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決心

結局、本当に、全てのデート相手と切れたので、別に、女性的な振る舞いを織り交ぜる必要ないよね、と突然思った。女性的に振る舞うように、意識的に、また無意識的にしていたけれど、何のためかというと、相手が私を安全だと思えるように。(その理由については、別稿で考えよう。)

私に女性的な振る舞いを期待する相手は勘弁してほしい、なので、次からは、シス男性の亜種くらいの取り扱いをしてくれる人だけとデートしよう、と決めようとしているところだった。

それで、不意に1999年にしたインタビューを思い出した。本にも引用してあると思う。

「誰のために女子トイレに入っていたかって、僕のことを女だと思っている誰かのためよ。でも、そういう誰かのことは、もうどうでもいいって、正直、思ったの」

相手にとって安全な存在である、というのは、そんなに単純な事態ではなさそうだ。

加えて、日常生活で、パブリックな場所で、相手がこの人、どっちなんだろうと混乱すると、その混乱が伝わるので、私がしんどいから、あらかじめ、どちらでもないと分かる感じ、にしていたけれど、もうどうでもいいかも、というより、女でも、どちらでもないとも、疑われないようにすれば、その方が望んでいることだ。正直。とは、自分が繰り返し、論文に書いてきた通り。自分でやっても、今でも、カナダでも、そうなるのかと、ため息、である。

私がクラッシックなトランスなのは、世代的な問題もあるし、未診断のインターセックスのためだと思う人もいる。散々クラッシックな在り方について聞き取りして、日本では、むしろ、それに阻まれてトランスできず、アウトもできず、しかし、ここで、カナダに逃げてまで、知らない誰かのために、どちらでもないかどちらでもあると、分かるように頑張る必要、なくない?

ゲイストリートとダンススタジオと、住んでいるところと、すでによく知っている友だちや知り合いだけが、知っているので、良くない?

以上のように思えたのには、もう一つ理由がある。

私の胸は、どんなに痩せてもDカップあるし、平らにするためには、バインダーをしないといけないけれど、肩も凝るし、しんどい。正直、胸を取った方が、よっぽど健康的に生活できる。精神的にもそうだろうけれど、確実には、身体的に。(これについては、実際にバインダーやテープで体調に悪影響が出ることを知っている、トランスマスクの本当に身近な人たちしか、知らないと思う。なら、まず、その知識を普及させるべきだ。)そうなのだけれど、何もしなくても、実は、そんなに支障はないみたい。

持ち上げなければ、胸筋がついているか、乳房の大きめの男性か、そう思える服装にすれば、バインダーしなくても、別に問題がない。脱いでも、後ろから見たら、むしろ、女だと思う方が難しそうな背中をしているし、腕もしかり。

正直、どちらの性別に見えるかは、ある程度、というか、かなりの程度、立ち振る舞いの問題。多くの人は、というか、トランジションを試みたことのある人以外は、知らないだけ。(博論では、そうも書いたんだけれどもね。)

それと、こちらには、トランスは沢山いるから、この人は、女だったことが透けて見えるけれどトランスマスクだなと思われたら、男扱いして、そっとしておいてもらえている(と思う。) むしろ、そうしないのは、差別的な取り扱いだと認識されている。そうではなく、逆に嫌がらせされそうな時だけ、防御的にすればいい。この点が、むしら、日本とは違うと思う。

ということで、可能な限りスティルスして生活することにした。(スティルスの、そういう「中途半端」な場合の言い方が、別にあるのかを誰かに確認はしないと、だけれど。)

スティルスというのは、パッシングのこと。こちらでは、パッシングという言い方は、差別的な言い方なので、大きい抵抗感を持って使うのを避けられている。スティルスは、ジャーゴンなので、一般の人は使わないけどね。

(私は)猫背は禁止。重心を下に保って、座っている時には、なるべく微動だにしないようにする。忙しく動かず、ゆっくり動く。顎は引く。脇はあんまり絞めない。足はなるべ常に腰幅くらい。リラックスした無表情。

私は、実は、既にそれくらいやれば、十分。目の見えないサングラスすれば、より良い。

ということで、相手のオリエンテーションがABCDのプレイ関係も解消する。

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