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読書ノート657「長い髪の少年たち」を読んだ

本書の存在は以前から知っていたのだが、あまり読んでみようという気にはならなかった。
しかし、ちょっと前の読書ノートで紹介した「幕間のパントマイム」https://amzn.asia/d/1lDsPV6 と同時期に刊行された「よみがえれ!授業改革運動」https://amzn.asia/d/3IzM6SR という本の巻末に、本書が参考文献としてあげられていたのを知ったことがきっかけて読んでみる気になった。
かなり昔に絶版になっていたのをメルカリで入手したら、案外に美本が手元に届いた。
本書の著者は、私自身は習ったことがないのだが、私が在学していた中高一貫校の国語教師だった人物である。
本書の内容もその学校を場面とした内容となっていて、かなり実際にあった出来事、実在の人物たちが描かれている。
正確には、私より1年上の学年の動きについて描かれていて、その学年の者が読めば、当時のどんなできごとを素材にして、誰をモデルにして描かれているかがすぐに察せられる内容になっている。
描かれている時代は、1968、69年から1970年にかけてのことであり、世間は政治の季節で揺れ動いていて、高校生もその動きから自由ではなく、さまざまな政治的立場をもちながら交友関係を維持している。
著者自身の政治的立場は所属する団体から明らかであり、描かれている少年たちには、著者と同一の政治的立場の者も、それとは対立する新左翼の立場の者もいる。
どちらかといえば、本書の内容そのものには、著者の政治的立場は異なる後者の考えや葛藤を描いている場面のほうが多いと思えるくらいである。
もしかしたら、それらをありのままに描き出すこと自体で新左翼的立場の考えに対する批判になると著者は考えたのかもしれないが、どうもあまり成功しているようには思えなかった。
また、本書の全体はいくつかの短編の連作になっていて、それぞれに主人公を入れ替えて描かれているのだが、読む者としては、登場人物のイメージを維持しにくく、方法としても成功しているとは思えなかった。
登場人物たちが喫煙するのはまだしも、飲酒する場面には、個人的にはなじめなかった。


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