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ドラマ『私と夫と夫の彼氏』第7話レビュー:優しさが縛りつけるもの

あらすじ:夫・悠生(古川雄輝)と夫の彼氏・周平(本田響矢)との3人での共同生活がスタートした美咲(堀田茜)だが、周平からのキスを一瞬でも受け入れてしまったことに戸惑いを隠せずにいた。そんな中、美咲に悠生と周平の隠し撮りを送り続けていた犯人が明らかになる。動揺する美咲は友人の真樹(岡本玲)の家を訪ねる途中、同居人の大地(永田崇人)と遭遇する。真樹も交え楽しく食事を終えた美咲は帰ろうと立ち上がるが大地から強く引き寄せられ――?

公式サイトより)

幸せになるはずが、何かが間違っている

見たとしても見なかったとしても、2人の間に何かがあったことなんて、空気でわかってしまう。だって自分が好きな人のことだから。

周平(本田響矢)からのキスを受け入れてしまった美咲(堀田茜)。周平ではなく自分がリビングで寝ると言い出した悠生(古川雄輝)は、美咲と周平が近付くことを恐れている様子。
美咲は美咲で、悠生を裏切ってしまった背徳感はもとより、悠生がいつも受けているであろう周平のキスの感触に嫉妬を覚えてしまう。
最適解であったはずの3人暮らしは、今にも崩れそうな均衡を必死に保とうとする緊張感に満ちている。

悠生も美咲も、お互いに幸せでいてほしいと願っているけれど、自分の幸せを手放すこともできないでいる。美咲に嫌がらせの写真を送って来ていた三角(しゅはまはるみ)の言葉は、自分の価値観を押し付けるものではあっても、ある部分では真実だ。夫の気持ちは他の人に向いているのに、美咲の愛が夫を縛り付けているのではないかと。

美咲は三角に毅然と対応したことを悠生と周平に伝えるが、悠生は気丈に振る舞う美咲の姿に、三角がかつて悠生に指摘したように自分が無理をさせているのではないかと思い悩む。
眠れずキッチンに現れた悠生と美咲。悠生は飲み物を淹れようとして、何か作業を「間違えた」と色々言う。悠生が間違えたのは、この生活を選んだことでもあるのだろうか。
不安を抱えたまま、美咲は「私たちは大丈夫だよ」と悠生の背中を抱きしめる。強く縋る美咲に悠生は応えることもできず、そこに確かなものなんて何もないということが浮き彫りになるばかり。

見たことのない景色の場所へ誘う人

周平と悠生が仲睦まじく掃除機をかけるている間にも、ふとした隙に周平の視線が美咲に絡まる。逃げ場を求めるように真樹(岡本玲)の家へ向かった美咲が道のりの途中に出会ったのは大地(永田崇人)。
風景しか撮影しないという大地がカメラで切り取った美咲の笑顔は柔らかい。大地は張りつめた美咲の心を緩めてくれる人なのだなと思う。

たぶん大地には幾分コミュ障なところがある。初対面の人にも明るく振る舞うけれど、どこか挙動不審でもあって、微妙に目を合わせなかったり。風景専門のカメラマンなのは、人よりも風景と対峙する方が写真に自分の想いを落とし込んで表現できるからなんじゃないだろうか。
そういう大地が心を動かされて美咲にシャッターを切りたくなったのは、自然と向き合う時と同じように美咲に対して心を開きたいと思ったからなのかもしれない。

大地が写真に収めた風景はどれも美しくて、とりわけ北アルプスのモルゲンロートが美咲の心を掴む。見てみたいけれどこんなに高い山に登ったことはないしハードルが高そうと、美咲は最初から諦めモード。それでも美咲が望むなら連れていってあげると誘う大地。彼はこれまで美咲が見たことのない世界を見せてくれる存在になっていくのだろうか。

初めての恋が一番難しい

美咲と周平に真樹も加わり、楽しく鍋をつつき酒を交わす間、家で一人切なさを募らせる悠生。周平の帰りを待ちわびて、ソファに無造作に脱ぎ捨てられたトレーナーに顔を埋める。それは30手前の男性がするのを見るとちょっと引いてしまうような行為だし、周平が自分の元に帰ってくると思うだけでドキドキして眠れないなんて、まるで10代の少年のよう。でも初めて心から好きだという感情を持った同性が周平なのだから、無理もない。これは悠生にとっての本当の意味での初恋なのだ。

けれど妻であり大事にしたい美咲と、周平との3人で暮らすという状況において、悠生はきっと周平に対する気持ちを恋じゃないものにしたかったんだと思う。経験したことのない、恋焦がれる気持ちを抱えるのはとてもしんどいことだから。それでも周平に触れたいという衝動は抑えがたくて、自分でもコントロールできない感情に悠生は苦しむ。

真樹は悠生に電話をかけ、大地が美咲に惹かれていることを伝える。美咲は三角から、悠生は真樹から、それぞれ相手を解放してあげるべきと言われている状況だが、好きな気持ちはどうしたって消せるものではなく......果たして2人はどのような答えを出すのだろうか。

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