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旦那が好きだと気付いた話

前回の話はこちら↓



時は過ぎ、二年。


その間に事の顛末を話した友人に「お前が悪い」とめちゃくちゃ怒られ、その場で旦那に謝罪のラインを送ってから、お付き合いこそしていませんでしたが数ヶ月に一度ちょっとだけラインのやり取りをする程度になっていました。

けれど関係はその程度。

確かに三つ上で、優しくて、酒タバコギャンブルなしで、自分のことを大事にしてくれそうで、給料がはちゃめちゃに良いとなると、惜しい相手ではありましたがやはりどうしても“そういう関係”になるには踏みとどまってしまう自分がいました。


自分の人生そのものだったパティシエという仕事をあっさり諦め、不仲な家庭で唯一の味方だった祖母を亡くし、もう自分がなんのために生きてるのかわからなくなった頃でした。

お金がなくなり慌てて始めたパートの仕事も先輩が厄介者ですぐに働けなくなり適応障害と診断され休職(退職したかったのですが店長と主任の2人がかりで引き止められて「うつなんて気の持ちよう!」と根性論を展開されて何も言えませんでした)し、家族に嫌味を言われながら生活するのも苦痛になり、大半の時間を空き家になった祖母の家で暮らしていました。

お金がない、でも今のパートをきっちり退職してしまわないと他で働けない、そもそもおかしくなってしまった自分がまともに働けるかも分からない、でもお金は底を尽きている。それどころかキャッシングを繰り返して上限を振り切りかけている借金まである。

今思えば本当に馬鹿だと思いましたが、当時流行りはじめていたパパ活なるものに手を出してしまいました。

出会い系サイトを駆使して自慢の文章力で相手の興味を引き、ついに一人引っ掛けることに成功。会う日取りをできるだけ最短で決め、後からその日がクリスマスだと気付きました。


最初こそ普通に話したり、スタバでお茶をしたり、ゲームセンターでクレーンゲームをして遊んだりと平和っぽくやっていましたが、道を歩いている途中で突然手を握られました。

それは嫌だ、と思ったのですが、脳裏に今日を耐えれば一万円、という事実がよぎり何も言えませんでした。

それと同時に、50歳くらいはあるんじゃないだろうか、というおじさんとこんなにも呆気なく手をつなげてしまう事実に、今まで自分が感じていた「男性恐怖症」とは一体なんだったのか、とショックを受けました。

男なんて所詮愛だの恋だの言っておきながら結局はそういう事がしたいだけ。根底が本当にそうだったとしても自分のことを本当にただの女として見ている目の前のおじさんと、最後まで私の意思を尊重して手すら繋がずに去っていった旦那が、同列に並ぶわけがないのに。


その後ホテルに連れ込まれそうになるのを全力で抵抗して一万円ゲットして帰りました(正直抵抗した段階で逆上して逃げられてもおかしくなかったのに、それなりに節度を持ったおじさんに当たったのだと後で気づきました)


帰りの電車で考えるのは旦那のこと。

こんなことになるならもっとちゃんと向き合えばよかった。自分の気持ちばかり押し付けないで挑戦してみればよかった。

手くらい、つないであげれば良かったのに。

今まで彼女の一人もいたことがないあの人がどれだけ勇気を出して私に告白してくれたのか、半年も付き合ってくれていたのか、自ら身を引いたのか、分かっていたつもりで全然分かっていませんでした。


クリスマスということにかこつけて前日に作ったケーキの写真を送り、今までと同じ調子で「まだ腕は鈍ってなかったです」とラインを送りました。

そのまま久しぶりに遊びませんか?イルミネーションでも見に行きましょうよ、とこちらから誘い、運よく旦那も休日が合ったので年末に遊ぶことにしました。

その瞬間にもう決めていました。旦那に告白しようと。今までのこと全部謝って、まだ間に合うならもう一度やり直したいと。


当日、わざわざ兵庫から車で来てくれて、一緒にイルミネーションを見て、チキンな私はそこで告白に踏み切れず(面と向かって自分から告白したことがない)でもここで帰られるわけにはいかない、とお菓子と酒(旦那は運転手なのでノンアル)を買い込んで空き家の祖母の家に連れ込みました。

そこでもチキンゆえ全然本題に踏み切れなかったのですが、ふと一瞬会話が途切れた時に旦那が「今日誘ってもらえて嬉しかった」とポツリとつぶやきました。

ああもうやるならここしかねえ、ていうか多分誘った段階で私が言いたいことなんておおよそバレてるんだ。

「真面目な話をしますね!?」と言いながらソファに正座し、隣に座っている旦那の方を向いて、正直何を口走ったかあんまり覚えていないのですが、多分告白らしいことをして、OKを貰って、何をどうしたか忘れましたが旦那に抱きついてぴいぴい泣いていました。

本来脳味噌が乙女思考、成人向けのBLまで自家生産していた身なので色々とぶっ飛んでおり、祖母の家に泊まることを勧めたのですが旦那は「兵庫に帰るまでの道中で広島に寄ってやることあるから」としれっと拒否されました。

告白も受けてもらえるかわからなかったのに何やってんだって感じですが、その日勝負下着まで着てました。完全なアホです。

そんなすぐ喜んで飛びつくような奴じゃないって分かってたはずなんですけどね。



あれから三年半経ちましたが、まあなんとか仲良くやってます。

順風満帆かどうか、と言われると少し疑問が残る時期もありましたが、良くも悪くも動じない旦那のおかげで破局の危機は迎えずに済んでいます。

自分の人生そんなに良いことばかりではなかったけれど、仕事を辞めたことも、祖母の死も、何を省いても今に繋がらなかったんだな、と思うと一万円をくれたおじさんにすら感謝したくなるので不思議です。

旦那に好意を受け取ってもらえなかったら、遅かれ早かれ私はこの世に嫌気が差して死んでいたと思いますから。



すげー重たい話をしましたがもう笑い話にできる思い出なので毎日ハッピーです。

それでは!

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