参左衛門がしんどい -モナルコマキ 石川五右衛門異譚- 感想メモ

ピウス企画「モナルコマキ -石川五右衛門異譚-」を先日、観劇してきました。
現在絶賛お芝居を拝見させていただいている加藤靖久さんが結構番手上だ!途中からの発表だったのに!って思っていたら、ビジュアルやらなにやら、事前情報だけでもう楽しみすぎて、うっかり1日1公演で計5日間チケットをとってしまった私ですこんばんは。
結論から言うと、タイトルとおりです。石川五右衛門異譚というだけあって、主人公はウチクリ内倉さん演じる石川五右衛門なのですが、加藤さん演じる石川参左衛門(五右衛門の兄)に感情移入しすぎて結果参左衛門しんどいしか言えなくなってしまいました。
加えて、ストレートのお芝居なのに、5回見て5回とも、その時の最高の石川参左衛門を超えてくるというか……セリフも動きもそこまで大きく変わらないのに、そこに乗せる感情が、参左衛門からにじみ出てくる感情がどんどんと上乗せされていく加藤さんのお芝居がほんっっっっとすごいなっていう感想しか言えなくなってしまいました…。感情を表に出すことがメインの役どころだったとは言え、舞台は生物とは言え、こんなに変わるものなのか…!?と。

ということで

ネタバレしつつ、参左衛門がいかにしんどいかっていう話しかしてないですすみません。ご了承ください。

あらすじ

五右衛門が自身の親や、家族とも呼べる仲間たちを殺されたことによる豊臣秀吉や細川忠興への復讐心と、追った傷の静養中に出会ってしまった細川玉ことガラシャへの恋心に自身の感情を揺さぶられつつ、自らの周囲をも巻き込んで大立ち回りを繰り広げる。伊賀の里で出会ってから、五右衛門に淡い恋心を抱く小波の想い。兄であり、殺さずを説く参左衛門が殺しに手を染めるほどの覚悟と、彼が小波や弟五右衛門に抱く複雑な感情。深い執着を懐き、珠を生かし自身の籠の中に閉じ込めようとする細川忠興の、ともすれば純粋にも見える愛。これらが戦国乱世の理と混ざりあい、紡がれるエンターテインメント活劇。

