何十年か先の寿命で


サラッと先のことを言う元同僚に笑うやら何やらする深夜。


元同僚は先の話をなんでもない時に、なんでもないようにサラリと口にする。
事後に私が「つかれた、死にそう」と呟いたら、「何十年か先の寿命で死んでくれ、俺が生きてたら看取る」と言われた。
私も元同僚も『ずっと一緒にいよう♡』みたいなことは1度も言ったことがない。
それでもいつかの未来の話には当然のように私が存在していて。
再婚するかどうかは分からない。
お互いが必要性を感じればするとは思っているけれど、それはきっとずっと先の話になる。
それでも看取るくらいの先に私はいるらしい。

元同僚はいつか地元に帰る。
それは付き合う前から、なんなら知り合った頃から知っていること。
地元が大好きで、地元にいる友達とまるで10代の頃のように過ごすことも楽しくて、その他にも色々、だから何があろうと絶対に元同僚は地元へ帰る。
付き合う前に元同僚の友人と飲んだ時に言っていたことを少し。
「俺が地元に帰る時についてこいなんて言えねぇだろ」
「俺の勝手で振り回して、それの責任なんて取れねぇし」
「前の嫁になんかあった時は子供らのことだってあるし」
「人生を俺に預けろとは言えないよね」
「地元に連れて帰ったとして、もしだめになった時のことを考えたら簡単に付き合おうとは言えないだろ」
俺に紹介するくらいなのになんで付き合わない?と聞かれた元同僚はこんな感じのことを話していた。
正直な話、私にはよく分からなかった。
今この瞬間の私は元同僚が大好きでも次の日にはどうでもよくなってるかもしれないじゃない?なら今をより良くいたい、そんなことを思っていたわけです。
でも元同僚は私と生きた先を考えて、もしかしたらな別れた後を考えた。
元同僚と付き合い続けるなら地元に行くことが絶対条件になる、でも仮に別れたら仕事や住居をまた見つけなければいけなくなる。
だから関係に名前をつけることを簡単に決断出来ない、そう言った元同僚になるほど~?となったことを今でも覚えている。

寝る前になって、さっきこんなこと言ってたけど前はこう言ってたじゃない?と話したら、元同僚がポソポソ話してくれた。
まだ再会したての頃は先のことなんて考えるような好きではなかったそうで。
連れ帰るとかそんな気持ちの好きというより、それこそ学生みたいな好きだったと。
でもいつからか、俺と別れてもある程度幸せでいられるようにと考え出して、付き合うのは私にとってリスクが大き過ぎると思ったんだってさ。
私は別れや愛されなくなることが怖い怖いって思ってばかりで、元同僚の周囲(主に子供)ばかりを気にしていたというのに。
「今はちゃんと人生設計みたいなのに きい のことも入ってるよ」と笑っていた。
「私愛されてるねぇ」と冗談めかして言ったのに、「そりゃあそうだからね」と返されると何も言えない。

ぼんやりとした『この先も一緒にいれたらいいなぁ』という考えしかない私。
健やかで幸せであって欲しいとはずっと思っているし、それを与えるのは私だったら良いなとは思っている。
いつか地元へ帰ることも納得していて、その時にどうするかは考えても仕方の無いこととして考えていなかった。
だって元同僚が私を連れ帰る気だなんて聞いていなかったし。
それを聞いていたら就活はもっと考えたかもしれないなぁと思ったし、需要のある資格取得でもした方が良いなと思った。
元同僚が責任云々を取る気でいてくれるようなので、私は私の出来る範囲で責任を軽くしてあげるのが正解なのかなと。

自分が誰かの人生の特別に組み込まれているという事実に驚き過ぎて寝られなくなった…
愛されていると思っていても未来を夢想するような性格をしていないせいか。
現実主義過ぎる私はやっぱり『ずっと一緒にいようね♡』とは言わないし思ってない。
出来るだけ長く一緒にいたいとは思うけど、どうなるかなんて分からないって思ってしまう。
何十年か先に寿命で死ぬまで私はそう思ってると思うよ。
その時まで一緒にいられたら幸せだけど、そうでなくなって元同僚のせいになんかしないのにね。


来週の休みは元同僚と過ごすことになっていて。
2人でゲームをする約束をしている。
頂き物の良い日本酒を飲むのを楽しみにしている私と、日本酒を封印しすぎてまともでいられないかもしれない元同僚の対決。
楽しみ過ぎてご飯作りを張り切ってしまいそう。
…ふとした時、寝ている時、元同僚が言う「愛してるよ」がずっと続けばいいなと思う。
絶対に言わないけど、そうは思ってるってことで今回は。



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