生まれて初めての虫歯になった話。発覚から治療までの記録。

12/23 23:00

奥歯に何か違和感がある。舌で触るといつもは感じない鋭い引っ掛かりがある。特に痛みはない。
鏡で確認してみるとその部分が黒っぽくなっていたので「何か食べかすでも詰まっているのかな?」と思い、糸ようじの後ろ側で突いてみると黒い部分は汚れではなく穴であることが判明する。絶望した。
「奥歯 穴 黒」で調べるとどうやら十中八九虫歯のようだ。なんとなく分かってたけどね。

私は今まで虫歯になったことがなかった。虫歯になる人は幼少期に親からのキスだったり一度噛んだものを与えられたりした結果、菌が移って虫歯になってしまうと聞いたことがある。私の母親はそれを気にして、そういったことは一切しなかったという。
この二十数年、人並みに歯磨きをしているだけだったが特に歯のトラブルになることはなかった。正直に言うと他の人が虫歯になるのを見て優越感に浸っていたところもあった。

で、今回である。素人なりに考えると子供の頃に比べて虫歯菌を他人から貰うことが増えたというのが原因としてあると思う。まぁ、大人だからね。分かるでしょ?僕も汚れちまったもんです。

歯は自然に治ることはないという。これは早めに歯医者に行った方が良いなと思った。幸いなことに痛みはまだ無いし、早めにやればあっさり治療が終わるかもしれない。
とりあえず時間も時間だったのでいつもよりちょっぴりだけ丁寧に歯を磨いてから眠った。

12/24 8:00

相変わらず痛みはない。起きて30分は歯のことを忘れていたのでとてもご機嫌だった。思い出してからとても憂鬱な気持ちになった。
歯医者に電話をする。一番近くの歯医者は年末の予約はもういっぱいで受けられないという。みんな健康な状態で一年を締めくくりたいんだね。
ちょっと遠い歯医者に電話したら明日受けられるそうなので予約をする。
不安を抱えつつ出勤。

同日13:00

職場の人に虫歯になったことを伝えてみたけど大したリアクションはなかった。初めての虫歯なんだぞ。もっと心配しろ。
虫歯を何回かやらかしてる先輩はドリル当てられている間、眠ることができると自慢げに語ってくれた。僕はそこまで虫歯に慣れたくはないなぁと思った。そしてここで初めて虫歯治療にはドリルを使うことを知り、恐怖で震える。

友人にLINEをしてみた。「生まれて初めての虫歯になったかもしれない」と。そしたら「今の歯医者は痛くないから安心して行っておいで」との優しい返信がきた。これからも仲良くしようと思ったし、今度ゲームを一緒にやるときは接待してあげようとも思った。
もう一人にも同じ内容のものを送ってるのだけど既読無視された。私の口内の虫歯菌を奴の口内にワープさせてやりたい。

同日23:00

帰る。今日は流石にラーメンを控えようと思った。そもそもこの虫歯の原因は最近食べまくっているラーメンのせいな気がする。僕の虫歯菌は家系ラーメンで育った。
それと、先輩が買ってきてくれたケーキを食べたのでお腹がいっぱいであるというのも理由のひとつである。虫歯菌にとっては最期のご馳走となったであろう。

LINEを見たら姉に子供ができたかもしれないとの連絡が来ていた。虫歯にならない子に育ってもらいたい。おじさんも頑張るからな。
明日は決戦の時。覚悟を決めて眠る。

12/25 8:00

そういえば今日は朝からミーティングがあるのだった。家から参加する。せっかくなので「この後、歯医者に行ってくるんです」と伝えてみた。社長には苦笑いをされた。ちょっとミーティングの時間が伸びてしまったので歯医者に遅刻した。

同日 11:30

歯医者に到着する。遅刻した分を取り戻すため、爆速で問診票を書いた。待合室にいる間、奥からものすごいドリルみたいな音が聞こえてきたけど僕は良い大人なので特には怖くない。シャーロックホームズの「緋色の研究」を読んで時間を潰す。

十分くらい経った後、ついに名前を呼ばれる。ここでいかに余裕を見せられるかで人としての格好良さが決まる。スムーズに部屋に行き、荷物を置き、椅子に座り、口を開いた。「まだ口は開かなくて良い」と言われた。そりゃそうだ。
自分の症状を伝える。今まで虫歯になった事ないということをちょっと自慢げに言ってみたけど特にリアクションはなかった。そんなに珍しいことではないのかもしれない。
とうとう歯を診てもらう。一人が私の歯の状況を見ながらもう一人がそれを記録していく。「マル」「C」「マル」「マル」「C」「C」…

…あれっ?と思う。僕だって二十数年生きているので「C」が虫歯であることは知っている。たしか、僕の虫歯は一つだけだったはずだがなんでこの人たちはシーシー言ってるんだ…?

………結果的に6本もの虫歯が見つかった。えっ。え?
そのうち2本は親知らずに生えているので治すよりも抜いてしまったほうが良いらしい。これは今日中にはできないと言われた。マジかよ。そして残りの4本は見えないけれど歯の側面にできているらしく、今は大人しいが放っておくとまずいらしい。
残りの歯はまだ軽い虫歯なので詰め物をしてなんだかんだして治すらしい。詰め物が取れてしまうのでガムみたいなものを食べるのはNGとのこと。早速やってもらおうとしたけど、今やったら正月に餅が食べられなくなるらしい。困った。正月に餅を食べられないのはちょっと寂しい。早期治療か餅かを天秤にかけた結果、餅の方を取ることになった。仕方ないね。餅、美味しいもん。

結局、今日は歯のクリーニングだけしてもらうことになった。歯石が沢山あるから取るらしい。ちょっとしたドリルみたいなものでガリガリとやられた。意外にもそんなに怖くなく、削られている間、「ソフトが接触不良のゲームボーイみたいな音だな」って思っていた。
その後はものすごく振動するブラシみたいので磨かれた。何故かオレンジの味がした。美味しかった。
クリーニングが終わってから歯医者が「前より滲みるようになるかもしれません〜」と言った。おかしくない?歯石取ったのに滲みるようになるってなんだよ。
理由を聞くと今までは滲みる部分が歯石があることによって守られていたらしい。完全な悪かと思っていた僕の歯石が痛みから守ってくれていたのだ。そうか…そうだったのか…。これを聞いて僕はある物語を思い出した。

そう、「ごんぎつね」である。こんなことなら歯石なんて取るんじゃなかった。歯石、おまえだったのか。
そこまでの事を思ったけど歯がツルツルになって気持ち良いのでやっぱり歯石はない方が良いです。



終わった。虫歯を治すと言っておきながら結局クリーニングしかしなかった。虫歯との決戦は年明けになりそうだ。短期間でそこまで悪化することはないと先生は言っていたので安心して正月を迎えられそうである。虫歯菌よ。せいぜいおせちでも食べて最期の正月を楽しむんだな。



次回、解決編。乞うご期待。

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