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大河タケルのリメンバーショットが怖いなぁという話

これは別に、まんじゅうこわい、みたいな話ではない。


『リメショが怖い』というのは、多分担当や推しを抱える人の中にも一定数ある感性だろうが、そのほとんどがきっと『まんじゅうこわい』のような話なんだろう。

好きな人間の原点をスチル込みで見られる機会に乏しかった当コンテンツでそういう機会が一人一人に確実に訪れるわけだから、そういった姿を見るという事にも大きな意味がある。

だから、今とは全く違う姿でも、今を想起させる姿でも、予想通りでも予想外でも、特別な一枚なのだ。この『リメンバーショット』は。


じゃ、ないんだ。

ガキの頃の顔とか、何してたとか、どんな人間だったかとか。

その情報一つ一つに計り知れない質量があることを承知で、自分が言いたいのはそういう事じゃないと言う。


大河タケルのリメンバーショットが怖い。



1.リメンバーショットの出処

リメンバーショット──つまるところ過去の写真は、主にアイドルによって様々な方法でプロデューサーの元へ持ち寄られる。

それは自分から手に取ったアルバムであったり、家族の間で再生されたホームビデオだったり、兄弟姉妹の思い出だったり、名も知らぬファンからの一枚だったりする。

大河タケルのリメショの出処として可能性が高いのは、

・自室
・自身が育った児童養護施設
・ボクシングジムの関係者

辺りだろう。

ただ、彼が育った施設が現存している可能性は低いと考えているため、他から見つかるような気がしている。職員から写真を手渡されるイメージが湧かないのだ。


315プロダクションには、施設で幼少期を過ごした人間が二人いる。黒野玄武と大河タケルだ。

だが二人の話を聞き比べると、その様子には大きな差異がある。
 一方は施設の時間を共有した子供達や施設職員との思い出を語り、一方は共に施設で過ごした弟妹との思い出を語る。

大河タケルは幼少期の思い出を語る時、弟妹以外の人間との思い出を語ることがない。
 恐らく本当に弟妹のことを守ることで必死でいつも二人の世話を焼いていたのだろうな、と考えている。そのくらい彼の過去には弟と妹の姿しかない。


ところで、大河タケルが弟妹と離別することとなったシーンが描かれている媒体があることをご存知だろうか?

『アイドルマスターSideM ストラグルハート』というコミカライズ作品の1巻に、彼が弟妹との再会が叶わないことを告げられた際の回想が描かれている。手元にあるなら広げてみてほしい。コマの流れをよく見てほしい。


タケルの手を引く小さな二人の子供。

その手を握り心の底から笑うタケル。

大きな木、立派な外観の建物。あたたかい施設の住人たち。

────血飛沫。

大きな病院の大部屋でベッドに横たわるタケル。

頭には包帯を巻き、細腕には管を繋がれ、
頬と首に傷を作ったタケルがぼんやりとした表情で問う。

「──アイツらは…?」

白衣を着た男が口を開く。

「無事だよ。怪我ひとつない。」

「顔が見たい……」

「残念だけど…それはできない。」

力なく首をもたげるタケルに男は告げた。


「君はもう、
あの子たちに会うことはできないんだ。」



今までタケルは「弟と妹と離れ離れになった」としか言わなかった。

その詳細について語られたことは皆無に等しく、ただ分からないなりに考えて、タケルの弟妹は何かの事情で引き取られたか、別の施設に移動させられたのだと思っていた。
 それでもタケルだけが取り残される理由が分からず、結局は何の答えにも辿り着けなかった。


その答えに辿り着くひと欠片が、このストラグルハートにあったのか。

何度も読み返し、無知なりに資料を探し、一つの仮説に思い当たる。


あの血飛沫は……タケルが負った怪我と、医師らしき男の「無事だよ」という言葉の真意は……


血飛沫のコマとタケルの様子から推察するに、彼はその時事故か事件に遭ったのだろう。
 それが外部からもたらされたものか、内部の事故なのか、誰かの悪意によって引き起こされた事件なのかは分からない。ただ被害者が生まれるほどの大事が起こり、タケルがその一人になった事だけは確かだ。

