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SFプロトタイピング

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SFプロトタイピングの提言に沿って、ストーリーを作ってみます。
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#SF小説

SF的小噺「五話 B.G.」

 今日は長期休暇一日目。旧アメリカ合衆国の保護エリアに来た。「除染」が終わり立ち入りできるようになったからだ。  シアトル。旧アメリカ合衆国の都市である。ここには、大戦前の事件を展示した博物館がある。人間が再び過ちを起こさないための戒めのためだ。  博物館奥の一角に「B.G.」と書かれた看板と、一人の人間、いや1台の旧式サイボーグが座っている。腰から上だけのサイボーグだ。  B.G.は大戦前から数百年を生きる元・人間だ。大衆向けのソフトウエアで巨万の富を築いた後も様々に

SF的小噺「四話 オリュンポス」

 地中海の海上都市国家「オリュンポス」は遺伝子操作とサイボーグ技術で不死となった12人の神の如きサイボーグが統治する国だ。  彼らはBMIを介して統治AIと接続され、互いに意識を共有していると言われる。  人が生きられないような環境で活動し、たとえ肉体が失われてもAIに同期された情報から意識も含めて復活することができるとされる。彼らは人間の意識の秘密を知ったのかもしれない。  今回の会議、私を呼んだのは「太陽の国」だ。12人の超人相手に、トランスレーターが何をできるかわ

SF的小噺「二話 サイロン」

 今回の仕事の依頼は、地球の公転軌道上にある工業国家「サイロン」からのものだ。サイロンは、人類がレーザー通信に使う素材・デバイスを一手に引き受ける重要な宇宙都市国家だ。毎年定期的に行われるデバイス供給量についての交渉のようだ。  ちなみにサイロンには人間はいない。戦前に作られた資源・デバイス管理システムAIが世界大戦中に独立を宣言して建国された変わった国だ。数千機に及ぶ高加速航宙艦艇を有し、人類が争いを始めると仲裁に入ってくる。今では国際警察のような役割を果たしている。