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干し柿をつくってみたよ

やむを得ず流れで柿を干すことになったお話です。

昨年の秋、叔父から唐突に連絡があった。
「柿、とりにこいよ。」
父親の実家には立派な柿の木がある。
ここ二十数年ほどその存在を放置していたが、昨年はなぜか放っておけなくなったのか、私に収穫依頼が届いたのである。
祖父母が他界し、一人で暮らす70代の叔父が自ら作業するわけにはいかないだろう。柿は大好物だし面白そうなので行ってみるか、と興味本位で引き受けた。

都内の自宅からさいたま市の叔父宅へは電車で1時間半ほどかかる。まあまあな長距離である。大好物の柿をありったけ持ち帰れるように家中のバッグを持ち出して叔父宅へ向かった。

私は興味が湧いたことに対してはあまり深いことを考えずに行動に移してしまう悪い癖がある。この日も、道具とかそろってて軽く枝を切り取る感じをイメージして挑んだところ、なんと高枝切りばさみが無い!仕方なく物置の屋根へ登り、そこからさらに上へ伸びる枝へ登って、足元がおぼつかない中での作業。(ボルダリングに通っていた経験がここで役立つとは。。)
熟れてそうなオレンジ色で動物にかじられてないやつを片っ端から取ってバケツに入れていった。この作業はすごく楽しかった。ゲームとかやってても素材集めしている時が一番楽しい。これは人類特有の本能だろうか?


採集がおわり、テーブルに並べてみると合計50個くらいあった。けっこうとったな。
艶々とオレンジ色に光る柿たち。見るからに甘そうである。
ひとつ味見してみることにした。
皮をむき八つ切りにしたやつをひと口かじって愕然とする。
「!!?」
口の中と喉一面にまとわりつく異物感。
げええええ!渋柿だ!!!
とっさに吐き出した。
叔父「今のはよく見るとちょっと黄色かったもんな。こっちは大丈夫だ。切ってみよう。」
それも食べてみるが、やっぱり渋い。ぐへー。また吐き出す。
(あれ、こいつら、こんなにオレンジ色なのにもしや全て渋柿なのか、、、?)
その後三つほど味見を繰り返したが残念ながら全て渋かった。
叔父の推測によると例年にくらべて気温が高い日が続いたから甘味が育ってなかったそう。(その推測もっと早くしてくれよ。。)
どうしよう困ったな。渋柿の処理なんてしたことないよ。でもせっかく頑張ってとったしな。バッグもたくさん持ってきちゃったし。。
悩んだ挙句、全ての渋柿を持って帰ることにした。

帰宅後、荷物をほどき、床一面に広がる柿たちに呆然とする。。
(さて、これどうしようか。)
5日ほどめんどくささと闘い、やってきた土曜日の朝。ついに渋柿作りに挑戦してみることにした。

作り方をググりながら朝9時に作業開始。
まず50個全ての皮むき。これがいちばんしんどかった。
もともと料理するときは横着して野菜や果物の皮はほとんどむかない主義で生きてきたので、そもそも皮むきに慣れていない。加えてしばらく研いでいなかった切れ味の悪い包丁を使ったため、結局皮むきだけで3時間もかかった。

次は柿の表面を消毒する。熱湯に一瞬つける方法とアルコールをスプレーする方法があるらしい。そしてとあるレシピサイトによるとブランデーをスプレーすると出来上がりが大変美味とのこと。ちょうど前回の墓参りの時に叔父からもらったブランデーがある!(あれ、全て仕組まれていたのか?)
ブランデーをスプレーすることにした。

続いてひとつひとつに紐をくくりつけていく。ここでさらなる困難にぶち当たる。そもそも干し柿用の柿は、紐をくくりやすいように枝を少し残して切り取るらしいのだが、私の柿たちはハサミ無しで手でもぎ取ったため、枝が付いていない。仕方なく紐の通り道を作るためにヘタのすぐ下を少し切り取った。小さな工程でも、50個分となるとかかる工数がバカにならない。ここまででもう昼過ぎになっていた。ようやく全ての柿を紐にくくりつけ、ベランダへ干したのは14時頃。

干した後は10日間ほど放置し、水分が抜けて小さくなってきた頃から、毎夜ひとつひとつ手で揉む作業を追加。そこからさらに一週間ほど経って、食べごろのあんぽ柿が完成しました。

できたてのあんぽ柿をいざ試食してみると、、、う、んんんまい!!!!
木登りしてとるところから全行程を自分の手でやったせいか、美味しさもひとしおでした。これは病みつきになりそう。
ということで、今年もおそらく干し柿を作るでしょう。新たな趣味ができてしまった。

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