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「豊作祭ライブ後の大河タケル」SideM雑記

終わってしまうな、モバエム。

大河タケルの最後の仕事は『祈りよ届け!豊作祭ライブ』だった。
 ライブ前日、手伝いとして参加していたバザーで妹の後ろ姿を発見するも、人混みに揉まれ姿を見失い、目の前のライブに集中できなくなるという内容だった。
 これを選抜でやる意味だとか、この終わり方だとか色々考えたのだが、終わり方自体にはある種諦観にも似た納得はあり、選抜開催についても意味はあったなと今は思っている。

アイマスには家庭環境に複雑なものを抱えている子がわりかしいて、そういう子達は家族の為に色々なアクションを行っていたりする。
 ただしアイマスが描写するのはあくまで『アイドルの人生』であって、必ずしも勧善懲悪的に物事が解決しない所が私はリアリティがあっていいなと思っている。
 これはアイマス内の話ではなく、ごく一般的なありふれた現実の話だけども、いくら家族に変わってほしくて本人が態度を変えたり収入を増やしても、結局家族が本当に変わることなど稀で、最後は自分の幸せのために家族を切り捨てなければいけない。そういう人間は思っているよりも大勢いる。

報われてほしい。そう思う人がいることは承知しているし、そういう人が出てくるだけ想われているのは嬉しいなと思う。
 けれど、『いくら他者の変化の為に尽くしてもどうしようもないと知って、大切な家族を嫌いにならない為には家族を一度切り捨てなければいけない』という人生に生まれながらに身を置く人間からすると、その無情さと、それでも自身の積み重ねによって得た盟友に鼓舞され戦い続ける選択をとる彼の姿は、まるでヒーローのように心強く、ただカッコイイのだ。

お話の中くらい素直に幸せにしてあげてという気持ちも大いに理解できる。だが、私はこの作品の『辛い状況下に置かれている人間にこそ寄り添える優しさ』みたいなものに幾度か救われていて、だから無情な世界を踏み締めて駆ける彼らを心から応援しているのだと思う。これはかなりいやらしいというか、ズルい立場の見解だとは思うけど。


それにしてもタケルは豊作祭ライブ以降少し変わったような気がする。
 彼は前々から人に弱さを見せることを良しとしない人間だったと思うが、豊作祭ライブ後に発表されたソロの歌詞や12/21の誕生日寸劇では、わりと自分の弱い部分を人に見せたり、言葉にする事が増えたように思う。
 それ自体は弱さではなく、むしろ強さだと彼自身8th Anniversaryで語っており、実際その通りなのだろうと思う。自分の弱みを見せられるほど信頼できる人間がそばにいることも、それを許容してもらえることも、喜ばしいことだし素敵なことだなと思う。

大河タケルの幸せを『弟妹との再会』とするなら、彼は今幸せではないことになる。
 ただ私には彼の幸せはそれだけではないように思えていて、『自分の努力を周囲に認められること』だったり、『他者に影響を与え、それを返され更に成長できること』だったり、最終的には『自身の積み重ねてきた成果を、他でもない自分が誇れるようになること』といった内面的人間的成長も含まれるんじゃないかと思う。
 なので彼には探し求める宝物と同じくらい自分のことをかけがえのない存在だと思ってほしくて、その姿が見たくて応援し続けていて、だからソロ2曲目となったResolutionにて歌われた一節が涙が出るほど嬉しかった。

頂点目指して 向かう今日が
励むすべて 特別で
かけがえのない自分に気付かされてく

曲の歌詞だから、丸々彼の言葉ではないかもしれない。渡されたものを自分なりに歌い上げているだけかもしれない。けれど、大河タケルにこの歌詞を歌わせようと考えた人間がいて、この言葉が彼に届いて、それを彼が誰かに届けるために想いを込めて歌ったのなら、ちょっとくらい『大河タケルの言葉』として受け取ってもいいのかな。と思う。

自分には得意なことがあまりないからとか、不器用だとかバカだとか、そうやって少し自分を過小評価するきらいがあったタケルが、『全部アンタのお陰だ』という枕詞なしに『かけがえのない自分』に気づいてくれたのが底抜けに嬉しい。


いい終わり方だったな。という締め方をするつもりは毛頭ないが、これが数ある転換点の一つになったんだろうなという確信はある。
 タケルは強かった。でも、もっと強くなった。大きくなって、頼りがいも出て、人として更に素敵な人になったなと思う。
 それを途中からとはいえ見守れたことは本当に光栄で、だからあの時彼の表情と虎牙道の歌声に惹かれてSideMに触れてよかったと心から思っている。

見つけてくれてありがとう、なんて、全部彼の努力の賜物だけど、私の方こそ見つけさせてくれてありがとうって気持ちでいる。
 ずっと信じて走り続けてくれてありがとう。タケルに出会う前の私も、出会ってからの私も、その背中があったからこうしていられるという事実が、彼を誇らしいと思う気持ちの芯として心に深く根ざしている。



(終)

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