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【MOTHER2批評&考察②】何故ネスはギーグを倒せたんだろう?
前回の記事ではギーグの正体と役割について書きました。
今回の記事は「じゃあどうしてネスがそのギーグを倒せたの?」というお話です。
パワースポットから得られた力
ギーグを倒す為に必要な事として提示されたのは「パワースポット」と呼ばれる8つの場所に行く事でしたね。
ギーグを倒すには…地球とお前の力をひとつにすることが必要なのじゃ
この地球には、お前のパワーを揺り起こし、強めてくれる…
「お前だけの場所」が8箇所ある。そこをすべて訪れるのだ。
ここに行くとネスのパワーを強めてくれるから行って来いというのがブンブーンの遺言でした。
しかしいざ最初のパワースポットに行ってみるとどうでしょう?別に力は貰えず、メロディの一部を入手すると共にネスの幼い時の記憶のようなものが流れるだけです。
この記憶は、繋げていくと彼が両親からの温かい愛情に包まれて育ってきた事が窺える内容となっています。
![](https://assets.st-note.com/img/1654491550960-mo6qVtvsjR.jpg?width=800)
「あれ? ギーグを倒す為のパワーは……?」となりますが最終的には無事ギーグを倒せているので、つまりこの記憶こそがギーグ(ネス自身の悪しき心)を克服する為に必要なものなのでしょう。
パワースポットで行われる幼い自分や両親を客観視する事、それは即ち"自分は両親に愛されているんだと知る事"です。
これまで愛情たっぷりな両親の庇護下に置かれていたネス。
まだ子供と言える年齢である彼はまだ"そうでない状態"を知らずに生きてきました。この状態が普通で、これを当たり前として生きてきたのだと思います。つまり“愛されている“という事を知覚せずに過ごしてきたのではないでしょうか。
しかしこのパワースポットを巡る事でようやく自分が愛されている事を知る事になります。
「あの赤ちゃんは僕だ。両親にとても愛されているように見える。両親があんなに愛してくれていたというのなら、それなら、今の僕に両親がしてくれていたあれもこれも愛なのかも」
そんな感じでしょうか。
ネスを客観視出来ているプレイヤーとしてはネスが愛されている事はすぐに判るんですけどね。こういうのは本人程難しいのでしょう。
これまでで語った内容を要約すると
“誰かを憎んだりしてしまう悪しき心(敵対心)を乗り越えるには愛されている事を知覚する必要がある“
というようなものになります。
「でもギーグ戦って最終的にはポーラの「いのる」で決着を着けるから、ギーグを倒したのって実質ポーラじゃない?」と思われる方も居るでしょうか。
その点については次項から語っていきます。
ギーグ戦の「いのる」とは
ギーグ戦では、最後にポーラの「いのる」を複数回使用する事でネス達の関係者の思いが募ってギーグを打ち倒します。
![](https://assets.st-note.com/img/1654491550866-72XQRc4zi0.jpg?width=800)
これまでギーグ戦で焦点が当たっていたのはネスなのに、何故最後の最後に「ポーラ」で「いのる」なのでしょうか。それをこの項で解説します。
ここまでで以下の要素を確認しました。
ギーグはネスの悪しき心だという事
ギーグ戦はネスがそれに向き合う戦いだという事
ギーグを倒すには愛されているんだと知る事が必要だという事
しかし実際は両親から愛された記憶によって呼び起こされたパワーだけではいくらギーグに攻撃しても勝利する事は出来ません。
では何が足りないのかというと、そのままですが恐らくパワーが足りないのでしょう。
パワーとはこれまでで記した通り“愛されているんだと知る事“なので、それは言い換えれば愛されているという事をもっと知覚する必要があるということです。
確かにネスは記憶を見ても今の両親を見ても本当に愛されている子供だなと感じますが、では仮に両親が亡くなってしまった場合、もう誰も彼を愛さないのでしょうか?誰も彼の身を案じてはくれないのでしょうか?
その解答が「ポーラ」の「いのる」なのだと思います。
ネスはこの冒険の中で色んな人と関わってきました。そしてプレイヤーとしてはネスの目的を達成する為にではありますが、その人達を助けてきましたね。
何度も騙されて借金まみれになっていたトンズラブラザーズ
ゲップーに仲間を攫われたどせいさん達
研究資金どころか食べ物にすら困っていたアップルキッド
様々な人物が思い当たります。
「いのる」で出てきた人達だけではありません。恐らく色んな町でネスに救われたとても多くの人が「私達を救ってくれたあの少年が無事でありますように」と祈りを込めた事でしょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1654491550801-jI2vMv5gyJ.jpg?width=800)
仮にこれがネスに何の影響ももたらさなかったとしても、"誰かの無事を祈る"というのは1つの愛だと言って差し支えないと思います。ネスはこれまで出会った色んな人に愛されていました。
しかしネス本人はその事を自覚していないでしょう。そしてそれを突然自覚するのはとても難しい事だと思います。
じゃあそれを誰かが伝えてあげるのがやっぱりスムーズで、誰が適任なのかと考えると仲間の中で誰よりも長くネスと行動を共にし、冒険の果てにはガールフレンドにまでなったポーラなのでしょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1654491550907-S4VegWncgh.jpg?width=800)
一般的に両親から受け取る愛はとても大きいかもしれませんが、1人の人間が親元を離れて大人になっていく過程で他にもたくさんの人から愛されていくはずです。
友人、恋人、趣味や仕事の仲間、SNS上の知り合い、常連になった店の店員、駅でたまたま助けた人。
"両親からだけじゃない、今まで出会った色んな人からも自分は愛されているんだ"という事を含めて愛されていると知る時、初めて自分の悪しき心を乗り越えられるんだ“というのがギーグ戦の「いのる」とポーラなのではないかと思います。
ところでMOTHER2のキャッチコピーと言えば「おとなも、こどもも、おねーさんも」が有名ですが、箱裏にはこんなキャッチコピーも存在します。
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(このゲームをはじめると・・・)
こどもはおとなに、おとなはこどもに、なってゆきます。
ここまでで確認してきた、ネスが“自分は愛されているんだと知る事で悪しき心を乗り越える(人としてひとつの成長を遂げる)“というのが「こどもはおとなに」の部分だと考えられますが、では「おとなはこどもに」の部分は何を指しているのでしょう?
次の記事で解説します。
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