改めて -モナルコマキ 石川五右衛門異譚- 感想メモ

改めて

参左衛門に感情移入しすぎて参左衛門のモンペになりつつある感じの感想は別の記事に書いたので、改めて全体というか、お話を踏まえての感想みたいなものを書いていこうかなと思います。

はじめに

・全員に触れるようなものじゃありません。
・褒めてばっかりなものでもありません。というか、感じたことをそのまんまに書く感じです。
・そのため、お話的に「えー?これはどうなの?」「これ私好みじゃなかったなー」みたいな感じにも書いたりするかもしれません。
・それでもよければ続きをどうぞ

様々な形の恋や愛の物語

モナルコマキ 石川五右衛門異譚
という名前からはあまり想像ができない、愛の物語だったな。というのが、自分の中でのモナルコマキでした。事前に調べる人は調べたと思いますし、演者さん達も触れていたと思いますが、暴君放伐論という名前が示すそのものの印象がすごく薄いんですよね。
なんでだろうとぼんやり考えてみると、それを体現している石川五右衛門が、成功しきれてないからなのかなと思ったりしています。細川忠興が豊臣秀吉からの命令を受けて動き出すまでの間は、冒頭で石川五右衛門が威勢よく名乗りを上げて、兵士たちにすらも小判をばらまいているあの場面が示すとおりに、成功してはいたんだと思いますが、その成功が表現されている時間があまりにも短い。結末が釜茹でに行き着いてしまう以上はしょうがないのかもしれないんですが。

と、ここまで書いてみて、暴君とは誰のことを指すのか、と思考がぐるぐるしています。「秀吉のせいで死んでいった者達に報いるために」と言う五右衛門にとっては、正に豊臣秀吉こそが暴君なのでしょう。千利休や細川忠興、柴山宗綱にとっても、暴君であったのでしょう。最後の最後、石川参左衛門からは、石川五右衛門が、実弟こそが暴君に見えてしまったのではないか。とか。(暴君という字が表すほどの立場は彼にありませんが)

じゃあどの辺が愛の物語なの?と言われたら、この辺が、になるかと思います。
・伊賀の忍び達の家族愛
・小波から五右衛門への恋心
・参左衛門から小波への無償の愛
・細川忠興からガラシャへの執着とも呼べる愛
・秀吉と寧々の熱愛
・火譲から無次火への兄妹愛
・清正、一久、直影3人の友愛(信頼感と言った方が正しそうですけど、敢えて)
・いとや小笠原からガラシャへの親愛
・五右衛門とガラシャの稲妻のような恋

各シーンで思ったこと

※参左衛門に関してのところは大体書いてるのでそのへん以外のところになると思います。

伊賀の里抜け出して秀吉へ復讐するぞーおー!って時

あれなんで、参左衛門差し置いて五右衛門がリーダーになってるのかがさっっっっっぱりわかんないシーンだと思いません????????????あの時代って(武士じゃないからかもしれないけどいや元々石川家の子だわ)年功序列厳しいイメージある一方、伊賀の里で鍛錬してる時とかも、がっつり五右衛門にカリスマがあるとかそういう描写無くないですか????
一番最初に飛び出してったから??参左衛門の話聞いて、「面白そうじゃねぇか!」「五良丸……!」ってなるところがめちゃくちゃ違和感あるんですよね……小波が「あたし達はあんたに着いていくよ!五右衛門!」って参左衛門のことに全く触れないで言うのも、参左衛門がそれに乗っかって「五右衛門!」って言うのも、なんか納得が出来なくてもやもやしています……いや、主役だからさ、と言ってしまえばそれまでですが……それだけの説得力が描かれてなくない??って思いました。どっか見逃してるのかなぁ。

舞台の上段と下段のリンク感がとても好き

上段と下段でそれぞれ別のシーンが描かれている時は、別のシーンだけどリンクしてるというか、同じようなことを考えてるっていう使い方がとても好きでした。秀吉・利休様と、上泉・小波のリンクはわかりやすく、以降のシーンでもそういうことなんだぞって示してるような感じがあって、すごく好きです。(自分は、参左衛門とガラシャが上段下段で分かれてたシーンがとても好きなのですが、そこの解釈はそれでいいのかと言われると不安) 小波がガラシャと共にいる五右衛門を見つけた時とかもそうですよね。4人が4人それぞれの想い人のことを考えてるシーン。そういう内面が滲み出てくるシーンがとても好きです。

