見出し画像

人畜無害オーラを出してると、いろんなことに巻き込まれやすい

よく話しかけられるタイプの人ってのはいると思う。
私もそう。

レジで並んでいると、おばあちゃんに話しかけられる。
子供の友達にも普通に話しかけられる。
クレジットカードの不具合でサポートに電話かけたはずなのに、いつの間にか世間話をしている。

なぜなのか。

この間の一時帰国で、山手線のどっかの区間が止まっていたらしく、ホームに人が溢れかえっていた。

その人の多さにびっくりしながらも、少しずつ進む人の列に並んでたら、電車から降りてきた外国人家族のお母さんが、笑いながら、
「なにこれ、どうなっちゃってんの?!」
と、私に言ってきた。
「本当にね〜」
と、返してすれ違ったんだけど、はたから見ればまるで知り合いのように見えただろう。

でも、まったくの他人。
しかも英語だった。

道だってしょっちゅう聞かれる。

だから、街を歩いていて、道に迷ってるっぽい人いると、心の中で、
「くるぞ、くるぞ、聞きにくるぞ。......はい、来た!」
と内心思っている。

以前は、そうやって聞かれても、私が方向音痴のせいで、十中八九、案内できなくて非常に心苦しかったけど、今はスマホでちゃちゃっと調べられるから、旅行者が近づいてきてもどっしりした気分でいられる。

まあ、道を聞かれる程度なら全然いいんだけど、この「この人なら大丈夫感」がすごいせいで、思わぬ体験をするはめにもなる。

まだ二十代の初めの頃、初めて行ったアメリカの短期語学学校で、留学生のためにハワイ出身の大学生が主催するハワイアンダンスのショーが開催された。

そして、観客の中から数人が選ばれ、ハワイアンダンスを即興で習って、みんなの前で披露する、という催しがあった。

もちろん、私も数百人の中からピンポイントで指さされた。

拒否するも、まわりの学生に押し出され、まるで凹凸のない体に、されるがままにハワイアン風の布を巻かれ、ハワイアン風へなちょこ、ニョロニョロダンスを踊る羽目になってしまった。

そして、世界各国から来ている留学生に写真を撮りまくられ、その写真が世界各地にばら撒かれたと思うと、なかなかに塩っぱい経験になった。

最近では、女子旅したニューオーリンズのバー。

他の友人と別れ、一人、最前列の一番端のテーブルで黒人の人たちによるジャズのライブが始まるのを待っていたら、準備してるドラムの兄ちゃんに、「バーに行って、俺用のドリンクをもらってきてくれ」と頼まれた。

「なんで、私が?」とは思ったけど、観客の波を抜け、バーでドリンクを受け取り、無事兄ちゃんの元にドリンクを届けた。

実はこの時点で、後方から見ていた友人たちは、私が飲み物を奢って、そのドラムの兄ちゃんをナンパしている、と盛り上がっていたそうだ。

その後、音楽が始まり、軽快なジャズに乗って、セクシーな女性ボーカルの歌も披露される。

観客もフロアびっしりに埋め尽くされ、通りの方からも人が覗き込んでいる。

最高潮に盛り上がってきた頃、なぜか、ボーカルさんが私の目を見つめて、歌いながら歩いてきた。

動揺していると、手のひらを、カモン、カモンの動きで、私に「こっちに来い」と呼ぶ。

酔っ払った観客は、ヒューヒューいって盛り上げる。

引くに引けなくなった私は、座っていたスツールから降りて、ボーカル美女の元に、
「なんすか?」
「なんすか?」
みたいなへっぴり腰で近づいた。

そして、気がつけば、手を取られ、押したり、引いたり、くるくる回されながら、へなちょこダンスを全観客の前で披露していた。

今思えば、あまりアジア人の旅行客を見かけなかった気がする。

そして、私は、何のジャンルであろうと、生の音楽が好きで、じっくり見たいし、聞きたい派だから、おしゃべりしたり、飲んでたりしたい派の友達と別れて、たった一人で最前列のテーブルに座っていたのだ。

たぶん、相当目立ってたんだと思う。

そして、無敵の「人畜無害オーラ」もあって、選ばれたんだろう。

まあ、黒人のジャズバンドをバックに、超絶ぎこちなダンスを披露するアジアのおばちゃんに、観客もかなり盛り上がってたらしいから、よしとしよう。

ライブ後に、一緒に写真も撮って、いい思い出になったし。

なんだかんだあったけど、ニューオーリンズ、もう一度行きたいな。

〜終わり