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読書ノート636「戦争の社会学~はじめての軍事・戦争入門~」を読んだ

確か、佐藤幹夫さんが、自身が主宰する「飢餓陣営」の最新号で、橋爪大三郎がガザについて書いたものが掲載されるにあたって読んだというような意味のweb上の投稿を見て購入したのではなかったか。
佐藤さんのコメントは言葉少なめに、ちょっとネガティブなものだった気がしていたが。
橋爪がいうには戦争にいて社会学的にまとめた書かれたものがこれまでになかったということだが、前半、いや4分の3くらいは、過去の歴史における戦争の在り方や戦争について書かれた本や条約などの解説といったところで、退屈と言えば退屈だが、いつもながらの、歩くウィキペディアともいうべき該博さには脱帽。
後段になって、近代の日本がからんだ戦争などが題材とされてくると興味深く読める。
確か東工大における講義がもとになっている内容で、語り口も講義さながらの短文の積み重ねで、論旨は常に明快。
ただ、たとえば、軍国主義とは軍隊を強くして、戦争に勝ち自国の主張を通そうとするものであり、戦争に勝てるときに戦争をし、戦争に負けるときは戦争をしない、日本は勝てないと分かっていて戦争をした、だから、日本は軍国主義ではなかった、などというのには首をかしげる読者もいるかもしれない。
原爆の投下などについても然り。
原爆碑にある「過ちは繰り返しません」では、犠牲者は誤って死んでしまうことになるので、正しくは「皆さんの犠牲があって、わたしたちは生きていられます。感謝します、忘れません」とあるべきだという論理が展開される。
こういう、たたみつけるような私情や価値判断ぬきの論理の運びは、橋爪の師である小室直樹の論理の運びを彷彿とさせられるところだ。
国連は第二次世界大戦の敗戦処理機構として誕生し、いまだに日本も敵国とされているような話はよく知られていると思うが、国連、United Nations という名称は枢軸国と戦った連合国、United Nations からきていて、中国語では国連を聯合国と呼んでいるというのは興味深かった。

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