プロジェクションマッピングの使い方凄いなって

わかりやすく背景として表示されるのはもちろんなんですが、1番凄いなと思ったのは石川五右衛門の大立ち回りのクライマックスシーン。五右衛門が斬られる度に、背景がどんどん血で染っていくんですよね。秀吉の後ろの背景が、真っ赤になっていくんですよ。そして、最後の一太刀を芝山が切り上げたと同時に花火が打ち上がるわけなんですが、その打ち上がった花火の光に綺麗に秀吉が重なるんですよね。その一太刀が、血塗れた秀吉の治世が、花火のように短いながらも光り輝くものであることを決定づけたのかなぁとか。言語化するのは難しいですが、そんなことを考えてしまいました。ってくらい印象に残ってます。

キャラクターについて思ったこと

石川五右衛門

いやーーー感情移入できなかったーーーーごめーーんんんんん
目の前に親の敵がいるってことに振り回されすぎてて冷静に、その時その時の目的を達成するために頑張って諭そうとしてる参左衛門ほんと可哀想とか伊賀と猿飛の里がああああって言う感想しか持てませんでした……
従来の義賊イメージはあくまで義賊として振舞っていただけで、その中はとても人間味溢れる人物だったのでは、っていう方向にしたかったのかなぁと思うんですけども。
彼がその想いのままに進もうとすればするほど、自分を含めた周りの誰かが不幸になってしまうのは、時代が悪かったのか、なんなのか……。
復讐心に心囚われてそれしか見えなくなってしまうことで、1度、2度、3度と失敗した彼が、2度目の失敗の反省を活かして(?)、惹かれたガラシャを救い出そうとその場を逃げ出そうとしたまでは良かったけど、4度目の機会は与えられなかった。仏の顔も3度までと言いますが、むしろよく3度も耐えられたなと思います。参左衛門は。
兄のことを兄として慕っていたのは間違い無いだろうけど、殺しを買ってでた参左衛門を見た時の表情とか、1番最後の参左衛門の告白を聞いた時の表情とか……あまりにもしんどいんですよね。
そこまでの自分を省みた上で、出た言葉が、大見得を切った最後のシーンだと思うんですけど……冒頭で本人も言ってる通りで「自業自得じゃね??」としか思えなかったあたり、参左衛門のモンペになってる自覚はあります。

小波

ぜっっっっっったい参左衛門のほうが幸せにしてくれると思うよ?????????
…………いやわかるんですけどね、兄に近しい人は兄としてしか見れないっていうのも。1度心を奪われるような恋に落ちたら、何があったとしてもその人のことしか見えなくなっちゃうのも。その人の相手が自分じゃなかった時に苦しくなってしまうのも。とてもとてもよくわかるんですよ。だからどうこう言えないんだけど参左衛門のモンペになってた私としてはヘイト値がつい上がってしまいがちな彼女でした。上泉との殺陣とかめちゃくちゃかっこよかったです。

細川ガラシャ

お美しかった……あと、ガラシャさんも日々お芝居がより良くなってて素敵でした……でも忠興いい旦那さんだと思うんだよなーーーーあんなイケメンで、自分がほかの男に心奪われてるのを知ってても、自分の身を守ってくれる存在居ないよ??????とか思ったりしてないです。なんというか、戦国の世をそんじょそこらの武士よりもわかっているからこそ、生かされてることへの罪悪感がすごかったのかしら……とか思いました。自分のせいで思うように動けず、秀吉の言いなりになってる忠興さんのことをどうにかしたかったとか……(史実のことをあまり調べずに印象だけで書いてます)

