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読書ノート642「海の見える風景」を読んだ

著者の早川義夫と聞いたって、ピンとくる人は70歳以上か。
ジャックスといったってわからない人でも「サルビアの花」は知っているかもしれないが、あれを書いた人。
もしかしたら、売れた数からいえば、歌い手というよりは「ぼくは本屋のおやじさん」の著者としてのほうが、よほど知られているかもしれない。
「ぼくは・・・」はいまだに文庫本にもなって売れ続けているようだ(単行本もまだ売られている)。
僕自身が本屋になったのも、多少は、この本の影響を受けていたせいもあるかもしれない。
武蔵新城にあった早川書店だかにまで自転車で赴き、「あっ、いたいた!」などとミーハー的に騒いでいたのはいつのことだったか。
あの当時、早川義夫が出していたミニコミ紙はいまだに後生大事にとってあるし、書店をやめて(本書で書店を21年もやっていたと知って驚いた)歌と演奏を再開してからはライブにも行って記念写真まで取らせてもらったり、CDは廃盤になったものまで買い集めたりしたものだった。
本書は、そんな早川義夫が昨年末に久しぶりに出してくれたエッセイ集。
先日、都内某所に車で出向いた往復3時間も車内で早川義夫のCDを流し続けていたのだが、その翌日に本書が届いたので、読みかけの本を押しのけて一気読みしてしまった。
本書では、奥様がなくなった後の鎌倉での一人暮らしの生活の徒然について書かれている。
数作前からか、奥様以外の女性とのつきあいや性生活についてのあからさまな描写が増えて、歌詞にかかれているのは本当の話なんだと、うんざりさせられることも多かったのだが、今回もそういう話が随所にあって個人的にはそういう話にはあまり興味がわかない。
本屋をやってた21年間も、その後もほとんど演奏することも音楽を聞くこともなかったというが、やはり、音楽関連の話題について書かれた部分は、やはり確かに音楽家なんだと頷かされる内容が多い。
まあ、ほとんど終活的な感じがしないでもない本なのだが、昔からのファンとしては、ぜひもう一度、ライブというかコンサートというか、そういうものをやってほしいと心から思う次第である。

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