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「感動ポルノ」は「感動ネタ」「お涙ちょうだい」

2016年10月10日月曜日 Facebook投稿

よく知られているように、「感動ポルノ」という表現は最初は故ステラ・ヤングさんのTEDにおけるスピーチ
「私は皆さんの感動の対象ではありません、どうぞよろしく」
(原題 I'm not your inspiration, thank you very much )
の中で用いられた inspiration porn の訳語です。
このスピーチは、下記のサイトで英語でも日本語でも動画およびテキストで見られます。
https://www.ted.com/…/stella_young_i_m_not_your_inspiration…
TED放映当時からこのTEDのスピーチはアメリカでも評判でしたが、「感動ポルノ」という表現自体がアメリカでそれほど喧伝されることはありませんでした。
しかし、ヤングさんは当時、既によく知られたタレントでしたから、その範囲では話題にもなり、同様の指摘もでたりしました(たとえば https://www.youtube.com/watch?v=DU6p2Bzwk-E など)。
日本でもヤングさんのTEDにおけるスピーチが公表された当時、「感動ポルノ」という言葉はかなり話題になりました。
しかし、多くの方々がご存知のように、この言葉が一気に用いられるようになったのは、NHKの「バリバラ」という番組が日本テレビの「24時間テレビ 愛は地球を救う」に対抗する形の裏番組のタイトルの一部にこの表現を用いた(正確には「検証!「障害者×感動」の方程式」)ことからです。
最近では、「ポルノなんてなんかおかしい表現ではないの?どういう意味?」と疑問に思っていた人たちももう恥ずかしくてそんな疑問を出せないほどの勢いです。
porn (porno と同義)という英語はほとんど日本語にもなっている「ポルノ」という言葉ですが、英語の porn という言葉にはもともと「lurid or sensational material(けばい、扇情的な材料)」という意味があり 「誇張やウソがある」というのが porn という言葉の本質とのことです
(参照 http://masahironakata.blogspot.jp/2011/11/investment-porn.html )。
つまり日本語としての「ポルノ」という言葉の意味は 正確にはpornography のことであり、これは「性欲をそそられる材料」という意味です。
近頃は、レストランなどで出された料理を写真に撮り、webアップすることは一般的ですが、たとえばこういう行為は food porn とも呼ばれています(「フードポルノ」という言葉で検索すれば多くのサイトがヒットします)。
この場合は「食欲をそそられるような材料」というわけです。
porn という言葉を同様に用いた表現としては、このほかにも「愛国ポルノ」「キャリアポルノ」「 エコ・ポルノ 」などという表現もあります。
このように考えれば inspiration porn は「感動ポルノ」というよりは「感動をそそられる材料」つまり「感動ネタ」とでもいったほうが日本語としてはしっくりくると思われます。
あるいは、かなり死語に近いかもしれませんが「美談」「お涙ちょうだい」とか。
ヤングさんのスピーチの、この言葉が出てくる前後の文脈からいってもまさに意味としては「感動ネタ」なのです。
すでにそうした指摘をweb上でされている方もいます。
( たとえば http://www.poc39.com/archives/3717 など)
TEDのサイトにおいても、タイトルの原題に含まれている表現は inspiration porn ではなくinspiration だけですが日本語訳は「感動の対象」となっています。
「感動ポルノ」というなんだかわけのわからない表現ではなく、そろそろ「感動ネタ」「お涙ちようだい」というようなわかりやすい表現に変えてはいかがでしょうか?


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