タケルがいの一番に弟妹の無事を確認したということは、タケルが怪我をした現場に弟妹がいた可能性が高く、考えられる場所は彼らが過ごす施設か学校、あとは児童公園のような遊び場か、施設ないし学校主催の行事で訪れた観光地辺りか。

頭部に裂傷、頬と首にかすり傷とすると、かなりの大事のように思える。処置を行い管を繋がれ、タケルの様子から察するに意識を落としていたことを考えると、手術が行われた可能性もある。
 例えば何かが爆発したとか追突されたとかそういう事柄が起こったとして、話はここからだ。


タケルが意識を失っている間に、二人の人間の引き取りが成立するなんてこと、あるんだろうか?

少し調べれば分かる。そんな訳がない。麻酔が効いていたとしてもたった数時間だ。命の移譲がこんな形で簡単に行われているのであれば、彼が生きる世界はとんだ反理想郷だ。


なら引き取り手が見つかったという話自体が嘘だったのか?

医師らしき男がタケルに虚偽を伝える理由は?

もう考え過ぎて正直よく分からないんだけど、分からないから言ってみるけど。


タケル達が過ごしていた施設で何らかの事件が起こり、それをキッカケに施設が閉鎖に追い込まれ、簡易的な処置として弟妹を含む施設の子供たちが急遽いくつかの同様の施設に送られることが決まった、という事だろうか?

『施設が閉鎖となった』と伝えなかったのは、この閉鎖に何か後ろめたいことがあったのか?

タケルに真実を伝えることで起こりうるリスクが大人たちにあったのか?弟妹を遠ざけることで生まれるメリットが存在したのか?

施設が現存している可能性が低いと言ったのは、こういう仮説が存在しているからである。


しかし施設という居場所を失ったタケルは、その後一体どうやって生きてきたと言うのだろう。

例えば彼も弟妹が送られたものとは違う施設に送られて、その内ボクシングの中継に映る弟の姿を追ってボクシングジムに通い始め、義務教育課程を修了し、プロボクサーとしての道を歩み始めたのだろうか。


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ところでこれは2022年1月開催のイベントで実装されたカードの台詞だが、彼はここで故郷について覚えていないと話している。

あれほど弟妹との思い出を鮮明に語るのであれば、弟妹と雪遊びをしたという話をしてもおかしくないが、彼は故郷である宮城県についてはよく覚えていないらしかった。

となると、彼は施設に送られた時点で宮城(豪雪地帯)を離れていたのではないだろうか。

「俺の故郷もこんな感じ」と言っていた場所は山岳地帯の雪が降りしきる小さな村であり、もしタケルの故郷がこういった雪の多い集落だったとすると、小さな子供を一手に引き受ける児童養護施設がその集落になかった為三人とも平野の方へ越してきた……という事なのだろうか。
 それか、施設に入る以前の本当に小さな頃はそういった雪の多く降る地域に住んでいた、とか……

また弟を見かけた中継先が東京だと知ったタケルがボクサーになる為に単身上京した可能性もある……物凄い行動力だが、彼の一途で抱え込みがちな性格を考えるといくら子供とはいえ何だかやってのけそうな気もする……


大河タケルがいつ東京にやってきたかを推察する材料の一つとして、牙崎漣のリメンバーショットがある。

彼らは幼少期に一度邂逅を果たしており、それからある程度の期間をおいて再会(タケルは覚えていない)している。

つまりその当時の年齢が分かれば、少なくともその時にはタケルが東京にいたという事になる。まあ漣が宮城にいた可能性も否定しきれないが……漣とタケルが出会った時期はタケルがボクサーとして鍛錬を積み始めていた時期でもあるので、多分上京してからの話だと思っていい。

