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「サイスタのちょっと分かりにくいセリフ選びが好き」SideM雑記

目の前にいる青年に突然、「アイドルってなんだ?」と聞かれた。
 答えに窮してしまう。俺はアイドルをよく知らないから、説明しろと言われても上手く答えられるとは思えない。
 どうせコイツのことだ。俺の拙い説明にあれこれ難癖をつけて、最後は「何言ってんのか全然分かんねェ」と放り投げるに決まってる。だから俺は、俺以外の人に聞くように言った。

なんなんだ、コイツ。


エピソードゼロ THE 虎牙道②

を読んだ。結構前。実装されてすぐ読んだ。

一話では道流の過去から始まり、続いてタケルがアイドル事務所の門を叩く。保護者を連れて再度赴くように言われ、道流を連れて事務所へ向かうタケルを漣が訝しみ、それを尾行するところまで描かれた。
 二話では二人が事務所に入っていき、それを追っていた漣がプロデューサーに「アイドルになりませんか?」と声を掛けられる所から始まる。「弱そうな気配だから無視してた」という発言、痺れる。私は漣を念能力の使い手なのではと疑っている。モバの肝試しイベを見るに、恐らく円が上手い。
 つれない漣は一旦置いて、プロデューサーがタケルと道流と面談し、アイドルとは何か、アイドルになると何が変わるのかを事細かに説明する。込み入った話をきちんとするのは当たり前のことだけど良い。ちゃんとした事務所でよかったね。
 話を終えてタケルの意思を確認した所で、プロデューサーは道流にもアイドルにならないかとスカウトを掛ける。コイツ……!?THE 虎牙道は全員「俺(自分)(オレ様)が……アイドル……!?」をやっている。まるで全員主人公だ。そういえば全員主人公だった。
 で、今の状況を鑑みた結果道流はオーディションを受けることに決める。この行動力があるから24歳でこんな凄い人になるんだろうな。頭が上がらない。私は円城寺道流という人間をかなり尊敬している。こんな風になれるとは思わないが。

後日。タケルが路地裏で野良猫に餌をやっていると、何やら普段と様子の違う漣に気づく。
 静かならいいか、と放っておこうとするタケルに、漣は突然「アイドルってなんだ?」と聞いてくる。アイドルってなんだ?……てなんだ。
 タケルが「円城寺さんに聞いてくれ」と言うと「オレ様には言えねーってのかァ!?」としっかりめにキレてくる。なんでこんなに怒ってんだ?
 しょうがないので理由を説明してやる。

なんて痺れる切り返し。単に「説明が難しいんだ」で終わればいいのに知能煽りとは恐れ入った。多分自分の理解と説明が及ばないだけとするのが不服で、相手にも非があるみたいな言い方をしたかったんだろう。恐らく悪意があって言ってる訳じゃなく素の負けず嫌いで言っているし、お互い難儀な性格と言語センスをしている。ハリネズミ達がスキンシップを取っているみたいだ。
 もちろん漣は怒ってどこかへ行ってしまう。

コイツには敵わん。

ところで漣が道流に同様の質問をし、道流もまた門外漢ながらアイドルとは何者なのかを説明してやると、

何だか腑に落ちていないような顔をされる。
 が、少しすると今度は「オレ様もアイドルって世界で戦える強さを見込まれた」と言ってくる。ふむ。

へ〜、そういう感じなんだ……。 

声が凄く嬉しそうなので、多分嬉しいんだと思う。というよりワクワクしてるのかな。
 そんな感じで漣もオーディションに参加することに。エピソードゼロ③に続く。


本題「ちょっと分かりにくいセリフ選び」

私はこのエピソードゼロ二話、結構「うーん」と唸りながら読んだが、皆さんはどうだろうか。
 読んでいて、少し違和感を覚えたりしなかっただろうか。

サイスタから入った人でも、THE 虎牙道の様子を見れば、「漣がタケルに対抗意識を剥き出しにしている」というのは流石にわかると思う。
 で、そんな漣がタケルに「アイドルってなんだ?」と聞くのは、少し変じゃないだろうか。
「アイドルってなんだ?」というのは、普通に考えたら「アイドルとは何者ですか?」なんだが、それはつまり『私は分からないので、あなたに教えてもらいたいです』という意思表示になる訳だ。
 ただ、あの漣がタケルに対して自発的に教えを乞う構図を受け入れるわけがない、と思う。それなら最初から他の人に聞くか、余程その低姿勢を嫌って自分で調べるか……まあ漣の性格からして何も調べない可能性も有り得ると思っている。
 だからこれはきっと、Whatsではなくて、Whyなんだろうなと思う。それならタケルに聞く意味がわかる。それに答えられるのはタケルしかいないからだ。

またまた、考えすぎでしょ。みたいな。
 私もちょっとそうかもしれないと思った。でも待ってほしい。こいつを見てくれ。

この時漣はアイドルを、ボクサーとか、柔道家とか、そういう闘う者の総称だと思っている。あながち間違いでもないけど。
 アイドルとはこういうものだ、という道流の説明を聞いた漣は、タケルと道流がアイドルになると聞いて「こっちは決着がついてねーってのに……」と苛立ちを顕にする。
 つまり「アイドルってなんだ?」は、『オレ様との決着もつかねェままオレ様の知らねー世界で戦うってのはどういう了見だ?』が正しいニュアンスなんじゃないだろうか。となれば、あれだけ声を荒らげて説明を求めていた理由もわかる。なるほど。

「漣もアイドルになれば本気のタケルと戦える」と聞いて、「チビと本気で戦える……?」と心を躍らせていた訳だし、やっぱり漣が求めていたのはアイドルの詳細ではなく、自分を置いて他の世界に逃げるのは何故か?に対する説明だったと思うんだよな。多分。いや、別に逃げてないけど。


……という、どちらにも取れる、所謂叙述トリックのような言葉選びがなかなか私好みで「うーん、これは良いエピソード」と唸っていた訳だが。

この結論に至ったオタク、他にいたんだろうか。



(終)

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