参左衛門しんどいポイントを列挙していくコーナー

・参左衛門自身が想いを寄せる小波は、五右衛門のことが好きだっていうこの三角にも四角にもならない一方通行な感情の矢印。
・義賊として仲間たちと活動していたところで、細川忠興に捕まり、参左衛門と小波と五右衛門以外は殺され、参左衛門と五右衛門は、小波とはぐれてしまう(五右衛門たちにとっては小波は生死不明になってしまう)わけなんですが、兄弟二人きりになったときにちゃんとお兄ちゃんしてる参左衛門。2日目くらいまでは上衣着てたと思ったんですが、3日目からは上衣脱いでてほっそ!!とか思ったんですが、でも隠れ家というか宿?だったらそりゃ上衣脱ぐよなって納得しました。ここでお兄ちゃんとして接してる参左衛門の声がまたやさしーんだ…。
・はぐれた後も、小波の無事を気にかけつつ、探しにいかないといけないなって心配してる参左衛門。この後五右衛門を祭に送り出すんですが、そこからしばらく舞台上段上手で、ずーーーーーーーーーっと外を見てるんですよ。何か探してるみたいに。そして舞台下段下手では、細川珠が恐らく庭先に出て、従者たちと話をしつつ、五右衛門が迎えに来るのを待っているんです。舞台の上段と下段は、シンクロするんだろうってこの前のシーン(秀吉と宋易、上泉と小波)で思っていたので「細川玉が五右衛門を想っているのと同じように、参左衛門は小波のことを想っているのでは」と想っていたりしました。そういう解釈の元で見ているので、このシーンがとてもとても好きです。参左衛門の表情が切ないんだ…めっちゃ好きなんだ…!
・祭で小波を見つけて嬉しそうな参左衛門。
・と思ったら小波の様子がおかしくてその視線の先をたどる参左衛門。
・視線の先では五右衛門と細川玉が仲睦まじく寄り添っている姿があって「五右衛門…貴様と言う奴は…!」って言う参左衛門。
・五右衛門と細川玉の様子を見てその場を逃げ、泣きながら五右衛門の名前を呼ぶ小波をどうにかしてやりたい、でもどうにかできるのは自分じゃないみたいな葛藤の表情を浮かべてる参左衛門。
・「小波!」ってさも今見つけたみたいな明るめの声で名前を呼ぶ参左衛門。
・「生きてたんだな!良かった…!」って言葉と共に抱きつかれる参左衛門。初日のチェキで御本人にはお伝えしたんですが、抱き返そうとゆっくり腕をあげるんだけど、「五右衛門は?」の一言で、すって手を引っ込めて、五右衛門の無事を伝える参左衛門はほんとしんどくで最高です。その後の小波の心底嬉しそうな「良かった…!」っていう言葉と表情に見惚れつつ、なんとか笑顔で返す参左衛門ほんとしんどくて最of高です。笑顔が見れたことの嬉しさとその笑顔を作ったのは自分ではないことの切なさとみたいなのが入り混じってるのかなと想像しているわけですがほんとしんどくてry。
・紆余曲折あって五右衛門とも上泉とも合流して、細川玉が敵の妻であることを知ってしまいしょぼくれている五右衛門に、「五良丸(五右衛門の幼名?家族しか呼ばない名前。)…これで良かったんだ」って肩ポンする参左衛門。これ(細川玉とくっつかなくて)良かったんだっていう意味で言ってるようにしか聞こえないんだよなーーーーー。
・しょぼくれてる五右衛門に活を入れる小波を見てる参左衛門。「…良いのか?」「何が?」「お前が良いなら良いんだが…」「覚悟の上!」小波のことめちゃくちゃ気にかけてる参左衛門ほんとしんどい。
・「殺しは俺の役目だ」って美味しいとこ取りしていく参左衛門(そうじゃない絶対そうじゃない)名乗りを上げて、義賊として動いている"石川五エ門"が人を殺せばはくがけがれる(多分魂が汚れるとか義賊とか言っても結局人殺しじゃねえかみたいな説得力がなくなるとかそういうことだと思うんだけど、はくがけがれるじゃなかったら誰か教えてください……)から、その手を汚す役目を負うお兄ちゃんと、それを目の当たりにして、目を丸くして、弟になってる五右衛門がほんと良いです。
・芝山宗綱って誰!?っていうのを初日に思って速攻で調べました。本当に、史実の"謎"とされる部分をうまいことついてくるなと思ったと同時に、これ以上参左衛門しんどくさせないで…!!って思ったとか思わなかったとか。芝山宗綱は、戦国時代の武将であり、利休七哲の一人あるいは、利休門下三人衆の一人です。(うちの一人は細川忠興)ネットで調べただけのにわか知識ですが、千利休の高弟の中でもより多くの手紙のやり取りが残っており、利休最期の手紙の宛先も芝山で、普段は落ち着いている利休の、悲しみに満ちた感情が綴られたものだったとかいうのを知りました。茶人として茶器などに芝山という名前が残っていたり、秀吉に対しては親衛隊みたいな位置で武将として仕える一方、知識人としても秀吉に仕えていたそうです。
・五右衛門が生死不明(死んだ可能性のほうが高い)になり、生き抜くために何をどう考えて、新たな名前を名乗り、5年もの歳月を過ごしてきたのかと考えるととてもとてもしんどいです。しかも親の敵と同列ですよ?面識が無かったとはあんまり思えないですし。それが気にならないほどに、千利休の説く「誰もが笑って暮らせる世の中」に同調したのかなと思ったりするとただただしんどいし優しすぎる性格にも見えてきてしまう参左衛門。
・妻として小波をそばに置いているのに「この姿は仮初のもの」って言われちゃう参左衛門。
