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新入社員の人たちに送らない

僕のいる会社は、4月に何名かの新卒の新入社員を迎える。僕のいる会社の規模にしては、多分、大きな人数だ。僕は今の会社の事業の立ち上げ当初からいるので、そういう意味では先輩になる。社会人3年目。名刺もないマナーも知らないスーツも着ない至って普通の、社会人3年目。

僕がいる会社の新入社員の方々には、この記事は届かないだろうけど、こそこそと記しておくことにする。これはあくまでも僕の意見であって、新入社員の方々に押し付けるものではなく、僕のいる会社が考えているものでもないことをご承知おいてほしい。

僕が今の会社に入ったのは、今から2年前の春、厳密には3年前の冬。当時は通信制大学の大学生とフリーターをやっていた僕は、今の事業の管理者である上司に拾われた。むちゃくちゃな仕事をやみくもに続けてきた。僕のいる会社の事業にいる社員は、色んな背景を持つ人がいて、ほぼ新卒で入ったのは僕が最初だった。僕が一番、若かった。4月から、僕はアルバイトを除いて3番目に若い年齢になる。

放課後等デイサービスで働こうとしている新入社員の方々(以下、先生方)は色々な知識があるとは思うけれど、発達障害や知的障害や精神障害の子どもたちは本当に千差万別だ。教科書のような子どもなんて何処にもいない。毎日が戦争だ。先生方が配属されるのは、子どもたちと日々触れ合い関わり直接的に子どもを支援する、いわゆる直接支援業務になる。僕は相談援助業務と事務処理を担っており、先生方と会うことはあまりないと思う。そして、僕は独立した部署で仕事をしていて、殆ど子どもと関わりがない。

僕は、子どものことはあんまりよく分からない。大学で専門的な勉強をしたし、それなりに資格もあるし、アドバイスくらいは出来るこそすれ、実際に子どもを目の前にして僕は他の先生方よりか、よっぽど実践能力が低い。それは天と地よりもかけ離れている。僕もアルバイトや今の会社の社員になって直接支援業務をやっていたこともあり、ある程度の経験はあるが、それでも現在進行形で経験を積んでいる先生方には劣る。というわけで、僕から伝えられることなんて無いに等しい。

僕は発達障害の当事者で、不登校の経験者だ。「子どもの気持ちに共感出来る」なんて驕るつもりはないが、それなりに理解は出来る。ただ、「それなり」でしかない。大人になった今、子どもの立場と大人の立場を分かるようになった。「ああすればいいかな」「こうすればいいかな」と思い悩んだ。仕事以外の時間にも子どものことを考えた。そんな生活をしていたらある日、食道潰瘍で救急搬送された。それでも正解は見つからなかった。

この仕事に正解はない。

いくら考えても不可能なことは多々ある。だけど、そこで諦めて妥協したら、子どもへの支援ではなく、単なる自己満足になってしまう。だからこそ、考え続ける。正解のない何かを探すため、必死に足掻く。そこにゴールがなくても、ベストがなくても、ベターな選択をし続ける。一発で最善手を出すのではなく、継続して悪手を出さず、好手を出すことだと思っている。と偉そうに言う僕も、まだまだ子どものことは分からなくて、周りの先生方や保護者や子どもたちに助けられてばかりである。

子どもは子どもの人生であって、自分の人生ではない。

仕事に熱が入る先生にありがちなのが、子どもに共鳴しすぎて自分が辛くなってしまうケースがある。バーンアウトという現象を引き起こすので、これは避けたい。例えば勉強しない子どもに対して勉強を勧めるのは良いが、子どもに勉強をさせようとするほど、子どもは勉強を嫌がる。僕は自分で先生が向いていないなと思うが、勉強に関して言えば「そんなに嫌なら勉強しなくていいよ」と子どもに言ってしまうからである。僕は嫌なものを押し付けられるほど貴い人間ではないし、僕は子どもと同じ目線でいたいと思う。だからこそ、僕はあまり関与しない。でもそれはある意味、支援から突き放していることにもなる。だから僕は、先生が向いていない。

先生方は、他の先生方の言うことをよく聞いて、適度に信じて適度に信じない方が良いと思う。というこの僕の言葉も、信じるか信じないかは、先生方次第である。僕がいる会社には色んな先生がいるので、たくさんの知識や経験が詰まっている。数々の戦場を乗り越えてきた先生ばかりなので、思い存分頼ってほしい。分からないことがあったら聞いてほしい。

この春、僕のいる会社で、新たに社会人になる人へ。前を向こう。きっとどうにかなるはずだから。

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