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BS時代劇『大富豪同心3』第2話レビュー:ひたむきな心が孕む危うさ

あらすじ:八巻家では、美鈴(新川優愛)がおカネ(若村麻由美)に家事でしごかれ自信を無くしていた。そんな時、大奥の秋月ノ局(前田美波里)から頼母子講の運営を任されていた講元(運営者)が世直し衆に襲われ殺害される。全ては尾張家老・坂田(新藤栄作)の陰謀。秋月ノ局から内々に相談された老中・甘利(松本幸四郎)は内密に捜査を進めるが、逆に秋月ノ局の怒りを買いピンチに立つ。甘利を助けるため卯之吉(中村隼人)たちが動く。

公式サイトより)

老中・坂田の策略

金の力か、人望か。なんだかんだで卯之吉(中村隼人)の周りには人が集まって来るが、トラブルを抱える人たちも引き寄せてしまうようで……。

頼母子講を運営する料亭花筏の主人・万吉は、不景気で借り逃げする者も多く困っているという。卯之吉(というか三国屋の若旦那)に金主(講の元本となる大資本の出資者)になってもらいたいと菊野に相談をもちかけるが、その夜、清少将(辻本祐樹)に斬られてしまう。
実はその頼母子講の金主の一人は公家の血筋を引く大奥御年寄・秋月ノ局(前田美波里)。秋月ノ局は頼母子講の苦しい財政を聞きつけ、老中・甘利(松本幸四郎)に出資金と利益を回収するよう申しつける。甘利の命を受けた南町奉行所内与力・沢田(小沢仁志)は、金の用立てに苦慮し卯之吉を頼るが、万吉が殺害された際に金額が書き込まれた台帳が奪われ、肝心の出資金と配当金の額がわからないというのだ。額がわからねば貸付ようがない。一体誰が、何の目的で台帳を盗んだのか。

卯之吉の依頼で荒海一家が悪党一味から台帳を取り返し、一件落着……と思いきや、実は台帳は偽物。秋月ノ局の逆鱗に触れてしまう。このことが将軍、ましてや帝の耳に入ってしまってはと震え上がる甘利。つまり台帳が偽物とすり替えられたのは、甘利を陥れるため。裏で手を引くのは尾張藩家老・坂田(新藤栄作)である。
坂田は濱島(古川雄輝)が誰にも聞いてもらえなかった提案を絶賛し、幕府への上申を約束する。濱島は深川・洲崎の湿地を田んぼにするといい、そのために西洋から測量器を買うのだと意気揚々。だが濱島の話に、卯之吉たちはなんだか納得がいかないよう。濱島はそんな周りの反応も意に介さず、覚悟を持って伝えればよいのだと説く。盗まれた台帳は頼母子講の加入者たちに証文を差し出させて台帳を作り直せばよい、深川を救いたいという気持ちがあれば必ず相手にも届くと。しかし坂田のことだ、何か狙いがあるとしか思えない。

手持ちのカードをどう使うか

濱島の思いは純粋無垢だ。濱島の信念を受け取った菊野(稲盛いずみ)は、頼母子講の加入者たちを集めて深川の危機を訴える。一度は皆、ご法度の頼母子講の証拠を差し出すなんて……と渋ったものの、菊野の覚悟を知って考えを翻す。あとは秋月ノ局がいつも懐に入れているという証文さえあれば、台帳を復元することが可能になった。
卯之吉は台帳を完成させるべく、大掛かりな一芝居を打つ。卯之吉の作戦は、自分と瓜二つの幸千代の振りをして秋月ノ局を接待する最中、一時的に証文を持ち出し、内容を書き写してから何もなかったかのように返却するというもの。卯之吉、菊野、由利之丞(浅香航大)、銀八(石井正則)、弥五郎(村田雄浩)の見事な連係プレーによって、無事に台帳のパーツが揃った。

卯之吉のやり方は正攻法ではない。幸千代と自分がよく間違われることを逆手に取って利用したり、役者の由利之丞をホストよろしく秋月ノ局に侍らせたり、使えるものは何でも使ってしまおうとするところには商人らしいたくましさと才覚を感じる。
それは濱島が持ち合わせていないもので、政策の提案にしても、濱島には一軒一軒老中を回って訴えることしかできない。商家の息子である卯之吉には自然と身についている処世術でも、濱島の育った環境は違うのだ。
おカネ(若村麻由美)の求める家事レベルに達することができず、自信をなくしている美鈴(新川優愛)にしても、剣豪の娘としては優秀ながら男手一つで育てられ、料理や掃除の腕を磨く機会は与えられなかった。
ただ生まれた家が違うだけで生じた格差。それでも、与えられたカードでどうゲームに挑むかを考えなくてはならない。

家庭の中も外もトラブルだらけ

直球ストレートで勝負することしか知らない濱島の愚直さは、菊野の心を動かしたようにプラスに働けばよいが、相手を間違えると厄介だ。
坂田は濱島に大義名分を与え、甘利失脚のための駒として使おうとしている様子。近頃江戸を騒がしている強盗集団・世直し衆の動きに濱島が関係しているらしいのも、坂田の指示によるものだろう。濱島の正義感に世直し衆を掛け合わせると、なんだか過激な方向に行ってしまいそうな不安を覚える。
目的のために手段を選ばないという意味で卯之吉と坂田は共通しているが、それが自分のためなのか、周りの人のためなのかで、その間には大きな差がある。

美鈴が困っているのは、家事もそろばんも上達しないことだけでなく、そのために卯之吉の警護をしたり剣術を磨いたりする時間が取れず、本来の得意分野が活かせなくなっていることだ。
家事と仕事の両立や、嫁として期待される固定的な役割分担は現代にも通じる悩み。おカネと美鈴の板挟みで優柔不断な卯之吉の態度も、嫁姑あるある。

何やら家の中にも外にも、困りごとが山積みだ。卯之吉がどう解決していくのか、お手並み拝見である(気絶してるだけだったりして)。

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