・「もうあいつのことは忘れないか?」「死んだ者のために、生きている我らが!縛り付けられる意味があるんじゃろうか!?」って復讐に身を焦がしている小波に問いかけるものの「見損なったぞ参左衛門!」って言われちゃう参左衛門。この件でピンクの上品な着物を脱ぎ捨てて伊賀の忍びとしての衣装になり、どこかへ行ってしまう小波に「そんなに、あいつのことが好きなのか…」って悲しそうにぼそりと呟いて、捨てられた着物をゆっくりと拾う参左衛門がほんとにしんどい…初日とかはわりとシステマチックに拾ってた気がしたんですけど、千穐楽とかもう……参左衛門が買ってあげたのかなとか、似合うと思ったんだろうなとか…いろいろと妄想しちゃう感じにゆっくり、がっかりしつつ拾ってたので…最高でした…。
・記憶を失くした五右衛門を見て、ショックで去っていった小波を見送り、「あいつがどれだけお前を想っていたか…」「ん?」「あいつの顔を見ても、何も思い出さんのか!?」「知らんな」からのグーで殴ってからのくだりが本当に好き。このセリフの感情の込め方がほんとに見るたび見るたび違ったんですよ……4日目とかはわりと叫んでたイメージがあるんですけど、千穐楽は緩急ついてたのほんと好き…。その後参左衛門が去っていくところまでの五右衛門もとい猿飛たすけとのやりとりが兄弟の情がなりを潜めててとてもとても好きです。
・「あんなやつのことは忘れて、ふたr」「忘れられない!大事な家族じゃないか…!」「……そうだな」「そうだ」二人で生きたいよなああああ参左衛門なああああああ。ここで小波に合わせちゃうんだもんなあああああああ。
・「苦しい」
・参左衛門は言わずもがななんだけど、小波はなにがどうで苦しいんだろうな…五右衛門を見つけたけど記憶が無いことがショックなのか。自分の想いを伝えられないことが苦しいのか。参左衛門に応えられないのが苦しいのか。
・「どうして助けなかった!」「あれだけの数、我らが助けに入ってもどうにもならなかった!」「仲間じゃないか!」「こうして逃した!!」「……臆病者!」って言われちゃう参左衛門。いやーこの時ほんと参左衛門かわいそう過ぎてしんどいんだよなぁ……客観的に見たらもう勝ち目がないことだってわかってるし、自分の立場を考えた最善の対応だと私は思うわけなんですが、よりにもよって想い人にそう言われちゃう参左衛門…。このときから、利休の切腹までは1年あるっぽいんですが、ここからずっと外の風景は雨なんですよね…。
・恩師の切腹を見届ける参左衛門。
・雨の中、立ち尽くす参左衛門。
・風邪をひくと自身の身を案じてくれる小波が呼ぶ参左衛門という名前を否定し「わしは芝山宗綱じゃ!おまえはわしの妻…なみなのじゃ…!!」っていう参左衛門がほんとにね…それにも「参左衛門は参左衛門だ。私は、さざなみだ。」ってキリッと返す小波に、顔を上げて駆け寄ろうとする参左衛門を拒絶して風呂温めにその場を去る小波っていう図がさーーーーーーーー参左衛門のモンペになってしまう……。
・そのまま呆然と立ち尽くしていたかと思えば、「どうしてこうなった…!」って地面に伏して泣いてる参左衛門がどうしようもなくしんどい……千穐楽の、しばらく立ち尽くして、雨が降る空を見上げながら、泣き笑いみたいな表情を浮かべていた参左衛門ほんと……ほんと……。恩師を亡くし、想い人からは拒絶され…。
・「わしらの顔を見ても思い出さなかったのにな…」って言っちゃう参左衛門(五右衛門には聞こえていなかったけど)
・ガラシャを救い出すことも望みであることを知って、声色変える参左衛門。ここも、4日目とかそれが望みか!!って声張ってたんだけど、千穐楽はむしろ声抑えてた感じでとても好きでした。
・「小波には会わなくていいのか?」ってどこまでも小波の気持ちを優先してしまう参左衛門。
・「兄貴が幸せにしてやってくれ…」「…そのつもりだ」この返しであー五右衛門死ぬなって思いました。
・「秀吉を殺すんじゃなかったのか?」「今はこの人を逃がすのが先だ」「ふふ…っ、もうお前の気まぐれに付き合うのはうんざりだ」この笑い声がですね、多分千穐楽で初めて入ったんですよ。秀吉を~って言い始めたくらいからもう声とか若干震えてるんですよ…泣きそうになるのをごまかすための笑いなのかなとか…いろいろと考えてしまう…。
・「わしはお前が憎い……小波はお前のことしか見ておらん!!!お前に振り回されて死んでいった者たちに報いるためにも、ここで死んでくれ…わしはもう、石川参左衛門ではない!芝山宗綱じゃ!」これを言っている参左衛門の表情が見たかったなー……って思ったり、声色がすごく辛かったり、それを受けて、今はじめて兄の、血を分けた家族の本心を知ったかのような五右衛門の表情が辛かったりしました。それでも、譲れないもののために、互いに刀を向け合う二人っていう構図がね…悲しい…。ここで殺陣してくれればよかったのになぁって思ってしまったりもしました。
・憎いって言いつつも、秀吉配下の名だたる武将たちに斬り刻まれてぼろぼろになっていく五右衛門を見て駆け寄りたくなっているのを堪えきれていない参左衛門っていうのがとても良かったです…。初日とか階段のところで冷静にその末路を見守っていたのに、回を重ねるごとにどんどん表情が苦しそうに歪むし、階段を数段、じわじわと降りてしまっていたりするし、堪えきれていないんですよね……。
・満身創痍になってもガラシャを解放するために武将たちに刀を向ける五右衛門に「殺しはしてはならんと言ったじゃろう?」ってお兄ちゃんと声で語って、そのトドメを刺す参左衛門がほんと美味しいとこ取り(絶対に違う)
・五右衛門の魂の叫びを、非情になりきれずに辛そうに見守りつつ、五右衛門に駆け寄ろうとする小波を押し止める参左衛門。五右衛門の叫びは、彼らにどう聞こえたのかを考えるだけでもう…隣りにいる大切な家族を、居続けるものと思わずに、後悔せずに、生きることができたのでしょうか…?

