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「置き場」第2号を読んで①


「置き場」第2号を読ませていただきました。
藤井さんの人生、応援しています。カルフォルニア檸檬さんの巻末評も興味深く、楽しく拝読しました。お二人ともお疲れ様でした。

今回も一首ずつ好きだった歌を引かせてください。おおよそ掲載順、敬称略で失礼します。
毎度で恐縮ですが何か不備があったらお知らせください。
ちなみにわたしは今回出していません。お休みできるのもいいところ、こと「置き場」。

↑「置き場」第2号リンクです。


公園に響くひろき!が名ではなく場の面積を指す可能性

鵺を放つ(マイグラデーション)2   金森人浩

人それぞれが造花のように柔らかく闇の奥へと溶けてゆくのみ

光が漏れる   黒塚多聞

脱いでから風呂をはさんで着るだろう夜をはさんでまた脱ぐだろう

ざぶざぶの街   なべとびすこ

われからのミモザと聞きいし父の言う「コート片せよ」の柔らかさ

春を贖う   シキウタヨシ

龍の棲むらしい湖さざめいて冷たい水は気持ちいいよね

水浸し   昏解

佐用霧で霞んだ前を懸命に手探りでゆく通学路 春

弥生   間之口葵一

似たような孤独と信じて寄り添っていらない奇跡にあたためられて

いらない奇跡   古井咲花

焼く堂宇恋せる乙女火を見つつ身を秘め通る晴耕雨読や
(やくどううこいせるおとめひをみつつみをひめとおるせいこううどくや)

『禅語不覚』   青村豆十郎

瞬間に見ていた夢は消え去ってナントカって言う俳優だった

新しいヒト    ZENMI

「黒柳徹子は変わらない」そうね、あれは幻想 飴をあげるわ

ふしぎ発見   まさけ

歌わない方のカラオケだったけど一緒にタバコ吸えてよかった

サイケデリックサウナ体験   淡島けのび

地下鉄の出口をのぼるとき気づく春の兆しは肌色なのか

ル・プランタン   小俵鱚太

賢くてとても冷たい長身を生きながら血は血を遡り

火の代償   水没

ときどきは誰かがなにかしなければ森ではなくて庭なのだった

庭を引きつぐ   くろだたけし

早押しクイズの答えにならないで ふたり乗り宇宙船売切れ

 羽化   ぶん

怖いのは僕だけじゃない列車との隙間が広いホームに降りる

07:50   真島朱火

死んだあと天国と地獄の真ん中のあたりで街を作るから来て

ゴースト   君村類

綺麗事にして終わらせるのならば返してくれる?三十五円

卒業   睡密堂

想いつつ、隠し通せる覚悟はなくて伝えられる勇気もなくて

君のいる世界にうまれて   すみか

スペードのエースの柄の刺青を想像上の太腿に彫る

トランプ小景   岡田奈紀佐

ナジュらないナジュるで揉めるJKがお互い譲って減らないポテト

双現   他人が見た夢の話

さかむけのように切り立つ言語野よ いまあかるさへ放てかれらを

凍傷   石村まい

まっしろい髪をさらしてシーサイドさせないあなたを神さまになど

シーサイド   湯島はじめ

最下位はうお座のあなた 外出は控えた方が世の中のため

二句を切らせて骨を断つ    笠原楓奏(ふーか)

絶景の空き地に何かが建っていく私は地図を描き換えていく

 まどろみの国   ナカノソト

投稿のレシピのひとになにかしらあったのだろう 強めの弱火

強めの弱火   鈴木ベルキ

ねえ姉さん わたしがいもうとだってこと知ってたのかな水色のタイル

チカちゃん   武井窓花

夜らしい夜は頭が騒がしいそれをわたしが真上から見る

シューゲイザー   永井駿

命拾いする事もあり、そうでない事もあるのよ、覚悟するのよ

あと十年   和田晴美

朝になればまたきらめきを探すだろうはなむぐりみたいな一途さで

啓蟄ならば   塩本抄

真夜中の深草を経て幽霊を乗せた話を聴き晩飯に

夜の京都を   涸れ井戸

たっくんの戴冠の日を待ちわびて春やわらかにめぐりておりぬ

戴冠   貝澤駿一

名残り雪どさりと落ちる 出戻って姉はまえより父にやさしい

先発隊   西鎮

会ひたくて走りだしたら風景もなづきのねぢも消え失せてゆく

ばかばかばんび   岡本恵

朝露の玉を葉先に光らせて平行脈が低空をさす

午前の散歩 ~春の始まり~ 麻倉ゆえ

父さんに「くるま買った」と LINE して GOOD JOB だけのスタンプが来た

drive   森屋たもん

何ごとも力尽くは駄目という戒めを新人にも国家元首にも

ありえた共存   深水遊脚

どの花も 散る もしくは降るとしてわたしのために怒ってくれる?

