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ドラマ『私と夫と夫の彼氏』第8話レビュー:頼る勇気

あらすじ:夫・悠生(古川雄輝)と夫の彼氏・周平(本田響矢)との3人の共同生活をスタートさせた美咲(堀田茜)は、親友・真樹(岡本玲)の同居人・大地(永田崇人)から好意を寄せられるが夫を選ぶと突き放す。一方、真樹から美咲と大地の関係を聞いた悠生は複雑な感情を抱いていた。お互いがお互いの幸せを願いその気持ちが強くなるほど関係が壊れていく美咲と悠生。周平からクリスマスプレゼント交換をしようと提案された美咲と悠生がお互いに用意したのはなんと同じもので――?

公式サイトより)

優しさだけでは、幸せになれない

頼ること。大切な人を別の誰かにゆだねること。自分という枠を超えて他人を人生に巻き込むことには勇気がいる。人はなかなか変われない、と言った悠生(古川雄輝)が美咲(堀田茜)のために下した決断。その覚悟に泣きたくなる。

姉で漫画家の仲さとり(原田佳奈)が言う通り、自分の中に抱え込んでしまうのが悠生の悪いクセ。自分のことを好きな美咲を傷付けないために周平(本田響矢)への気持ちを抑え込むけれど、だからといって美咲に応えられるわけでもない。優しさのつもりが美咲を飼い殺しにしている状態を作り出してしまっているとも言える。
「自分と、美咲ちゃんが幸せでいるために……が、最優先すること」
姉の言葉に、何がお互いにとって本当の「幸せ」なのか見えなくなっていることに気付く悠生。
相手を思いやるからこその膠着状態に、さとりは思っているだけではなく決断して行動することが必要なのではないかとアドバイスする。

相手の幸せを自分の責任として抱え込むことをやめる

美咲にだって心が動く瞬間がないわけではない。寝起きの周平のキスを受け入れた時も、大地(永田崇人)が向けたカメラに笑顔を見せた時も、悠生以外を好きになるかもしれない可能性が見えた。それでも周平には「教え子としか思えない」、大地には「私は結婚してるんだよ」と頑なに自分のゆらぎを否定する美咲。美咲は人として好きだと言ってくれる悠生の中に微かにでも希望を残したくて、結婚という枠組みの中に留まることにこだわっているようにも見える。

大地の家を訪ねた悠生は、大地が撮影した美咲の写真を見せられる。そこに映るのは、今の自分が美咲にさせてあげることができない、心からの笑顔だった。自分が美咲を幸せにするのではなく、他の誰かに美咲の幸せを託すことも必要なのではないか。真っ直ぐに悠生の目を見て美咲が好きだと言う大地は、それに値するように思える。初対面の悠生と気まずそうにコミュニケーションを取りながら、美咲への想いを語る時はしっかりと目を合わせて話す。その様子からどれほど真剣に考えているのかが伝わってくるから。
大地から渡して欲しいと、美咲の写真を返した悠生。それは自分が美咲の幸せを担ってしまっているという、お互いを縛り付けるものを手放した瞬間だった。

心の負担を他者にも担わせる

もうすぐ帰ると美咲が連絡を入れたにも関わらず、悠生はリビングで周平を押し倒す。そこにははっきりと美咲に見せる意思があった。美咲が大地に告白された夜、周平を部屋に連れていってからキスをした配慮と、わざと真逆のことをしたのだ。
「わかってくれよ俺のこと」「これが本当の俺なんだよ」
その言葉は周平に向けているようで、美咲に向けているようでもある。自分は美咲には向けない衝動を隠し持った人間なんだと、美咲にわかってもらいたい。そして自分に見切りをつけてほしいと。
強引で残酷にも思えるやり方は、これまでとは違った悠生の「優しさ」だ。たとえ美咲を傷付けてしまうとしても、今の息苦しさから美咲を解放してあげたい。これまで決断し、行動することができなかった悠生は周平を頼ることを選んだ。
「俺らしく生きるためだったら、いつだって周平を頼ってもいいんだよな」
周平が想定していた頼り方ではなかったかもしれないけれど、悠生はちゃんと周平を信じて、心を預けたのだと思う。一人ですべてを抱え込んできた悠生が周平に負担をかける道を選んだのは、とても大きな変化だ。

クリスマスパーティの夜、美咲と悠生がそれぞれへのプレゼントとして用意したのは離婚届だった。丁寧にラッピングされた離婚届から、相手を思いやる気持ちが伝わってくるような気がする。そう、これは結婚という形式からお互いが自由になるための愛の形だ。
周平が美咲と悠生に贈ったのは、クローバーとシロツメクサの絵。三つ葉は美咲と悠生と周平みたいで、幸せになるには何かが足りない。それでも2人と一緒にいたいと思ってこの絵を描いたであろう周平の願いとは逆行する離婚届。けれど「大丈夫、大丈夫、愛さえあれば」と美咲が自分に言い聞かせたように、そこに確実に愛はある。
クローバーが夜空に向かって葉を伸ばす先に、希望の光はあるだろうか。

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