまき」と正しい名前を認知し、捜査の同行に指名するまでに(胸熱!)。
商人たちの説得に当たることになったのも、何より人のためを考えられる卯之吉の人柄が見込まれてのことだったが、どこか呑気で煮え切らない態度に話し合いは難航。商人たちは世直し衆を野放しにしているように見える幕府に不満を募らせており、ついに尾張への貸付の意向は変えることはできなかった。

最後の砦は大口の貸主となり得る秋月ノ局(前田美波里)である。秋月ノ局が尾張への貸付を決めれば、江戸の商人たちが追従し、一気に流れは尾張に傾く。
香住屋は秋月ノ局に貸付を請うが、江戸の商人への融資を考えていると首を縦に振らない秋月ノ局。貸付先が上州屋だという情報を掴んだ坂田は、世直し衆に襲撃を命じる。上州屋が襲われれば、江戸での投資はリスクが高いと判断し、尾張に金を流すであろうというのが坂田の目論見である。

濱島が本当に求めているもの

卯之吉を訪ねてきたのは、行方知れずと思われていた濱島(古川雄輝)である。美鈴は爆発の際に死んだと報告する濱島だが、どうも様子がおかしい。
美鈴が生きていると信じる卯之吉に苛立ちを隠さない濱島。美鈴に側にいてほしいという卯之吉の願いを自分勝手と斬り捨て、卯之吉は何一つ苦労せずに生きてきたから人の痛みがわからない、だから美鈴も戻ってこないのだと激高する。江戸の現状も同じで、卯之吉のような者たちが旨味を独り占めしていて下々の者を苦しめているのだと濱島は言う。
理論が飛躍する様子は理知的な濱島らしくもない。それに、それではまるで美鈴が生きていて、自分の意思で帰らないのだと言っているようなものではないか。これは一体何の宣戦布告なのだろうか。
濱島の発言を不審に思った卯之吉が銀八(石井正則)に後をつけさせると、行きついたのはならず者たちが集まる洲崎の古寺。どうやらそこが世直し衆の根城らしい。

果たして濱島は、本当の意味で世直しをしたいと考えているのだろうか。
濱島は坂田に、世直し衆が得た金を使って火除け地と江戸を結ぶ橋を架けたいと訴える。しかし坂田は諸悪の根源である幕府を窮地に陥れ、尾張徳川が政を担うのが先だとして却下。
目の前の苦しむ人をなぜ見ないのかと反発する濱島だったが、大事を為すためには小を切り捨てると決め、堤を壊したのは自分自身ではなかったか。
美鈴を美佐緒と呼び、橋の構想を活き活きと語る濱島は、まるで母に褒めてほしがる幼子のよう。もしかして濱島が救いたいのは、庶民たちではなく、母を亡くした自分自身なのかもしれない。
卯之吉を自分勝手と批判しながら、卯之吉のことが頭から離れないという美鈴に無理矢理卯之吉を仇敵と信じ込ませ、自分の傍らに置いておくことこそ、よっぽど自分勝手というものだろう。
濱島の心も行動も、矛盾だらけだ。

変わらぬ想いでも伝えなければ何も変わらない

美鈴が生きていると疑わない卯之吉だが、もし濱島の言う通り、美鈴が自ら世直し衆であることを選んだのであれば仕方がないという諦めの気持ちも。
美鈴がいないさみしさから、美鈴と同じ手順で決して美味くはない味噌汁を作る卯之吉。銀八はその姿を見て、戻って来てほしいとちゃんと伝えれば美鈴は帰ってくるはずだと卯之吉を勇気づける。

美鈴を探しに古寺に行った水谷(村田雄浩)は、世直し衆が今夜上州屋を襲うという話を耳にする。美鈴を見つけるチャンスだが、奉行所に知らせると美鈴まで捕まってしまう。水谷と源之丞は荒海一家と協力し自分たちで世直し衆を捕らえることに。
そこに、いつもなら捕り物に積極的に参加などしない卯之吉も共に行くことを決める。戦力としてはまるで役に立たないし、そんなことはみんなわかっている。けれど卯之吉には、美鈴に会って直接伝えねばならぬことがあるのだ。

上州屋襲撃の夜、美鈴に刃を向けられた卯之吉はお約束の失神もせず(私の記憶が確かならシリーズ初!胸熱!)美鈴とまっすぐに向き合う。それはこれまで相手に合わせて自分の意思を通すことなく生きて来た卯之吉にとって、大きな変化だ。
何かを思い出しそうになった美鈴は頭痛に見舞われ、卯之吉を斬ることなくその場を去る。失われた美鈴の記憶を取り戻すこと、江戸からの資金の流出を防ぐこと、世直し衆を大元から断つこと……困難に見える問題たちを解決に向かわせることは、きっと不可能ではないはず。だって、あの卯之吉が変われたのだから。

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