読書ノート36「ハウス・オブ・ヤマナカ―東洋の至宝を欧米に売った美術商― 」を読んだ
2011年11月8日
https://www.facebook.com/notes/716557275733577/
わが国の芸術作品の多くが海外美術館に所蔵されていることは多くの人が知っている。
しばしばそれらの展覧会も開催されている。
しかし、「どうして日本の昔のものがたくさん海外にあるのか」と疑問をもったことはないだろうか。
本書は山中商会という、第二次世界大戦のために店舗を強制的に閉鎖されるまで60年間にわたり日本や中国の古美術品を海外に販売し続けた企業の盛衰記である。
それにしても、今とはまったく異なる状況の下で(交通事情・輸送事情・通信事情・金融事情・語学環境)、アメリカやイギリスに出向き、各地に店舗をかまえ、海外で収集した古美術品を運び入れ、それをさらにオークションにかけたり、美術館やコレクターたちとのこまめな交渉の末に販売していたという事業活動には頭がさがるばかりである。
膨大な資料を読みこなして歴史を再構成した著者の努力はたいへんなものだったと思われるが、あまりにも資料が少ないため、多くの部分で憶測・推量の文章が続き、多少、うんざりさせられるところもある。
また、創設者の山中定次郎についてもう少し個人として掘り下げて紹介してほしかったという点も不満として残ったが、ともあれ労作である。
「ハウス・オブ・ヤマナカ―東洋の至宝を欧米に売った美術商―」http://bit.ly/sXdfjC
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