読書メモ【プライバシーという権利/宮下紘】

仕事柄、法令を調べることも多いが、個人情報保護法制において世界をリードしているのはEUのGDPRだ。逆にアメリカには個人情報保護に関する連邦法がなく、知る限りではカリフォルニア州の州法しかない。
GDPRが、他国よりも厳格なのは何故なのか。ナチスのユダヤ人大量殺戮に、個人情報が利用された歴史的背景があるからだ、というのは以前に聞いたことがあったが、IBM社のパンチカードを利用して個人情報の収集・分析していたという具体的な手法をこの本で知った。
そのような歴史的背景から、個人情報に関わる法制立案の根底の思想として、EUでは人間の尊厳があり、他方でアメリカは政府からの個人の自由という理念に立脚しているのが大きな違いのようだ。
その結果、たとえばEUの忘れられる権利VSアメリカの表現の自由という対立も発生している。
日本の個人情報保護法については、形式的手続的で、そもそも個人情報がなぜ保護されなければならないか考察が欠けており、一貫した思想がない、と言われてしまっている。仕事で法令遵守の一端を担っている者としては、なかなか切ないな。

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