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発達段階に応じた望ましい体験

先日発表されたこちらの研究をうけて、考えたことをつらつらと。
報告書本文では、このような研究も紹介されている。
そこには「体験の質」について述べられる箇所もあるが、未だ検討の段階であるとのこと。先んじてその記載に挑戦する。

おさらい

前回の記事を発達段階の区分けに使用する。
細かな解説はそちらを参照されたい。

名称未設定

・上位段階は下位段階を内包する。単体で成り立つのではなく、必然的に過去を含む。ゆえに下位段階の充足不全は成長の妨げとしてあらわれる。
・年齢が達すれば各段階に到達するのではなく、現代において生体の構造上到達可能な年齢を掲載している。これは人類の発達とともに加速するとも考えられる。
・上位段階が必ずしも「良い」わけではない。各段階にはそれぞれ強みと弱みがある。状況によって段階間を往還しながら、人は成長する。


発達段階の観察

まず、各段階をいかにして見分けることができるのかが一つの課題となる。
(なお、未だ簡易的な計測方法は確立されていない)
そこで、冒険教育で用いる"GRABBSS"を発達段階に反映させてみた。

GRABBS段階

マニアックな方のために、試作段階の追記も作っておいた。

GRABBS段階追記

活動においてはこのような基準を定めて、発達段階を査定することが求められる。
そもそも、これが出来なければ「発達段階に応じた望ましい体験」を生み出すことは困難だろう。


発達段階に応じた教育手法

次に、各段階におけるテクニックを明確にする。

発達段階別教育手法軽量

・「教育手法」については他の手法も十分に考えられる。代表的なもののみ挙げている。ポイントは、目的に応じて手法が異なることだろう。
・「意欲」は各段階で求められる方向性を示す。
・「体験」「振り返り」「一般化」「試行」は体験学習サイクルのそれである。縦の発達を輪切りにして、各段階を言語化した。

前段の観察に引き続いて、これらの手法を扱うことが出来なければ「発達段階に応じた望ましい体験」を生み出すことは困難だろう。


発達段階に応じた望ましい体験

以上を踏まえて、望ましいであろう体験を発達段階別にリストアップした。

発達段階別プログラム

・「ある段階に位置する=すべての体験が同じ段階」ではない(「インテグラル理論におけるライン」と同じ捉え方)。個人のそれぞれの体験に応じてそれぞれの段階が存在している。
・一つでも高い段階のものがあれば、他の体験も容易にその段階手前までは引き上げることが可能だろう。
・仮に複数人が同じ体験をしたとしても、個々人の発達段階でそれを解釈する。ZPDの考え方を適用すると、支援があればひとつ上の段階として体験を享受することが可能となる。


発達段階に応じた望ましい振り返り

さらに体験を学びに変えるための要となる「振り返り」も段階別に記載を試みた。

振り返りELC段階解説軽量

・発達段階における認識の範囲を超えた部分は、そもそも気づくことがない。
・ZPDによって一段階上を垣間見ることはできる。
・器質的な発達上、個人での振り返りが可能となるのはレベル2以降と考えられる。


おまけ

混乱してしまうので、低次段階を中心としたもののみ掲載したが、物足りない方は下記の完全版を使われたし。なお、高次段階の記載は不明瞭となる。

色相発達段階

GRABBS段階完全版

発達段階別教育手法

振り返りELC段階解説

サイクル論を踏まえると、下記のようになる。
左右が顕在(意識)ー潜在(無意識)で対となる。

振り返りELC段階


最大の課題は、これらを活かすことのできる「指導者」あるいは「支援者」をいかに育成するか。