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『置き場』第1号を読んで①

『置き場』第1号を読みました。
前回からまた投稿された方々が増えていて、読み応えがすごかったです。
藤井さんの号末の評も良くて、読んでもらえるのって嬉しいんだよなとあらためて思いました。おつかれ様でした。ありがとうございます。

第0号のときはXで各連作から一首ずつ引かせてもらったのですが、今回からはnoteでやろうかなと思います。
この記事のタイトルは①ですが、②では特に印象的だった歌にまたそのうち感想を書いていけたらなぁと考えています。

↑『置き場』第1号のリンクです

以下、掲載順・敬称略で引かせていただきます。多分抜けてないはずですが、こないだ抜けあったので(申し訳ない…)何かあったらめちゃくちゃ教えてください。


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たぶんそのキャベツと僕のキャベツとはもとはひとつで合体できます

僕のキャベツ  金森人浩

ほんとうの自分で生きてみたかった舞うっていうか飛んでたホコリ

風の操縦  なべとびすこ

春はいい 短いけれど優しさが溢れ過ぎててツラくなる夜

春  間之口葵一

美しい詩だとおもってごめんなさい わたしでさみしくなったあなたを

こわがりながら  はとサブレ

木曜日ターミナルへと夕暮れは 流線型に溶けて流れる

ワーキング・デイズ  リュケイオン

ぱっと消えてしまわないようロッカーに私物をたくさん溜め込んでいる

引き出しの中  真島朱火

街灯の明かりをあまり見なくなり日の長さを知る帰り道

春を待つ  すみか

貸したいと言われて借りた本だから長い手紙のように読ませて

青いことば  古井咲花

サーカスの訪れ、そしてひと晩に降る雪の嵩ラジオは告げる

やわらかにつぶす  さとうはな

勇気とは呼べないだらう真つ直ぐに生きていくのも死んでいくのも

共振  岡本恵

朝焼けのレモンの黄色鮮やかにあなたのすべてがそこにあるように

冬凪  黒塚多聞

人類がもしも電気を得なければ数万年後光れたの 眼は

翳る真冬  永井駿

溜まりゆく出せない手紙 在原業平にだってあったはずだよ

伝導/伝達  白藤あめ

カーテンにうらうら含む陽光は二つ三つ咲く白梅にも差すか

春一番には早すぎる  シキウタヨシ

詩集のひとページに栞を置くようにシェアサイクルの返却をせり

あにごころ  アカマツヒトコト

ねむり薬を今夜はふたつ見たくないなら見なくてもいい月なんて

十五月  夏山栞

受け入れてくれるかだけを気にかけて私を何のゴールにしたの

区切り  深水遊脚

酔いたいよ騙し騙しの違和感かワイのシマだし未だ酔いたいよ
(よいたいよだましだましのいわかんかわいのしまだしまだよいたいよ)

