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父方の祖父母の話

久しぶりに、父方の祖父母に連絡した。きっかけなんてものはなくて、ただ安否が心配だったからだ。

気がつけば祖父は要介護2の認定を受けていた。僕の父はもう亡くなっていて、おまけに父も僕も兄弟がいない。祖父母を看るのは、僕しかいなかった。祖父母は僕を拒んだ。電話は短時間が2回だけ、その後に送ったメールは返って来なかった。

こう見えても僕は社会福祉士、職場には看護師や介護福祉士、ケアマネジャーとして働いている人もいる。心配になった僕は職場の人たちに相談した。それから祖父母のケアマネジャーを探して、ようやく連絡がついた。ケアマネジャーは僕に感謝をしたけれど、僕がケアマネジャーと繋がることは、とても慎重だった。「おじいさまもおばあさまもしっかりしていらっしゃるから」と。

ケアマネジャーに連絡した僕に、祖父母から1通の手紙が来た。「もう何もしないでください」「私たちが何か悪いことをしましたか」。悲痛な叫びが書かれた紙を、僕はどうすることも出来なかった。

今まで祖父母と連絡を取らなかった自分の責任だと思った。今更どの面下げて僕は孫だと言うのだろう。

父と離婚している母は、もう祖父母と関わることはない。僕だって関わらなくても良いかもしれない。だけど僕は祖父母の孫で、「あんたはたった1人のおじいちゃんおばあちゃんの孫やから」と言われて育ってきた。僕の基礎を作ったのは祖父母だった。

「あんた偉いな、面倒みるなんて」と母は言う。面倒だと思わない。僕にとっては当たり前のことだった。

祖父母は自営業をしていた。今月末で、店を閉めるのだという。僕は祖父母からではなく、母伝に幼馴染の母から聞いた。僕が連絡をしてしまったからだろうか。あまりにもタイミングが重なりすぎていた。

僕は返信の手紙に、謝罪と、今月中に関西へ帰省することを書いた。顔を見るだけでも良いと思った。

僕が返信した手紙を読んだのか、祖母からメールが送られてきた。「社会情勢を考えたらどうですか」。僕は返してしまった。「また会える日まで、元気でいてください」。そう言ってしまった僕は、自分で後悔していた。

相談する相手がいなかった。答えのない世界を彷徨っている。祖父母に会いに行くべきなのか、祖父母の意見を尊重して控えるべきなのか、もし次会う日までに祖父母に何かあったら、僕は今の僕の選択肢を悔いないか。そんなことばかりが頭を巡る。

25歳、20代半ばになって出会った、介護という現実。もしも祖父母のどちらかが亡くなれば、僕はすぐに関西に帰るだろう。仕事はどうする、生活はどうする。身寄りのない祖父母に、僕は何が出来るのだろう。資格なんて何の役にも立たないように見えた。だってこんな事例、勉強しなかったでしょう。

息が苦しくなる。誰にも相談出来ないまま、僕は途方に暮れている。

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