終わりに

……いや、さすがに参左衛門だけ書くのはちょっとただのファン過ぎるので、他の人も、別記事で書きたいと思います。細川珠役中村さんも回を重ねるごとにお芝居変わっていってたし何よりお美しかったとか、細川忠興もかなりしんどいとか、利休様と一色さんの二役や白浜や荒磯の猿飛との二役がより考えさせられるとか、秀吉と寧々ははまり役過ぎてやばかったとか、加藤清正陣営まじ癒やしとかとかとか。
とはいえ、あーこの人は加藤さんのお芝居好きなんだなって思ってくれればいいです。←
感想にもなりきれていないメモだし台詞はうろ覚えですが、この辺で。
素敵な物語をありがとうございました。

追記 パンフのこと

同じように観劇されてた方から、抜けてるよって言われたことを、冷静に考えてみたらとてもしんどくなったので追記。
パンフレットを買った人は、加藤さんの「石川五右衛門になったとして、手に入れたいもの」の、答えを是非ご覧ください。
パンフ見た時は、やだー加藤さんったらー!wwwって思って見てたんですが、指摘を受けて、冷静になって考えて、「石川参左衛門が、石川五右衛門になったとして、手に入れたいもの」としてよく読んでみて……今号泣してます……(`;ω;´)
嘘だよぉ……そんなことまで考えての答えなんだとしたらほんとに加藤さん凄いとしか言い様がないよぉ……

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