酒呑みの今朝  青村豆十郎

公園の二つ並んだブランコはひとりで乗った記憶だけある

街灯  くろだたけし

師走には増える寄り道まっすぐに落ちる葉はなくそのようにして

リヴェール  小俵鱚太

まなざすという動詞は痛い、あの浜にあの砂にめざめない結晶

旅人  石村まい

お互いに被る仮面は剥ぎ取れず出したおかずが減らないでいる

舌が痺れる  まさけ

ひとつだけ白の違ったブロックを踏んでる人を避けている人

白のブロック  鈴木ベルキ

ミッドナイト  泣けない夜も鳥ならば乗りこえられたかもしれないね

ミッドナイト・バード  君村類

古着屋が潰れてコインランドリーになってたどっちにせよ行かないが

なんにもない町だよ  四丸よん

自転する星の上では罪人も失踪人も朝に灼かれる

苦渋グミ  生田

オスカルはブロンドの髪ひるがえしわたしを乱すビル風が吹く

別館三階  岡田奈紀佐

肺の奥で瞼が幾重にも開かれ閉じて誘蛾灯に蛾は集った

hanahaki disease  村上智紀

血管を空に開いて立つ木々の動脈である一級河川

午前の散歩 〜冬から春へ〜  麻倉ゆえ

責任感があるって書かれた通知表はいい紙をつかっていて白かった

カードゲーム  林騎兵

慌ただしき時間のなかを子の髪に妻は螺旋を生み出してゆく

朝  寺阪誠記

冬生まれっぽいけどなんでぽいんだろう みかん食べてもう一度泳ぐ

遊・泳・区・域  篠原仮眠

忍者にはとうていなれずコケているコケた場所からまた歩き出す

街の遠景  貝澤駿一

新宿に雨があかるい ひとりでも入れる店がいくらでもある

昼休みが終わる  榎本ユミ

他人事が上手く出来ない真昼間に窓をひらけば水と土の香

水際  秋瀬うに

金魚鉢に金魚はおらず水草の青々とあるいつか見た国

いつか見た国  白幡皐

鳥類を口に入れたい 宗教の話を聴けばよりそう思う

ちょっとした人  高遠みかみ

真夜中に見た海はやっぱり怖くて誰と見ても怖いから、果て

タイミング、果て  ZENMI

毛先まで呪われたいま夜にもう鏡を隠すこともないでしょう

やわらかな虎  湯島はじめ

黄緑の萌芽まぶしく見あげつつその丘をあなたは越えてゆく

駅まで  塩本抄

金平糖のとげの鈍さがねむたくてそう遠くない春の匂いだ

チョコレート・チョコレート  牧角うら

記憶とは泥のおとうと 春泥を心で踏めばなんども逢える

暮らせる海  肺

「個人的には」と毎回言うきみの気持ちが分かるから咎めない

煉瓦を敷く  あるこじ

平日のブックオフが怖かったことさざ波みたいにあなたは話す

ブックオフ  古川柊

タクシーのヘッドライトが眩しくてひっどい顔をしてたなきっと

拝借  他人が見た夢の話

ニラレバかニラレバ炒めか御飯食べ紅梅白梅雲々の空

日常生活  石川順一

入力のミスでグーグルマップにて賃貸マンションに着いてしまう

僥倖  涸れ井戸

偽物になったらなったでいいじゃないレースカーテン越しの光は

偽物  古河惺

近未来みたいな 2025 にまだぼくたちは空も飛べない

おおさかばんぱく!  福山桃歌

競争の中にいる者 復活の途中にいる者 それぞれの春

春季キャンプ  天野うずめ

霧の朝ベランダに訪れてくる鳥の形をしたなにものか

霧の朝  和田晴美

夏井氏が斬った俳句をまた斬ってみんなで斬ってとても楽しい

かくあるべしキック  サラダビートル

降りやまぬ驟雨 あなたはリセマラを何度やっても満足しない

滅亡前夜のらぶあんどぴーす  深影コトハ

二月の東京はどこまでも晴れているあと少し陽が沈まぬように

TOKYO BRIGHT BLUE  そらとクローバー

人里を離れてみれば満天の星ひとり原始の声をきく

星が降る  睡密堂

窓はその木の全身を捉えない 僕が選んだ石の冷たさ

樹木葬  短歌パンダ

人々が収まっていく座席からパズルゲームの気持ちいい音

ずっと憶えてる  さめない

夏のあといつかあなたの地層から始祖鳥として掘り出されたい

ねがいごと  高田月光

繋がれば神は神では無くなってそれもよくある神話のひとつ

偶像  今井マイ

並木越しの青信号ほたるみたい いつか死ぬのに認めてほしい

ほたる、蛾、芸人  久久カナ

ジュマンジのDVDを鳥よけにして鳥たちよ飛べ宇宙まで

オール5  森屋たもん

お医者さん静かに笑うこのひとはどんな風にお父さんなんだろう

ぴかぴかになるまで  武井窓花

ぬばたまの夢といふ名のうつくしい誤訳のうへに降り積もる雪

白昼夢  有村桔梗

月の兎みたいなものか、遠くからみればあなたと暮らした街も

ノートルダム  西鎮

飛行機の窓に大きな空が暮れていく誰の願いも叶ってほしい

窓  青藤木葉

でも君は返礼品も迷わずにカロリーメイトしかも二回も

カロリーメイト  澪那本気子

春らしい日は春らしくいなければバナナチップス探して歩く

女子中学生は幸せそうだった  吉田衣織奈

飛行機を乗り過ごしたらそのまんまタダで連れてかれる知らん国

枯木立  神丘風

消音で笑う完成予想図に閉じ込められたような街並み

幽霊の午後  高野蒔

会うという不思議さあなたのあくびすらふるえるような真実になる

墨田区  展翅零

8日 図書館であなたが返却した本は全てが聖書 あは、いい匂い

神聖日記 上  吉田岬

雪のない冬に出会った距離のまま言葉に花が混ざりはじめる

浮かばせたまま  清水晴架

二番目の運命だけが選ばれるそういう運命飽きたよ泣泣
(泣泣に〈えんえん〉のルビ)

縋  彩結ゆあ

喩えよう、勝手に生えた植物を安いジョークで溢れた日々を

羽化  北原有

眠れぬ夜タイムラプスの瞬きがアンモナイトの記憶とともに

アンモナイトの記憶/タイムラプス  十六夜/朔


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以上です。
晩冬から春にかけての歌と、前回より場面設定のくっきりとした連作が多かった体感があります。またじっくり読めていけたらと思います。ありがとうございました。
🪿

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