LPL通信 前半戦を終えて Part2

Part2は2020年にWCSに出場した3チーム、TES/JDG/SNを取り上げます。

改めて順位を確認すると、JDGが5位と上位ですが、TESは11位、SNは12位と中位以下に沈んでいます。JDGは昨シーズンのメンバーに新たにXiyeとMysticを加えました。TESはサポートに新人のZhuoを起用していますし、SNはSwordartがTSMへと移籍した穴埋めとして昨シーズンからメンバー登録されているOnをそのままスターターへと昇格させています。JDGこそCarry Roleにメンバーを加えたものの直近の試合では昨シーズンと同じメンバーで戦っていますし、TESもSNも大きなメンバー変更があったわけではありません。

まずはJDGから確認していきましょう。日本のプロ野球におけるオープン戦のような立ち位置になっているDemacia CupではMidに新たに獲得したXiyeを起用していましたし、LPLの開幕戦でもXiye - Kanaviの組み合わせでした。Yagaoの気になる点としてLaneにおける圧力の低さがありましたし、Xiyeの獲得はチームの弱点を埋める効果的な補強に思えた(2020 GD@15 Yagao:+11 Xiye:+195)のですが、ふたを開けてみればKanaviとのシナジーが一切なく、むしろチームとして弱体化していました。すぐさまYagaoへと戻しますがスタートに躓いた影響か、チーム全体のコミュニケーションがとても不安定になってしまいました。Loken - LvmaoのBot DuoもAll-inの判断がぶれていましたし、集団戦においても何を目標にしたものなのかあやふやなまま仕掛けてしまったり、悲惨な内容が散見されました。ただここ数試合は立て直し、集団戦の強いJDGが戻りつつあります。大きいのは苦しい中でもパフォーマンスが全く落ちなかったZoomの存在でしょう。Man of the Matchにすでに4回選ばれています。チーム内で最多ですし、彼の今シーズンの充実ぶりを表していると思います。一方で気になるのはLokenの不安定なパフォーマンスです。直近の2試合では安定していましたが、ハイリスクハイリターンを狙った動きが目立ち、新たなスタイルへと脱却を図っているようにも思います。本人たちも「自分たちはスロースターター」と認めている通り、シーズンの初めから好調で勝ち続けたシーズンはありません。さらには強豪へと押し上げたHommeコーチと別れた影響もあるでしょう。昨シーズンにSNをWCS決勝へと勝ち進めたChashaoコーチがJDGをどうまとめるのかとても楽しみです。

JDGの項目でも取り上げたDemacia Cup、その大会を優勝したのがTESです。昨年のWCSにも出場しましたし、LPLが開幕するまではTES一強は揺るがず、どこがTESを打ち倒すのが楽しみになるだろうと予想していました。しかし始まってみると、LPLという舞台に緊張した新人のZhuoがDemacia Cupで見せていたパフォーマンスと比べると明らかに下回り、ストロングポイントになるはずであったBot Duoの強さが霞んでしまいます。その後は慣れたのか、期待されたパフォーマンスを発揮できるようになりましたが、今度はTopの369の低調っぷりが目立つようになります。MidのKnight、ADCのJackeyloveはしっかりとLaningで有利を作るものの、369は試合を通してずっと不安定です。さらにはここ数試合のTESは中盤の時間帯からのマクロゲームに致命的な欠陥を抱えています。15分時点でのチーム全体の有利は1924ゴールドとLPL1位なのですが、15分時点で有利を作った場合の勝率が66.7%と低迷しています。参考までに、FPXは1600ゴールドで勝率92%、EDGは611ゴールドで勝率90%です。序盤の有利をそのまま勝利へと繋げることができないのです。ミニオンウェーブを押し切らずに視界のない敵のジャングルへと突き進んだり、オブジェクト交換のはずが色気を出して一人だけチェックしにいって捕まって崩壊したり・・・正直いってなぜこのような事態になっているのか皆目見当もつきません。今年から新たに就任したWarhorseコーチは昨年まで2年半にわたってFPXを率いていたコーチですから、実績実力ともに充分のはずなのですが。369の不調、中盤以降の試合展開の稚拙さ、この二つが修正されれば一躍優勝候補へと躍り出るのは間違いないですが、2週間の中断期間中に修正されるのでしょうか?

SNはとにかくSwordartの流出が痛手でした。Bin、Sofm、Angel、Huanfengの個々のパフォーマンスが不調というわけではありません。Swordartがいなくなったことにより中盤以降の展開に制限がかかりました。Engage能力に欠けているのです。SNが集団戦に勝つには、あらかじめドラゴンやバロンなどのobjectiveの前にポジションを確保し相手に集団戦をしかけさせてからのカウンターしかありません。五分五分の状況において敵と駆け引きしてEngageして勝つ、ということができないのです。負けるときはSwordartの不在が浮き彫りになるような展開が目立ちます。一方でBinの個人技の高さやSofmの独自のスタイルといった点は失われているわけではないので、新たな勝ちパターンの構築や新人サポートのOnの成長が間に合えばPlayoffへの出場は十分可能でしょう。ですが元々序盤のLaningの段階から圧倒して勝つというチームではなく中盤以降の試合展開の工夫で勝っていたチームなので、Swordartがいたころの水準まで高めていくことに厳しさを感じざるをえないです。AngelがLaningで相手に対して有利を作るようなプレイスタイルへと変化すればTop5入りも狙えそうですが、今のところのその傾向はみられません。


LPL通信 Part2は以上となります。余裕があればRAやLNG、BLG、IGといったチームも取り上げたいと思いますが、確約はできません。

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