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「祖師を生きる」シリーズ完結!

■ひろさちや著『日蓮を生きる』刊行を期して

ひろさちや先生による書き下ろしシリーズ「祖師を生きる」(全8冊)が、最終巻『日蓮を生きる』(2022年9月)の刊行をもって完結しました。

ただ、全8冊のうち、『最澄を生きる』『栄西を生きる』『日蓮を生きる』の3冊が、先生のご逝去(2022年4月)後の公刊になりましたことを、編集担当としてお詫び申し上げます。それでも、先生の仏教は「道徳」ではなく「宗教」ですので、その教えが色褪せることはありません。読者の皆様には、活字を通して先生の〈声〉を聴いて頂けましたらと存じます。

ところで、ひろ先生は筆が速く(原稿は万年筆で執筆されます)、そして事前にプロット(話の筋、構想)を作成されないかたでした。「作曲家は曲を作る前から、すでにその曲が聞こえている」などということを聞いたことがありますが、ひろ先生に執筆のしかたを伺った時、「プロットのようなものは頭の中にあるので書き出したりはしない、何となく自然に原稿となっていく」というようなことを仰いました。

また、シリーズ8冊の原稿は、いずれもほぼ同じ枚数(200字詰め原稿用紙で500枚程度)でした。感嘆しながらも、私は、〈先生の手にかかれば、もしかしたらこの程度のことは簡単なのかも…〉と思いました。

ところが、8冊完結後に先生のご家族様からお伺いしたところによると、8冊の執筆を引き受けはしたものの、はたして脱稿できるかと不安を口にしていたんですよ、とのことでした。プロットも作らない先生のような方は1冊分の原稿を簡単に執筆されると思っていた私は、先生が不安を抱えられながら、身心を削ってお書きになっていたことを想像することができませんでした。

それから、このようなことも先生から伺いました。脳梗塞に罹って入院されていたときに、先生はご自身で書かれた本を病室で読んでおられたとのことで、「いやね、自分で書いた本を読んで、自分が救われました」と仰いました。ひろ先生お得意の冗談的な要素もなくはなかったとは思いますが、それ以上に先生の著作、先生の仏教の普遍性がホンモノであると実感したお言葉でした。

目を閉じて、ひろ先生を思い起こすと、様々な言葉が頭に浮かんできます。

――〈法華経〉と『法華経』
――「われわれ衆生は仏性の中に存在している」
――不登校でいいじゃないか
――「カエサルのものはカエサルに、神のものは神に返しなさい」
――努力と精進
――「のんびり、ゆったり、ほどほどに」
――浄土へ持って行くお土産とは?

ひろ先生から教えて頂いた仏教を「自分の仏教」にしていけるように、〈こんな時、先生はどう言われるかな?〉と想像しながら、人生を歩んでいきたいと思います。

*ひろさちや氏の敬称については、気象大学校で教鞭を執られていた「先生」でいらしただけでなく、小社の有志の勉強会で長く講師をお務め頂いていたことなどから、先生と呼ばせて頂きました。
 
編集担当(O)

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日蓮を生きる
ひろさちや・著
¥1,650 (税込)

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日蓮聖人(1222-1282)の生涯と思想を紹介しながら、その生き方や考え方が現代に生きる私たちにどのような示唆を与えてくれるかを解明する。「いかにして仏教を人生に活かすか」を探究してきた著者の思索の集大成。

ひろさちや
1936年(昭和11年)、大阪市に生まれる。東京大学文学部印度哲学科卒業、東京大学大学院人文科学研究科印度哲学専攻博士課程修了。1965年から20年間、気象大学校教授をつとめる。退職後、仏教をはじめとする宗教の解説書から、仏教的な生き方を綴るエッセイまで幅広く執筆するとともに、全国各地で講演活動をおこなう。厖大かつ多様で難解な仏教の教えを、逆説やユーモアを駆使して表現される筆致や語り口は、年齢・性別を超えて好評を博する。2022年(令和4年)、逝去。
おもな著書に、『仏教の歴史(全十巻)』『釈迦』『仏陀』『大乗仏教の真実』(以上春秋社)、『お念仏とは何か』『禅がわかる本』(以上新潮選書)、『生き方、ちょっと変えてみよう』『のんびり、ゆったり、ほどほどに』『インド仏教思想史(上下巻)』『〈法華経〉の世界』『『法華経』日本語訳』『〈法華経〉の真実』『親鸞を生きる』『道元を生きる』『空海を生きる』『法然を生きる』『一遍を生きる』『最澄を生きる』『栄西を生きる』(以上佼成出版社)などがある。

【目次】
まえがき/第1章 人情家=日蓮/第2章 誕生、立教開宗、そして鎌倉へ/第3章 『立正安国論』/第4章 伊豆流罪/第5章 佐渡流罪/第6章 身延への退隠/第7章 日蓮の最後/第8章 日蓮に学ぶ「生き方」/日蓮略年譜

ISBN:9784333028771
出版社:佼成出版社
発売日:2022/9/30