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映画「帰ってこなかった男」 全シーン雑感 S#6〜10

全シーン雑感 S#6 デート

二日目に撮る予定を天気予報が悪かったので、四日目に撮影日ずらしたけど大正解でした。
結果撮影は小嶋組初の4日間になりましたが、追加の日に夢のシーンも撮れて、ロケ地の三浦半島で食べた海鮮丼も美味くて結果オーライでした。

デートシーンはこの作品唯一の安心感のあるシーンで、シーン5から続いての仲の良い二人が撮れました。
ただキラーワード「子供作る」は放り込んでます。書いた自分が見ててもいまだにザワッとする笑。
まったく企んでなさそうな佳奈の顔、多分男は色々考えますよね笑。その感情も利用しました。

今回は上映前に全く知らない方(女性の多分30代で読者好きで映画も見る方ですよ的な方)にも見ていただき感想をいただいきました。
その人が「孝明が佳奈かあゆみ、どちらが好きかよくわからない。ひいては、何考えてるかわからない」と感想くれました。
でも男って(こう言う男って)、どちらが一番なんてないんですよね。わかってたらこの状況にはならない。
その場その場で適当に決めてるから、こうなる訳で。ただ孝明があゆみに対してエロい迫り方をする、とかはあっても良かったのかもなーとは思いました。男って欲望の前ではもっとアホかも。

このシーンは録音もいなかったのでアフレコです。

冒頭の草木のカットはこれまたフリー素材。こう言うの撮り忘れますね。


全シーン雑感 S#エクストラ 崖の夢

脚本になかったシーン。
ここと後の妄想のシーンは、自作映画では封印してたMVぽさを出してみました。
ここでは何が起こってるかわからなくて良いので、千晃さん、実倉さんはそれほど説明もせず、ただ立ってもらいました。

あゆみは登場予定無かったのですが、卯ノ原さんが「あゆみもいると面白い」と言っててなるほどなと、予定をずらしてもらって一緒いきました。

それ以外に特筆するのは海鮮丼が美味かった事くらいでしょうか。S#6と同じ三浦半島で撮りました。



全シーン雑感 S#7

次のシーンで妻の佳奈は働いているのに、孝明は無職の癖に昼寝してて、しかも誰かと楽しそうにLINEをやってる、と言う比較シーンです。

編集的に夢を受けて、顔のアップから行こうと思ったんですが、孝明の状況説明の方が大事なので、引きで一度状況を伝えたのち、「今の夢はなんだ?」と思わせる寄りを入れて、再び引きでスマホを操作しているのがわかる様にしました。



全シーン雑感 S#8 佳奈のバイト

ここは元々佳奈と友人ユキが交通量調査をしてるのを野外で撮る予定だったのを、居酒屋スタジオの下がネットカフェスタジオだったので、ネットカフェで働いている、という設定に変えました。

に加えてネットカフェ店長役の鐘ヶ江さんのスケジュールも空いたので、急遽店長役を作って、鐘ヶ江さんのワイルド感あるのに少し緩い感を女子二人にいじってもらいたくなり、三人のコメディぽいシーンにしました。

全体的に孝明がイジられる映画の中で、別のシーンでも別の人がイジられてる。この世の中は加虐と被虐のバランスで成り立ってるのでは?と思わせる実は残酷なシーンかも。

最初はほぼ引き一発で今泉力哉みたいに撮ろう、と思ってたんですが、千晃さんと八木さんが良い空気を作ってくれたので、二人の少し意地悪い楽しさを伝えるべきかな、と二人の表情がわかるカットにしました。

元々漫画を山ほど抱えてくる店長がバカバカしくて良いなと思ってたんですが、鐘ヶ江さんが持つとより一層バカバカしく見えるのは、彼の魅力ですね。


全シーン雑感 S#9 佳奈とユキの飲み

ここは前のシーンの二人の雰囲気のまま撮れました。
二人については殆ど演出してません。したとするならユキ役を決める際に、佳奈役の千晃さんに誰が良いか聞いて八木さんを推薦してもらった、くらい。

佳奈の過去を説明して配信のシーンの補完をしつつ、佳奈が何を考えているか、チラ見せするシーンです。これがあるとこの先の佳奈の動きに全て理由とイメージができるようになるんじゃ無いかなと思います。

居酒屋のシーン、エキストラの動きがいいです。
シャッターする店長や奥で飲む若者たち、この後の居酒屋シーンのカウンターで飲む中年女性(メイク大島さん)と店長米元さんが話してるのが、とてもリアル。

ここはそれに続く元夫の由紀夫を見つけるシーンに繋がるのですが、実際見つけているシーンは撮影はしつつもカットしました。
カットしたシーンを以下から見られます。

実際に由紀夫を見つけているのか?見つけてないのか?そこは謎にしておきたいなと。
アンドこのずっと後のシーンであゆみが言う「もしかして由紀夫さん、存在してなかったりして」を補完する為にも、具体的に見つけるシーンはない方が良いとカットしました。

居酒屋シーンは二回出てくるのですが、時間帯が違う為、照明を変えてます。こっちは20時くらい。夜な時間の感じしますね。
変化をつけてくれて、飽きないようにしてくれてる。
照明のファインプレイです。


全シーン雑感 S#10 焦る佳奈

ビールのアップから始まるシーン。ビールから始まるのはここからモードが変わった事を伝えたくて。そして人の内緒話が聞こえてきたようにしたかったんです。

佳奈が焦るテンションは脚本執筆時はもう少し落ち着き気味のイメージでした。でもよく考えると恐れていた事が起こったわけで、このくらいが見てる人にも伝わりやすい。
また逆に佳奈とのコントラストで「孝明がそれほど慌ててない=状況を飲み込めてない事」が強調されてます。お互いの心情をお互いの芝居の差でわかりやすくしてるんですね。相手の芝居がわかりやすいと何をやったら良いかわかる好例です。
それは多分次の居酒屋シーンのコメディシーンに繋がるよう芝居をしてるんだと思います。
このシーンは編集でもテンポを上げてます。間をつめてセリフの途中でカット割ったり。

次のシーンがコメディなので、ここでサスペンスを盛り上げるのはどうなのか?とは思ったんですが、ここで盛り上げないと作品としては締まらないんですよね。

あとラストにビールを飲む孝明と飲まない佳奈を強調。ここは勧められたビールをバシッと断る佳奈が効いてます。この辺りのテンポを変えた芝居、千晃さん上手いですね。卯ノ原さんの受けもそれを強調してて良い。

そんな二人の、走ったところにセンタリングが上がってきた様な芝居は、次のシーンでさらに漫才の様に噛み合います。

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