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『フェニックス(オートバイオグラフィックな何か 13)』

つらかったことは、記憶から消えていくものだ。通常は。

こちらに来てすぐ、どれだけつからったか、わからない。身体中が痛くて痛くて、横になっても身体が痛くてたまらず、3時間寝られれば、いい方だった。過敏になっていて、近寄られただけ、触られただけで叫び、ずっと泣いていた。そんなだから、住んでいた家を追い出された。

しかし、日本で出されていた薬は、減らしていった。減らさせられた。ニューロフィードバックに通い、カウンセリングに通い、鍼に通い、チャイニーズドクターに施術してもらうために通い、癒えた後の私のような彼女たちに、「次に会いに来るために生き延びるから」そう本当に言って、本当にそうした。生き延びた。

アビューサーを人生から追い出すのに、「一人で立て」「寄りかかるな」「人前で泣くな」「つけ込まれるな」「胸を張って真っ直ぐに立て」「言い返せ」「Be  Brave!」 本当にそう、繰り返し言われて、本当にそうした。そうして、なんとか生き延びた。

ベッドの上で寝られなくなり、ずっとソファーで寝ていた。小説『トラッシュ』の冒頭のように。ベットに近づくこともできず、横になると恐怖で戦慄した。床からソファーで眠れるようになり、1ヶ月か2ヶ月して、ベッドで寝られるようになり、しかし、そんな中でも日本で出された薬は、確実に、やめていった。いや、やめさせられた。

日本とは、全く違うやり方で、日本では、当たり前のように出されていた薬をやめて、そうして、つきものが落ちたように、スッキリしていった。そうして、私は、ここで、チカラを取り戻し、蘇った。

こちらのファーストネイションのトランスジェンダーであるTwo Spiritのアイコンだと名乗る人に、初めて、「自分もそうだということを30年忘れていた」と言ったら、「アイヌ?」と聞き返された。私が自分のことを話そうとすると、それなりの確率で「アイヌ?」と聞き返された。生まれ育ったところでは、その単語を聞くことすらなかったのに。彼女は最後に言った。「あなたが、アイヌであることを思い出せて、本当に良かった。」

そんな私に、コミュニティで承認を受けていないなら、アイヌだと名乗るなとメッセージが来た。そうせざるを得ない人たちの背景を悲しみ、しかし、その人たちのヘテロノーマティヴなミソジニーと闘うために、混乱したアイデンティティに関する考え方を取り除くために、自分のジャスティスを勝ち取るために、私はアイヌを名乗る。

私はアイヌで、トランスジェンダーで、ノンバイナリーで、インターセックスだ。そしてゲイだ。

それがどうした? それでどうする?
私は、絶対に潰されない。


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