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ドラマ『私と夫と夫の彼氏』第6話レビュー:正三角形にならない心の距離

あらすじ:夫の悠生(古川雄輝)と夫の彼氏で自分の元教え子・周平(本田響矢)との3人での共同生活がスタートした美咲(堀田茜)。そんな不思議な状況を友人の真樹(岡本玲)は3人の関係は正三角形を保てなければ破綻すると指摘。隔たりのないよう振る舞う美咲だったが周平が夫婦の寝室に入るのだけは許せずにいた。3人で暮らすのがベストな選択だったと自分に言い聞かせていた美咲。だが、ある日周平からの情熱的なキスを受け入れてしまい――?

公式サイトより)

形にあてはめても追い付かない心

美咲(堀田茜)、悠生(古川雄輝)、そして周平(本田響矢)。屋上に寝転んだ3人は、頭を中心にして放射上に足を伸ばし、つま先を頂点として正しく三角形を描いた。
美咲は3人で暮らすことを決意するが、実際に生活を始めてみると、正三角形のように均衡な関係を保つことは難しい。

真樹(岡本玲)は美咲が悠生と周平を監視したいだけなのではないか、美咲と悠生が寝室で、周平がソファで寝ている時点で不公平だと指摘する。
美咲はきっと、監視したいというよりただ悠生の側にいたいだけなんだろう。一緒に暮らすことで、恋人同士である悠生と周平の心理的な距離の近さを嫌というほど感じてしまう。だから美咲と悠生がダイニングテーブルに並んで座るのも、寝室を同じにするのも、せめて物理的にくらいは悠生の近くにいないとやり切れないからなんじゃないだろうか。形としては不平等に見えても、それでやっと美咲が自分の心を保てるのだ。
けれど美咲は真面目に、食事の時の座席の位置を変え、悠生と周平が寝室を使うことを提案する。だがやはり気持ちはついていけず、周平が寝室に入ろうとするだけで拒絶反応を起こしてしまう。

人の心は一色ではないから割り切れない

悠生は大地(永田崇人)と談笑しながら帰宅する美咲の様子が気にかかる。単純に楽しそうでよかったと喜んでいる風ではなく、かといって嫉妬とも少し違う。恋愛感情こそなくても、深いところで理解し合っていると思っていた美咲が自分から離れていくようなさみしさを感じているのかもしれない。悠生が嫌いなパクチーを、美咲は大地と一緒に食べたという。それはとても些細なことだけれど、美咲は自分が入り込めない関係を別の誰かと築いているのだ。
なのに美咲が悠生の手を掴んでも、悠生はその手を取ろうとはしない。人として好きでも恋愛対象ではない美咲に、悠生はもう自分を偽って触れることはしない。美咲に触れたくないのではなく、美咲が自分を恋愛対象として見ているとわかるから。それは悠生なりの優しさだけれど、美咲には酷なこと。美咲に人生を捧げると言って自分を追い詰めてしまった過去を考えれば、悠生にとっては進歩とも言えるのだが。

周平の漫画アシスタント仲間で元カノの美緒(大谷凜香)は、2人を同時に好きになるなんて、そんなのは本当の好きではないと言う。自分なら本気で好きな人2人と暮らす状況には耐えられないと。美緒の言葉が周平に刺さるのは、それが美咲や悠生の思いを代弁しているように感じられるからだ。周平とテーブルに向かい合って話をしているのは美緒だけれど、美緒を通して美咲と悠生の思いが語られているようでもあり。だとしたら、自分は2人にとって耐え難い状況を作ってしまっているのだろうか。それが僕だからしょうがない、と周平は言うけれど、自分の特性が誰かを苦しめていることまでしょうがないと割り切れるわけではないから、周平だって苦しい。

美咲の中に生まれる後ろめたさという新しい要素

正三角形を保つために、美咲は悠生との寝室を出て隣の部屋で寝ると決める。自分で自分に気合を入れなければならないくらい、自ら好きな人との間に距離を作るのには勇気がいる。わかっていたことだけれど、部屋を分けたことで否が応でも美咲の切なさは増す。
一人になって過ごす夜、3人それそれが近くにいるのに触れることはできない相手を想う。形式上は正三角形になっても、その頂点同士はなんだか遠くなっているような気がしてしまう。

そうして迎えた朝、寝ぼけてか故意にか、周平は美咲にキスをする。驚きながらも周平を受け入れてしまう美咲。周平が高校生だった時には拒絶したキスを、今度はそうしなかった。今の美咲は誰かに愛されることを求めていて、触れてしまった温もりをすぐに突き放せないほどには弱っている。美咲は強くてカッコいい人だけれど、だからといって鋼でも聖人君子でもない。

周平とキスをしたことで、美咲は悠生に対する後ろめたさを抱えることになる。これまで美咲の中になかった罪の意識のようなものは、これからの3人の関係をどう変えていくのだろうか。

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