花狼   甲斐

世界地図柄のハンカチに包んでハムスター持ってきちゃだめだって

pure   篠原仮眠

善悪の話はとてもまぶしくて表情はその逆光のなか

ともだち   夏目谷以

青い火は熱いと言った先生は知らないうちに死んでいた 湯冷め

赤いランプ   畳川鷺々

さみしさの量は減るのか増えるのか うるう日告げる手帳を閉じる

うるう年のさよなら   佐藤美加

夏のこと考えている エビチリに喜ぶわたしを見ていてほしい

ような   吉田衣織奈

小舟にはこんぺいとうとあめだまをゆくべき場所も知らないままに

誰そ彼の月   水也

眩しさにそむけた顔に追いすがる春の西日はうまれたばかり

代掻き   神丘風

怪我人も出さずに終わった闘い後チョキをかかげてピースサイン

ジャンケン   小仲翠太

雪も雨も降るものだから 入浴剤いれてもいれなくても いれようか

恒温    白幡皐

どこへでも行けるどこへも帰れない睫毛が重くなる 眩しくて

やはらかい檻   高野蒔

今まで乗ったすべての電車 喧嘩したすべての乗客 深く眠って

 平日・地下   生田

青緑色した庭に囲まれて子供は混ざりあって転がる

鳥公園   秋瀬うに
〈フォーゲルパーク〉のルビ

うつすらとあなたの部屋に寄り道をしてきたやうな風だと思ふ

Spring has come   有村桔梗

ぼくたちが物語ならぴかぴかの13月に終わるのだろう

ポエジー3キロバイト   高遠みかみ

茶畑の脇でキャッツアイになるばあちゃん、新芽を摘んで早足

ばあちゃんのウインク   奈瑠太

チケットのヒスイカズラの鮮やかさ 作りものみたい。という褒め言葉

 ゆめ、熱っぽい   牧角うら

言葉へと羽化できなかったため息をひとつ夜空へかえしてあげる

マーカーを引く   アカマツヒトコト

ややもすればより奥深くビー玉のとほざかりゆく局面もあり

局面   寺阪誠記  

点滴を眺めて過ごす再春館製薬の人になった気持ちで

エフェメラル・ホスピタル   あるこじ

言へなくてしじまにひびくしづり雪 こゑなきこゑにふと紅椿

薄紅の波/和煦の日   古井朔

土は蓋 発さなかった言葉から芽吹いて大樹のような皺の手

アンダー   岩瀬ゆ

笛を吹く風を私は知って居る上弦の月が雲に囲まれ

散歩と日常   石川順一

無意識に布団を取り合う三センチ隙間の冷気肌は白旗

 あるピンホール   江間あやせ

わたし今さら春をそんなに嫌えない聞いてもらいたい神話もない

うつくしさの隅    久久カナ

「ねえパパ」とあとどのくらい呼べるかな 「ん?」ってあの顔してくれるかな

車窓の記憶   春野昼寝

差し出してもらった君の手を握るための孤独と今ならわかる

 馬鹿じゃなかった   澪那本気子

来てよって降る花びらの赤いこと あなたと出会い直したかった

冥婚   しもじ

十年と呼んだ大事な約束の、いつも呼ばれていた青い春

十年後   鈴木雀

それ以来風はどこへと渡るのか彼はどこかへかえってるのか

シ生観   そらとクローバー

味付けはせんでええんですあの人はもう笑ってくれへんのやから

没イビル短歌選抜   サラダビートル



以上です。やっぱり春のモティーフと、あとは記憶にまつわる歌が心なしか多かったように思いました。
来月は出せるようにしよっとと思ったけど、もう今月だしあと10日で締め切りですね。やばい。

今回も感想は次の記事に書かせてもらいましたので、もしよかったらよろしくお願いします。
読ませてくださりありがとうございました。🪿

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