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読書ノート583「京都よ、わが情念のはるかな飛翔を支えよ」を読んだ

Facebook  上の友達の投稿から、この本の事を知った。
1978年3月26日、三里塚空港、管制塔占拠で逮捕された著者が獄中で半分ほど執筆し、のちにすばる文学賞を受賞したという作品。
そんな経緯がユニークに感じられ、絶版になっていた本書をメルカリで入手して読んでみた。
京都で浪人生活を送る主人公の物語なのだが、よくわかったようなわからないような作品だった。
特に、闘争関係のことが書かれているわけではない。
寮の同居者らとしばしば殴り合うような場面や出会う少女や女性教師との関係性などはいかにも唐突で、不自然な感をぬぐえない。
ただ、大江健三郎の初期作品のような、思春期のやりどころのない怒りや憤りがマグマのように描かれていることは伝わってくる。
特徴的なのは、全編にあふれる、平野啓一郎ばりに難解な言葉のシャワーで、これにはちょっと驚かれるとともに、ここまで徹底されるとなにかしら詩的な雰囲気さえ漂ってくる(実際、本文中にも詩の形をとったアジテーションごときものや朔太郎の詩が引用されていたりする)。
ワープロさえなかったであろう獄中でこんなにも言葉を連ねられたというのはある種の能力なのでしょうね。
ご本人は、その後は医学系大学塾の経営やカリスマ教師として活躍されているようで、著書も数多くあり、オフィシャルサイトもある。
冒頭に「絶版になっていた」と書いたが、本作品のほか6作品もあわせた「ああ、われら、「絶無」の汀を彷徨く者」と題した本が「松原好之・過激派小説集」として数年前に出されているようだ(この本には本書の執筆経緯についても書かれているようだ)。

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