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映画「帰ってこなかった男」 全シーン雑感 S#1〜5

全シーン雑感 S#1

このシーンはこの物語の根幹を説明するシーン。
何か一物がある佳奈の表と裏、保険外交員笠井の的確な説明、そして何も知らなそうな孝明。
この作品で一番イメージ通りでした。

保険外交員笠井役の佐藤達也さんはこのシーンのみですが、職人の様に大事な説明をノイズなく、伝えてくれました。

脚本としての失敗が一つだけ。笠井の説明で「~ですが、~ますが」と「が」が同一セリフ内でセリフで二回続くのは何か回避したかった…。台詞このままでも、前半弱くて後半強くとか、間を開けるとか、何かやりようあったなと反省してます。

あと良かったのは撮影照明と美術。とても古い家を生活感ある様に蘇らせてくれて、狙いたい世界観が作れました。

この映画の裏テーマは「足」です。
その台詞もこのシーンで振っていて、このシーン失敗したら終わりの映画なので、うまくまとまってホッとしました。


全シーン雑感S#2

タイトル。もっといいタイトルなかったかなと思ってる。


全シーン雑感S#3
喫茶店シーン

ここは孝明のバックグラウンドを説明するシーン。
五人のキャラクターがそれぞれ出ててよかった。
この短いシーンでキャラクターを想像出来るアドリブも入れてくれて。
さらに山本があゆみに気が合って、さらに孝明との仲を疑って軽く敵視してる、みたいな設定も孝明役卯ノ原さん、山本役島林さん二人で入れてくれたので、孝明とあゆみの関係をより支えるアドリブで良かったです。そこに割って入る黒田、のリーダー感、そして我関せずで進める白井もいい感じ。

予想外で良かったのは、あゆみの顔に影が落ちている所。妙な不気味さを演出出来ました。たまたまです。

ここを見るとあゆみの表の顔は、ほぼ実倉萌笑さん自身。そうするとあの裏の顔も本物じゃ…、というのは本人に聞いてください。

孝明がこれから起こることを、なんとなく感づいてる様な芝居だったのも良かったです。

その後の外観はフリー素材。どこだこれ?
でもハマって良かった。


全シーン雑感 S#4 ラブホテル

前のシーン出演者全員で、孝明、あゆみのふたりの関係を怪しませてくれたので綺麗につながりました。

頭の結婚指輪をいじるカットは脚本になく、二人の好プレー。贅沢言えばもう少し指輪見せたかった。

その後の鏡に映った、あゆみ〜あゆみの相手は誰だよ〜孝明かやっぱり、の流れは予定通り。

この物語のもう一つのキモである鏡。鏡に映るのは表と裏がある人のみ(あゆみと佳奈)で裏の顔をイメージしてます。

そこからのツーショット。あゆみ役の実倉さんがいろんなトーンで話してくれるというか孝明をおちょくって?くれるので、飽きないシーンになりました。
あゆみ「そうじゃなくてお金」がクールにそしてちょっとバカにする様に孝明突き放してて最高です。

この映画の裏テーマは孝明をどこまでおちょくるか。
それを感じた人はブラックコメディに、そうでない人はサスペンスに見える映画。
小嶋自身の性格の悪さをどこまでエンタメ出来るか、というチャレンジでもありました。

なので全編において受け身の芝居で人間サンドバッグになってくれた卯ノ原さん、とてもいい感じでした。ここも。

ラストはあゆみで終わります。
これは孝明だけでくなく、あゆみや他の人も不安と寂しさを抱えている、不安は孝明だけでなく世界に蔓延している、ということが伝わるようにと編集しました。

夜のシーンは全体的に照明に頑張ってもらいました。
これまでの自作は、芝居で見せたかったので、あまりカッコいい画を追求しない様にしてましたが、今回はエンタメなので、目でも楽しんで欲しく、行けるところは行っちゃってくれと撮影照明には頼んでました。このシーンも全開でやってくれて最高です。


全シーン雑感 S#5 孝明と佳奈の家

佳奈の配信のテンションは迷いました。佳奈役斎藤千晃さんが「あまり上げない感じでやってみます」とやってくれたら程よくて。この後の佳奈のキャラクターにブレない感じになって、助かりました。

配信の合成画面は少し動いててます。
あとアイコンがあるんですが、実はあの人がこの視聴に参加してます。
後半にもう一度、同じアイコン出てきます。誰か気づいただろうか。て書けば大体わかりそう。

実際映っているスマホで配信カットは撮りました。

卯ノ原さんの、ラブホテルの事を微妙に引きずって罪悪感を感じてる芝居がいい。わかりやすさは卯ノ原芝居の魅力ですね。

佳奈が良い人そうなのに、頑なにビールは飲まない、あと働いてない奴がビールを飲むのを冗談混じりに責める。人ってどこかに思ってる事が出ます。千晃さん、そこ滲ませてるの上手いなぁ。

自分の撮影はMV撮影(小嶋は普段はMVのディレクターをやることが多いです)の影響もあって、シーンを通して何度も撮るのですが(MVも演奏をフル尺で何度も撮る)、リアクションの芝居を掬い取りたい為、そうしてます。
上手い役者は気を抜いてないので、リアクション芝居の方がたくさんを語ってる事が多いんですよね。
モノの価値はアクション(セリフ)ではなく、受け取った人のリアクションで決まると思っています。
編集下手な人はオンでセリフを話す人ばかり抜いてますが、逆にそれだとわからなくなるんですよね。そのアクションの価値を決めるのはリアクションの態度なので。

これは脚本に落とし込んだので誰にも話してないのですが、孝明にとって佳奈は安心出来る場所なので、基本会話は板付き(その場から動かない)にしてます。動かないし立ち位置も変わらない。
一方あゆみは不安をもたらす役なので、板付きで終わらないし、動いてもらってます。立ち位置も変わります。
全体的にそこは脚本の意図通り上手く行ったなと思ってます。
キャラの立ち位置がそのまま心理状態になれば芝居の助けにもなるし、一目でわかる。そこはいつも気にしてます。

自慢気に演出論語ってる…。すいません。消さないけど。

そして仲の良さを感じさせつつ、デートシーンへ。

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