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読書ノート655「スウェディッシュ・ブーツ」を読んだ

ヘニング・マンケルにはまり続けて、「イタリアン・シューズ」の続編と聞いて読まざるを得なかった。
「イタリアン・シューズ」から8年たったという設定になっているのだが、冒頭、就寝中に孤島の家が全焼して焼け出されるというショッキングな場面から始まり、すわ、今回はミステリーかと思わされるのだが、全体としてはその火事の犯人探しがメインのストーリーというものではなかった。
前作の「イタリアン・シューズ」にも、主人公が手術で誤って片腕を切断してしまった女性が登場し、この作品でも火事を取材する女性の新聞記者が登場し、いずれの女性に対しても主人公が、熱烈な恋愛感情というほどではないのだが淡い恋心ともいうべき気持ちを抱くというのが、ストーリーのひとつになっている。
マンケルは老人の性というものを描きたかったというわけではないだろうが、人間の煩悩というか、悲しい性(さが)ともいうべきものを描きたかったのだろうか?
ともあれ、全体のストーリーの中では違和感を覚える設定ではあった。
また、前作からのことでもあるのだが、主人公の、いってみれば覗き見的な趣向というものも描かれていて、その設定もちょっと違和感を抱かされるもののひとつだった。
いずれも、彼自身が抱えていた問題だったのだろうか?  
他の作品でもしばしば描かれる、移民問題、ネオナチの問題、人種差別、アフリカにおける様々な問題なども随所にちりばめられていて、著者の鋭い問題意識がうかがえる。
本作品は、若くして亡くなった著者の最後の作品となったのはなんとも残念。
スウェーデンには、昔、何回か行ったことがあるが、死ぬ前にもう一回、行ってみたいものだ。




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