で、公式生放送の発表によると牙崎漣のリメンバーショットの年齢は13才とのことだった。二人は1歳差なのでタケルは12才、小学六年生となる。

という事は、タケルは弟妹と離別してからかなり早い段階で上京していたという事になる。何か親戚等のアテはあったのだろうか?と思ったが、そんなアテがあれば彼らはそもそも施設に入っていないだろうし、もしあったとして親戚と同居している等の話が今の今まで出ないのもおかしい。

殆どが想像で何もかも推測でしかないが、ボクサーを目指そうと考えたタケルが地元の関係者に接触→タケルの素質を見た関係者が東京の同業者に相談→その伝手で上京……辺りがそれらしいだろうか……

サイドメモリーズでも分かる通り彼はボクサーとしてかなりの好成績を収めている。彼は努力の天才だが、間違いなくその素養もあった筈だ。
 もしかするとそれを見抜いた人が彼の上京を後押しした可能性もある……買い被りだろうか……?


もうそういう訳だから、私はタケルのリメンバーショットは彼の自室か、ボクシングジムの関係者か、ボクサー時代のファンや当時の記事の切り抜きから見つかるんじゃないかと思っている。

なんだか彼が毎日を心の底から笑って過ごした幸福な幼少期の写真が出てくる気がしない。

円城寺道流も牙崎漣も柔道の試合やストリートファイトのシーンを切り取った、所謂『格闘家としての原点や核』がリメンバーショットになっているので、大河タケルもボクシングを始めた辺りの……小学生か、中学生か……プロになる前くらい……のような気がしているけど……


これでタケルが「この写真は俺が育った施設の人から送られてきたんだ」と言ってリメショを差し出してきたら、上の推察は大体杞憂になる。杞憂でいい。こんな悲惨な過去であってほしいなんて思ったことない。むしろ杞憂であってほしい。

リメショが怖い、の1つ目の理由は『この仮説が否定しきれないような形でリメショが提出されるかもしれない』事だ。あぁ……



2.リメンバーショットの提出

ここから先の理由は先程と打って変わって印象の問題なんだけども。

リメンバーショットで施設時代の写真は出ない気がしているが、万一出てきた時が今から憂鬱で仕方ない。

施設での思い出はタケルにとってイコール弟妹との思い出だろうし、そうなるといつものあの……過去を思い出す時の……何とも言い難い表情になるのだろうな……

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何となく私の頭の中にはこの時のタケルの顔がこびりついていて、カードやストーリーの最中で弟妹の話をする時にはこの寂しいような、兄としての優しさが垣間見えるような、そういう表情がちらつく。

タケルが弟妹のことを考えている時、まるで過去しか見えていないみたいな、遠くに行ってしまったような感覚を覚える時がある。漣に言わせると『シケた面』というか、勝負の挑みがいのない顔という事なんだろう。

その顔をさせてしまうのかな、というのがリメショが怖い2つ目の理由だ。仕方の無いことではあるけれど……

書いたけどあまり理解されないかもしれないーー…………どんな表情でも大事な一面で否定するつもりは毛頭ないのだけど……会話の中で寂しい思いをさせてしまう自責の念というか……変なこと聞いてごめんね、と思う……



そんな感じでとにかく大河タケルのリメンバーショットが怖い。

顔の予想はついているし、何となくこんな内容かな……みたいなものはあるのでカード自体はそんなに怖くないんだけど。

そこから推察される過去が壮絶なものだったとしてもアイマスだと明かされない気がしていて……

多分タケル自身も言わないだろうし……

でも言ってほしいわけじゃなくて……辛い思いはしてほしくなくて……これは……


私が勝手に『大河タケルにとっての揺るぎようのない当たり前』を個人の尺度でつらいものだと決めつけているだけ……………………………………


(終)

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