細川忠興

その愛が暴走しかけるほど、ガラシャを愛しているにも関わらず、ガラシャにはそれが伝わらないというあたり、報われないなぁ辛いなぁと思って見てました。想いが報われず、ガラシャの心は五右衛門に奪われて……いっそガラシャを、自分を裏切ったことをあげて怒りのままに斬って捨てることが出来ればどれほど彼にとっては楽だっただろうと思わずにはいられません。
どんなに自分を裏切ろうとも、自らの師を斬ることになってでも、ガラシャのほうが大事なあたり……彼もかなりしんどいです。
後半、利休門下三人衆と呼ばれる存在になること、想い人の心は五右衛門にあることとかを含めると、参左衛門と立場は近いんですよね……なんだかんだでこの2人は互いに愚痴り合いつつ酒(お茶かな……)飲んでて欲しいと思わずにはいられない……。

加藤清正

ポニテかわいい。いい声。作中唯一、秀吉の振る舞いや言動に迷いを見せつつも、ぶれなかった存在。一久、直影3人での道中はほんと……しんどいばかりな物語にあって、癒しでした……その節は参左衛門を助けてくださってありがとうございました(モンペ)
にしてもほんと出番少ない!!!もったいない!!!参左衛門助けて一緒に逃げた後だったり、それ以降、芝山になった後とか、絶対交流あったと思うんですが、その辺のこととか無いのかー!!って思ったりしてました。あと、彼らは五右衛門と最後に切り合うまでほんとに面識ないままなのかー!!?とか。お話の組み立てって難しいとは思うんですけども……。
上泉が言うように清正ほどの武士が何故秀吉についてるんだろうって、物語見てる中で思っていたんですけど、彼の答えはとてもしっくりきました。自分の主や、自分の信念を信じて、その中でより良い選択をしていく。ただの盲目ではないってところが、とても好感持てました。そりゃ忠興と相性悪いよなー。

宮本無次火

戦国乱世に生まれるべく生まれ、物語の中で生ききった人。1番楽しかっただろうなー戦い楽しそうだなー刀ぺろぺろしちゃうよなーって思いながら見てました。殺陣すごかった。戦闘狂として執拗に強い者を狙うあの目が好き。沼田に、というか、忠興に従うのはなんでなんだろうなーとか、あの人が1番、戦場を提供してくれるからなのかなー?とか想像するのは楽しい。

宮本火譲

小田原征伐で、上泉を見つけた時の笑顔がとても好きで印象に残ってます。彼女はきっと、参左衛門に守られずに五右衛門の復讐に身を焦がしていたらああなっていただろう小波の姿なんだろうなとぼんやり思ったりしました。上司の前、戦闘中にしか二人揃っているシーンは描かれていませんが、無次火の復讐をしようと上泉をつけ狙うほどに、兄妹仲は良かったのかなと思うと……こちらも中々しんどいお話になりますね……。

千利休

白浜や荒磯の二役もきっと感情移入しやすい、あるいは、覚えやすい配置だと思ったんですが、千利休と、一色氏の二役も、思い返すと中々しんどいんですよね……参左衛門にとっては。
利休という師を、芝山として心から慕っていたであろう存在を、他ならぬ五右衛門の行動によってその先の平和になったかもしれない未来ごと奪われることになったという展開そのものがただただ悲しい……。一色氏という自ら(父や弟と共に)仕えていた主を秀吉によって亡きものにされた参左衛門にとって、この時、五右衛門と秀吉が同じような存在になってしまったのかなとか、そんなことを書いてて思いました。
良い声。切腹時のシーンは、思い返す度に泣きそうになります。反面、苦々しいわ!と言う秀吉に、にこって笑いながら「それは結構にございます」とか言えるあたり流石利休様とか思ってたりもしました。

最後に

思うところはいっぱいありますが、そこをひっくるめて、今でも鮮明に思い返せるほど、心に残る素晴らしい作品に出会えて、とても嬉しく思っています。

現代劇、デスゲームチックなお話が得意なイメージのあったピウス企画にあって、エンタメ活劇の今作。得意とされる会話劇や心理描写を丁寧に演じている一方で、一つ一つの殺陣は意味が無いものが無い。ピウス企画凄いなって思いました。得意分野をより突き詰めていくことではなく、あえて、全く違う色を求めたということが。……キャラクターへの思い入れや、こうして色々と考えたり、書いたりしていることを踏まえても、私にとっての今年ベストな作品になりそうです。

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